宇宙、日本、練馬

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『紅の豚』 マイノリティだからかっこいい

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 先日『紅の豚』のBlu-rayが出たので、購入&視聴。画質は素晴らしい。海と空の青色がはっきりと発色していて、DVDで見たときよりかなり明るい印象を受けた。DVDで視聴したのもかなり前のことなので、記憶はおぼろげなのだが。

 

 

 物語の方も、以前見た時とはかなり印象が違った。主人公、ポルコが監督宮崎駿氏の投影であることはつとに指摘されており、以前見た時はその印象を強く持った、いやそのような指摘に引きづられていた。そう見ると、『紅の豚』はナルシズムに溢れる私小説のように思え、物語に没入できなかった。

 しかし、ポルコ・ロッソは宮崎氏の自己投影でもあるが、単にそれに留まるキャラクターではないよな、と今回視聴して感じた。醜悪な外見で、徹底的に公権力に取り込まれることを嫌い、故に不自由な暮らしを強いられている。まさに社会のマイノリティの体現者といえる。

 彼は社会のマイノリティだが、しかしそれゆえに彼自身の信念を曲げずに、不自由ながらも生きていられる。あるいは逆に、自身の信念を曲げないからこそ、彼は「豚」に身を落とすこととなり、社会のマイノリティとなったのかもしれない。自分の信念を曲げないことと、社会からつまはじきにされること、この両者は不可分である。ポルコの生きざまを通して、宮崎氏はそんなことを私に語っている気がした。

 マイノリティであるポルコを、宮崎氏は徹底的にかっこよく描いた。そこに宮崎氏はマイノリティの持つ可能性を仮託しているのではないか。ただ、自身の選択の末にマイノリティ=豚となったポルコと、現実の社会において、選択の余地なくマイノリティとなっている人を一緒には語れないのは間違いないが。

 

紅の豚 [Blu-ray]

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