『風立ちぬ』の興行成績はかなり順調な様子。やっぱり好きな映画がヒットすると嬉しいね。
『風立ちぬ』V3で強し!クチコミの観客とリピーター続出の理由とは?
この記事でヒットの理由が考察されていたので、対抗して私見を述べたい。
記事で触れられているヒットの理由を要約すると、以下の通りだ。
- 宮崎駿のネームバリューと作品自体のクオリティが高いこと。
- 主題歌「ひこうき雲」が作品とマッチしていること。
- リピーター多い。その理由は庵野の賛否両論具合、特殊な効果音や細かい作画など二度見て「確かめたい」と思う要素が多いこと。
- ファミリー層の客よりも高齢者層に訴える内容で、平日の客入りがあること。
なるほど、確かにという感じである。でもそれだけではない気がするんだよな、というのがこの文章を書いている理由だ。俺の周りで『風立ちぬ』を見た人たちの反応から、ちょっと考えてみよう。
俺の周りの人間はたいてい好評価を下しているのだが、簡単に感想を聞くと、「感動した(泣いた)」と「堀越の生きざまがいいよね」という二つに集約される。
感動の理由
感動して泣いた、という人にその理由を聞くと、菜穂子との悲恋に心を動かされたという。この意見は、前の記事で書いたように菜穂子との恋愛は夢に生きる堀越の人生を描く際の添え物だ、と考えていた俺にとってはまさに目から鱗。
たしかに、友人たちと話しているうちに、堀越と菜穂子との恋愛の描かれ方は現代に生きる我々にとって新鮮で、感動的だなと考えを改めた。その先にある「終わり」を意識しながらも、それぞれにとってかけがえのない時間を共有する二人の姿は、主題歌の「ひこうき雲」とも重なって、涙を流す人の気持ちもわかろうというもの。
男の生きざま
そんな菜穂子との恋愛が中盤から後半にかけて描かれているわけだが、全編通して語られるのは、主人公堀越二郎の飛行機に賭ける夢だ。挫折しながらも、立ち上がり試行錯誤して夢を追い続ける堀越の姿は、夢を追う若者、いや、現代社会に生きる夢など持てない若者にとって眩しく映るのではないか。そしてかつて夢を追っていたであろう高い年齢層にも訴えるものがあるに違いない。
「堀越がかっこいい」という友人たちの反応も、そんな彼の生きざまを受けてのものだった。その友人たちも、やはり自分と同じように菜穂子との恋愛にはそんなに心を動かされていないようであった。
まとめ 『風立ちぬ』は子ども以外のすべての観客層を引き付ける映画なのだ!
恋愛ドラマと、男のドラマ。この両者が絡み合いつつ両輪として描かれている『風立ちぬ』は、見る人によって印象ががらりと変わる映画なのである。多分、ジブリのメインターゲットであったファミリー層以外は、恋愛か、男のドラマかどちらかを楽しむことができる。しかし子どもには、飛行機のアクションはあるものの、どちらかといえば淡々とドラマを積み重ねていく展開は退屈なものかもしれない。ネットでの賛否両論の声は、庵野氏の声に加えて子どもをひきつけるものがないことが起因しているのであろう。
逆にいえば、庵野の声を受け入れられる、子どもでない観客にとってはフックとなる要素があるということだ。ヒットの理由はこんなところじゃないだろうか。とはいってみたものの、正直作品の中身について語るには見てから時がたちすぎた感もあるので、早く2回目を見に行きたいです。
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