木下恵介監督『お嬢さん乾杯!』をHuluでみた。木下恵介監督の作品は『陸軍』、『二十四の瞳』をみたが、それらとはまた違った味わい。労働者の男と没落した名家のお嬢さんとの関係を描く、直球のラブコメディだった。戦後直後(昭和24年)に撮られたラブコメ、っていうだけで自分にとって新鮮だったし、若い世代は多分みんなそう感じるのでは。
そんな古いラブコメが、今でも退屈せずに見られるのは、いろんな理由があるとは思うが、なにより主演の原節子の魅力が輝いているから、というのが第一だろう。白黒映画だからこそ、表情の変化がより印象的で、なおかつ不自然さを感材させない程度にオーバーというか。カラーだったら、オーバーすぎて嘘っぽく見えたんじゃないかなあ、とか思ったりした。
また、音楽も軽快でいい。主人公とヒロインのギャップを示すのにも効果的に使われているし、そういう意味ではその後の『二十四の瞳』とも通じる部分があるんじゃないかな。
この時代を知らない若者からすると、当時の東京の様子がカメラに収められているのが大変興味深かった。戦争から4年しかたっていないにもかかわらず、意外と復興が進んでいるのにも驚いたし、バレエやクラシック音楽なんかも、すでに社会の上層にいた人たちは日常的に受容していたんだなあ、とか。あとやっぱり、この時代は男性中心主義というか圧倒的なパターナリズムがあったんだなあ、と再確認。原節子演じる泰子が、主人公に翻弄されるさまは見ていてあんまりいい気持はしなかった。そんなことを思ったりしたけれど、結末もなかなかスマートで、いい映画をみたなという気分。
以下は以前見た木下恵介監督作品の感想。
木下恵介監督 『二十四の瞳』 昭和の時代の人々とは - 宇宙、日本、練馬