読書メーターさんのテンプレを使って、1月に読んだ本をまとめました。1月は、哲学の勉強をしたいなー、と漠然と考えていたので、その準備のために本を読んで言った感じですかね。思っていたよりははかどったかなという感想。2月もそんな感じの路線で本を読んでいこうと思います。
先月のはこちら。
印象に残った本
来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題 (幻冬舎新書)
- 作者: 國分功一郎
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/09/28
- メディア: 新書
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一番印象に残っているのは、國分功一郎『来るべき民主主義』。この本を読むまで、政治哲学って、現実の問題とリンクしているのか、よくわかっていなかったんですよ。恥ずかしながら。『来るべき民主主義』では、実際の市民運動の実践から、政治制度の問題点を浮き彫りにして解決策を提案するところまで明快に論じていて、すごくわかりやすかったです(小並感)。ニヒリズムにも楽観主義にもなっていないそのバランス感覚が、深く心に残りました。
読んだ本のまとめ
■学力と階層(朝日文庫)
主に教育の格差に関する著者の論考をまとめたもの。それぞれが別の媒体に発表されたもののようなので、まとまりは弱いが、それぞれの提起する論点は興味深く読めた。本書の中で、社会階層によって学習の意欲に明らかに差がみられることなど、様々な問題を浮き彫りにはしているものの、それらに対する具体的な処方箋は示されていない。また再読し、それぞれの問題にどう向き合うのかをその都度考えることが、この本の活用方法なのかな、と感じた。
読了日:1月1日 著者:苅谷剛彦
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/34492581
■日本の難点 (幻冬舎新書)
宮台版『日本の論点』の自称にたがわず、多くの問題を宮台が縦横に語る。宮台の著作はサブカル神話と制服少女しか読んでいないが、思考の基本的な枠組みはそれらを継承しているように思える。得意の「社会システム理論」もでてくるし。ただ、それらの著作と決定的に異なるのが、「若者」への否定的な目線。今の大学生は馬鹿だ、能力がない、みたいなことが随所に書いてあるし、弟子筋の鈴木謙介含む「ロスジェネ世代」を痛烈に論難してるし、読んでいて胸にくるものがあった。感情的に、そこらへんの宮台の議論は好きになれない。
読了日:1月2日 著者:宮台真司
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■天の光はすべて星 (ハヤカワ文庫 SF フ 1-4)
宇宙を目指す男の夢と挫折。挫折を経て、どう現実と折り合いをつけるのか、という主題は普遍的かつ現代的で、かつ今の自分にクリティカルで、心に沁みた。次代に夢をつなぐことで、主人公は挫折を昇華した。それが夢を追い続ける、ひとつの方法なのかなと感じた。
読了日:1月5日 著者:フレドリック・ブラウン
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/34596023
中学生向けに、学校教育の様々な問題を提起する。中学生向けといえど、扱っている内容は面白く、文章も大人にも耐えうる感じ。1998年に出版された本だが、扱っている問題は、学校教育という制度、学校という空間に普遍的なものが多いので、未だに古臭さは感じられない。
読了日:1月5日 著者:苅谷剛彦
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/34605387
■丸山眞男の時代―大学・知識人・ジャーナリズム (中公新書)
丸山真男の遍歴をたどることで、戦後日本社会の変容を描き出す。丸山真男それ自体に関する記述よりも、彼の思想を説明するための周辺の状況、事件の記述の方が多かった印象。それゆえ散漫に感じることもあったが、それが本書の魅力でもあると思う。丸山真男がいかにカリスマ的な知識人だったのか、なぜそのような存在だったのかを、同時代人でない自分にも十分理解できる説得性のある説明をしていたように思う。最終的には、丸山の思考を敷衍する形で日本社会の変容までを記述していたが、唐突感もありあんまり理解できていないかも。
読了日:1月7日 著者:竹内洋
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■「資本」論―取引する身体/取引される身体 (ちくま新書)
マルクス主義の批判的継承のあり方を、社会契約論などの議論を追う事によって探る。労働=人的資本を財産として捉えることが、無産階級をも社会の中に位置づけるための仕組みとして機能する、というのが結論なのだが、それに至る論理展開、特に4章の議論は掴みきれず。いつか再読する。
読了日:1月9日 著者:稲葉振一郎
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/34695985
■大学という病―東大紛擾と教授群像 (中公文庫)
戦前の東大経済学部内の紛争の顛末を描くことを通じて、大学と「大学知」の普遍的に抱える病理をえぐり出している。『丸山真男の時代』、『教養主義の没落』と同様、ディテール豊かに人間を掘り下げていて、散漫にも感じられるがやっぱり面白い。竹内氏は、個別の問題を普遍化する手際が大変スマートだなと感じる。それは他の著作でも同様だか、明確な歴史像が前提として竹内氏の中にあって、それぞれの歴史事象をその中に矛盾なく位置付けているからなのかな、と思った。
読了日:1月20日 著者:竹内洋
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来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題 (幻冬舎新書)
- 作者: 國分功一郎
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/09/28
- メディア: 新書
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■来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題 (幻冬舎新書)
昨年東京都小平市で行われた、都道建設をめぐる運動とその帰結から、近代民主制の抱える問題をあぶり出し、それに対する処方箋を提起する。現在の民主主義の問題は、政策の実行に実際的に関わっている行政に、主権者がなんら関わることが出来ないことにある、というのが大元の問題点であるとする。政治哲学の問題が、現在の実践とリンクして語られることによって、明快かつ地に足のついたものになっている印象。政治哲学の問題をなんとなく掴めた気になった上、國分氏の問題意識にも大いに共感できたので新書といえどかなり満足した。
読了日:1月21日 著者:國分功一郎
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隣人が敵国人になる日: 第一次世界大戦と東中欧の諸民族 (レクチャー第一次世界大戦を考える)
- 作者: 野村真理
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2013/09/25
- メディア: 単行本
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■隣人が敵国人になる日: 第一次世界大戦と東中欧の諸民族 (レクチャー第一次世界大戦を考える)
第一次世界大戦の東部戦線ガリツィア地方において、マイノリティであるポーランド人、ウクライナ人、ユダヤ人それぞれがどのように生きていったのかを描写する。ほとんどの日本人に知られていない第一次世界大戦の一側面が分かるというのが本書の売りか。日本ではほとんど注目されていないであろうウクライナ人を扱ったことで、ポーランド人が単にロシアとオーストラリアに抑圧される主体ではなく、抑圧する主体でもあったことを提示しており、その点が白眉。ナショナリズムの両面が垣間見える例であると感じた。
読了日:1月21日 著者:野村真理
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35029298
■日本の個人主義 (ちくま新書)
歴史学者である著者が、同じく歴史学者である大塚久雄の論を糸口に、個人の自立の問題を考える。大塚の個人主義論をかなり詳細に紹介し、大塚より後の、ポストモダン哲学などの様々な議論を参照してその限界を暴きつつ、大塚の問題意識の現代的な意義を提示していた。「自立による社会的関心と経済成長」というのが大塚の議論の基本的な志向だが、それは継承していくべきである、というのが著者の主張。大塚史学のエッセンスを感じ取れて、何と無く勉強になった気がする。
読了日:1月26日 著者:小田中直樹
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35149312
■近代ヨーロッパ史 (ちくま学芸文庫)
15世紀の後半から20世紀前半、第一次世界大戦までのヨーロッパの通史を産業社会と国民国家の登場を軸に提示。そのふたつが登場した19世紀を大きな画期と捉え、その展開に至った原因としてヨーロッパ史の流れを構成している。もとは放送大学の教材だったようで、それゆえ教科書的な印象を受けた。記述は平明でわかりやすく、近代ヨーロッパの歴史の見取り図が得られた気になる。つまらないわけではなかったが、今読む本でもなかったかなというのが正直な感想。
読了日:1月26日 著者:福井憲彦
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35169956
■マルクスに誘われて―みずみずしい思想を追う
高田明典氏の本で紹介されていたので読んだ。マルクスの思想を研究してきた著者の自伝。マルクス主義思想華やかなりし時代から、世間の関心を集めなくなってもマルクスの思想と向き合い続けた著者の人生が語られていた。現代を鋭く批判するためにマルクスの思想は有用、というのが著者の考えるところか。マルクス思想の勉強になったかは正直微妙だが、著者の人生は山あり谷ありで、様々な研究者との関わりもあり、大変面白く読めた。
読了日:1月27日 著者:的場昭弘
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集中講義!日本の現代思想 ポストモダンとは何だったのか (NHKブックス)
- 作者: 仲正昌樹
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2013/08/20
- メディア: Kindle版
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■集中講義!日本の現代思想―ポストモダンとは何だったのか (NHKブックス)
日本において「現代思想」がどのようなものであり、現在に至るまでにどのような流れをたどったのかを概観していた。主にフランス由来の思想がどのように受容されたのか、それがどのように影響力をもったのかを、簡潔に知ることができた。それらの思想のエッセンスも、引用を交えて平明に記述されていたので、かなり便利な本だったな、という印象。時代遅れになったかにみえる「現代思想」だが、まだ現状批判の道具としては意味を失ってはいない、というのが著者の主張。
読了日:1月28日 著者:仲正昌樹
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35216324
■デリダ (CenturyBooks―人と思想)
高田明典氏の本で紹介されていたので読んだ。デリダについてわかったような、わからんような。高橋哲哉氏の著書は、何と無くわかった気になった気分になったが、こちらはよくわからない感の方が強い。脱構築などの概念も、高橋氏の著書の方がわかりやすく説明されていた印象。ただ、デリダの哲学をわかったような気になるよりは、「わからない」ということがわかる方がデリダっぽい気がするので、まあいいのかなという感じ。
読了日:1月29日 著者:上利博規
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35227669
■20世紀日本の歴史学
明治から現在に至るまでの日本の歴史学の史学史。歴史学に関わる人間として、もっと早くに読むべきだった。名著の中の名著。数多の歴史学者が、時に政府や言論の弾圧を受けながらもそれぞれの問題意識から歴史像を描こうとしてきた努力の上に、現在自分もいるのだという当たり前の事実に気づかされた。「おわりに」を再読すれば流れが復習できる。
読了日:1月29日 著者:永原慶二
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/35239156
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:4184ページ
来月のはこちら。
2014年2月に読んだ本ーいわゆる「古典」を読んだ - 宇宙、日本、練馬