宇宙、日本、練馬

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『アメリカン・ハッスル』 嘘は甘くてほろ苦い

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 デヴィッド・O・ラッセル監督『アメリカン・ハッスル』を見てきた。監督の前作『世界にひとつのプレイブック』がすごくよかったので、今回も見に行かねばと見に行ったが、前作と比べるとビターな感じで、しかしなおかつ爽快感もあるというすばらしい映画だった。以下で簡単に感想を書いておきたい。

 超豪華な役者陣

 本作はラッセル監督の『世界にひとつのプレイブック』と前々作『ザ・ファイター』と出演者がかなりかぶっている。前作で主演を務めたブラッドレイ・クーパー、ジェニファー・ローレンスのコンビは今回も出演しており、助演したロバート・デニーロは今回も重要や脇役を演じている。『ザ・ファイター』で脇を固めたクリスチャン・ベールエイミー・アダムスの二人は、主人公的な役回りを演じる。それらいわば顔なじみの俳優たちに加え、ジェレミー・レナーも加わって、結果的にとんでもない豪華な顔ぶれになっている。

 そんなわけで、豪華な役者のかけあいを見ているだけでもう大満足というか、もとはとった感がありましたね。余談ですが、『世界にひとつのプレイブック』でイカレ気味の人物を演じた主演二人は、今回も頭のネジのはずれた役で、ちょっとおもしろかったです。

人を騙すことの意味

 『アメリカン・ハッスル』のテーマは、「騙す」ことはいったいどんな意味を持ってしまうのか、ということじゃないかと思う。詐欺師を主人公に据え、「嘘」の功罪を描いた作品、と僕は物語を解釈した。

ゴーストライターを創るのは誰か?-『ディア・ドクター』から考える - 宇宙、日本、練馬

 先日書いたこの記事で、『ディア・ドクター』を見て同じような感想を書いた。『ディア・ドクター』では、嘘偽りでも、その核心に善意であるとか、利他的な情熱があるならばそれは美しいんじゃないか、という姿勢だったけれども、『アメリカン・ハッスル』はもうちょっとビターだ。詐欺師の主人公は嘘をつくことで「サバイバル」には一応の成功を収める。しかし同時に最も大事なものを失いもする。それは決して戻ってはこない。

 人生において人をだますことが必要になってくる局面もあるかもしれないし、嘘をつくことがよりよい方向に事態を変えるかもしれない。しかし、それによって大事なものを失う可能性もあることを決して忘れてはならない。『アメリカン・ハッスル』から引き出せる人生訓はこんなところか。嘘偽りは黒でも白でもなくグレー。その結論はほろ苦くて、だからこそ味がある結末だった。

 

 

American Hustle (Original Motion Picture Soundtrack)

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アメリカン・ハッスル 上 (河出文庫)

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アメリカン・ハッスル 下 (河出文庫)

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