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宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

「実話」の強度ー『艦これ』と「実話系映画」からみえるもの

雑記 映画 ゲーム

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 今*1、映画、特に洋画で実話モノがアツい*2。 僕も今年見に行った映画は意外なほど実話モノが多くて、改めておどろいた。その実話モノの魅力を、ちょっと考えたいなと思う。

 そのためのヒントを得るために、『艦隊これくしょん』を参照する。突飛に思えるかもしれないが、両者の共通点を探ることで、現代社会の特質が明らかになる*3

 『艦隊これくしょん』の魅力とは?

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 ここ半年くらい、『艦隊これくしょん』の話題を聞かない日はない。もう1年ほど前になるだろうか、友人がなにやらPCでゲームをやってるな、と画面を覗き込んだのが僕と『艦これ』の出会いだった。その時は、女の子が可愛いけどゲーム性はあれだよなー、と思って特に始めようとは思わなかった。

 そんな僕もつい最近ふとやってみようかなと思って始めてみたのだが、意外と中毒性がある。でもなにが面白いかはよくわからない。中毒性はあるけれども、ゲームとしては端的に言ってつまらない。

 僕は家庭用ゲームをそれほどやっているわけではないが、最近のゲームはマウスをぽちぽちして結果を待つだけの『艦これ』よりもはるかに面白い。最近やった『RED DEAD REDEMPTION』は西部劇を追体験できてとんでもなく興奮したし、今のポケモンは手軽に手に汗握る対戦が可能だ。

萌えだけじゃない!『艦これ』がヒットした理由とは? - 【理由1】プレーヤーの役割が首尾一貫している 日経トレンディネット

 RDRやポケモンと比較すると、『艦これ』は別に艦隊戦の追体験であるわけでもなく、他のプレイヤーとの手に汗握る駆け引きがあるわけでもない。そういう意味では明らかに「つまらない」ゲームだと言える。『艦これ』が「ゲームとして面白い」とのたまう上の日経トレンディネットの記事を書いた記者は、RDRでもポケモンでもやったら面白すぎて失神するのではないか。

 それよりは、ダラダラとプレイできること(むしろそのほうが効率がいいとさえいえる)、キャラの魅力の二点を指摘したこの記事のほうが説得的だ。

艦これ:3分で分かる人気の理由 ファンが語る魅力とは - MANTANWEB(まんたんウェブ)

 もちろん重要なのは後者のほうだ*4。『艦これ』の魅力は、すなわちキャラ=艦娘の魅力と言い換えることができる。性格や設定を付与されつつも、物語を背負うことないキャラクターに、二次創作で物語を与えて消費する。こんな受容のされ方は、Twitterで教えていただいたところ東方なんかと似ているそうである。僕個人は東方は全然知らないのでなんとも言えないのだが。

「史実」を請け負う艦娘たち 

 しかし東方とは決定的に異なるのが、ゲーム上では物語を背負っていない艦娘は、「実話」という物語をメタ的に請け負っていることである。ここでいう「実話」とは「史実」という風に言及されることが多い*5

 『艦これ』のwikiをみれば、それぞれの艦娘のモデルとなった艦船についての情報が詳しく書き込まれていることがわかる。「史実」は艦娘のゲーム的な性能にも多少は関わってくるため、多くの人がそれを意識せざるを得ない。つまり「史実」というメタ物語はプレーヤーに広く共有されることとなる。

 そしてこの「史実」は、二次創作においても無視できない情報として共有されているのではないか。「史実」を無視することは、すなわちキャラの特徴を捉えられていないことと同義となるのではないかと思う。「史実」というメタ物語によって、二次創作の方向性が決定づけられるのだ。

 これだけでは、艦娘たちは「史実」によって強く規定された不自由なキャラクターにすぎない、とも思える。しかしこの制約はプラス方向に働く。制約が生じるのは、「史実」というメタ物語が共有されることによってである。このメタ物語の共有によって、多くの人の共感を得るような二次創作を行なうことが容易になっているのではないか。つまり「史実」という共有された基盤があることによってこそ、艦娘は二次創作にとって魅力的なキャラクター足りえているのである。

 つまり艦娘の魅力の一端は、ゲームのストーリーという意味での物語を超えた、「実話」というメタ物語にあるのだ。

 

「実話系映画」の魅力とは?

 さて、艦これについての分析はこれくらいにして、映画の話題に移ろう。今年僕が映画館でみた映画は、実話を元にしたものが多い。

 今年映画館で見たのは試写会も含めて7本だから、半数以上を実話モノが占めている。これは僕の好みの映画の傾向も多分に影響していると思うが、僕が見たもの以外でも、『ダラス・バイヤーズ・クラブ』、『それでも夜は明ける』、『RUSH』など、実話モノが多く公開されている。

 実話モノの魅力はこれだ、と一概には言えないと思うが、やっぱり実在の人物の人生の一部を切り取った感覚というか、それが魅力なのでは、と思う。ここで重要なのは「実在」しているという感覚だと僕は思う。「実話」だからこそ、そこでなされた選択の意味は重く、そしてそれが尊いものであるという感覚は強烈になる気がする。だから『ハンナ・アーレント』の結末はこれ以上ないほど輝いているし、『アメリカン・ハッスル』の結末は美しく見える。つまり実話モノでは物語自体が更にメタ物語を背負っているとは言えないだろうか。

 『艦これ』はメタ物語を背負うからこそキャラクターが魅力的にみえたが、実話モノはメタ物語を背負った物語だから魅力的なんじゃないかというのが、とりあえず今の僕の思うところです。

 

 

 

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*1:いつ?

*2:と勝手に思っている。

*3:大嘘

*4:僕個人としては、ダラダラと気負わずできることも、家庭用ゲームとの差異化という点で大きな意味があると考えている。とはいえ『艦これ』の消費のされ方をみるに、キャラクターの重要性はいくら強調してもしすぎることはないだろう。

*5:歴史学徒のはしくれとしては、「史実」という言葉をあんまり安易に使いたくはないのだが。

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