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「可能性の獣」としてのニュータイプ―『機動戦士ガンダムUC』感想 

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 『機動戦士ガンダムUC EP7 虹の彼方に』をBlu-rayで視聴。結局映画館へ足を運ぶことはできなかったんですが、いや、よかったです。2010年から足掛け4年。正直長かった。しかし見事にクオリティを超絶ハイレベルで持続させつつ完結させたなと。せっかくの機会なので、『機動戦士ガンダムUC』アニメ版全体についての感想を書いておこうと思います。

 モビルスーツ戦が最高だった

 なんといっても印象に残っているのは、とんでもないクオリティで描かれるモビルスーツの戦闘ですよ!EP1の冒頭、クシャトリヤvsスターク・ジェガン、もうこのシークエンスで一気に心を鷲掴みにされた。

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 ニュータイプの操る専用機に対して、見事に対応する量産機。それをコクピット内の描写を含めてあれほどスリリングに描写されたらもうテンションが上がらないわけがない。ぶっちゃけ、戦闘シーンの描写だったらユニコーンという作品を通してここが一番好きかも知れない。

 とはいえ毎回毎回、趣向の異なるMS戦闘を見せてくれて、本当にそれだけでも「見てよかった」と心から思えましたね。シナンジュを駆るフル・フロンタルの超絶的なテクニックで魅せたEP2、要塞攻略からニュータイプと強化人間の意志の邂逅、最後は大気圏突入のサスペンスルフルな駆け引きと盛りだくさんなEP3...。それぞれのエピソードでこれほど趣向を変えて楽しませてくれるとは思わなかった。

 そして最終話EP7は、今までの戦闘シーンの魅力を凝縮したかのごときフルコース。量産型MSを操る名もなき一般兵の活躍あり、懐かしのMSの登場あり...。もちろんそれだけにとどまらず、まさしくラスボスにふさわしい威容を持つネオ・ジオングとそれに対する二機の一角獣。

 その結末もすさまじい。『2001年宇宙の旅』を想起させるような、めくめるめく人間の認識の万華鏡と、ニュータイプとは何か、という問いに対する回答。いやー、MS戦こそユニコーンの何よりの魅力だと思います。

 

「可能性の獣」とは何か

 そのニュータイプとは何か、という問いに対する回答とは、いったいどのようなものであったか。以下で自分の考えを述べたい。

 「人間だけが神を持つ。今を超える力、「可能性」という名の内なる神を。」

 主人公の父、カーディアス・ビストから語られるこの言葉。これこそ『機動戦士ガンダムUC』で語られるニュータイプ論の根幹に他ならないのではないか。「可能性という内なる神」をその身に宿し、それを発言できるもの。言いかえれば、「可能性の獣」こそ、ユニコーンの描くニュータイプ像に他ならないと感じた。

 終盤、ニュータイプとして覚醒した主人公、バナージ・リンクスは人知をはるかに超えた力を発揮する。その描写として印象的なのは、コクピットの内部が全く描写されないということ。先ほどまで共闘していたリディにとって、突然、バナージは理解をはるかに超えた「他者」として顕現する。

 ニュータイプの能力の極限は、人間の領域をはるかに超えた彼岸へと、バナージを運んでしまう。このことは、『機動戦士ガンダム』のラストにおいて、ニュータイプの能力の果たした役割と対照的だ。ファーストでは、アムロニュータイプの能力ゆえに、宇宙空間の中から帰る場所を見つけ出す。「まだ僕には帰れるところがあるんだ。こんな嬉しいことはない...。」

 ニュータイプの能力ゆえに此岸へと帰ってきたアムロと、彼岸へと向かうかと思われたバナージ。この対比は象徴的だ。ここにこそ、ユニコーンの提示したニュータイプの姿がある。人と人とがよりよくわかり合う縁ともなり、一方で研ぎ澄まされた先には彼岸しかないという意味で、ニュータイプの能力はまさしく両義的。「可能性の獣」という表現は、この両義性をなにより表してはいないか。

 とはいえ、物語は獣の力に飲み込まれたニュータイプを描いて終わろうはずがない。彼岸に旅立ったかに思われたバナージを、愛する人が引きとめる。獣の両義性に引き裂かれながら、「可能性という内なる神」を信じて未来へ命がけの跳躍を果たす。それがユニコーンの結末であり、製作者が提示したあるべき人間の姿なんじゃないかなと感じる。

 

 この象徴的な対比の含意はまだまだあるんじゃないという気がするけれども、とりあえずはこんな感じのことを考えました。また考えがまとまったらなにか書きたいなー。アムロとバナージの置かれた状況とか行動とか、かなり時代の雰囲気を表しているんじゃないかなーとぼんやり思っています。

 

 

 

機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック4

機動戦士ガンダムUC オリジナルサウンドトラック4