『ザ・レイド GOKUDO』を見てきました。ノーランの『インターステラー』かこっちかで迷ったんですが、こちらの方が早く上映終了になってしまう気がしたのでこっちを選択。いやー、面白かったです。面白かったです以外に感想がないといえばないんですが、一応感想を。
身体も、ただの物質に過ぎない
前作『ザ・レイド』の究極にして唯一無二の魅力は、やっぱりアクションだと思うんですよ。軍隊格闘術シラットで容赦なく敵を屠っていくラマ(イコ・ウワイス)と、対するマッドドッグ(ヤヤン・ルヒアン)をはじめとするイカれたギャングたち。彼らが閉鎖空間で繰り広げる、血で血を洗うアクションに次ぐアクション。その魅力は『ザ・レイド GOKUDO』で正統に継承され、さらに進化していた。
予告編を見ていただければわかると思うんですが、前作はギャングの巣食うボロアパート一本勝負だったのに対し、今回は刑務所から高級レストランまで、格闘からカーチェイスまでよりどりみどりなわけですよ。加えて敵のキャラの濃さも間違いなく前作を凌駕している。クレイジーさ増し増し。今回のアクション的な意味でのラスボスのお名前はキラーマスターとかいう三秒で考えたみたいなネーミングセンスだし、何故かバットと野球ボールを携帯し、それでヤクザを次々ホームランしていくベースボール・バットマンとか、GOGO夕張を彷彿とさせるハンマー・ガール(ジュリー・エステル)とか、いろいろおかしいと思うんですよ。明らかに場違いと思われるような奴が出てきても、画面の緊張感が損なわれないのが謎で、楽しい。特にハンマー・ガールが電車内でヤクザを次々と撲殺・刺殺していくシーンは爆笑もんですよ。でもタランティーノみたいに脱力はしないんだよなー、何故か。
そんわけで前作から舞台とか敵役とか変化しているわけなんですが、前作のキモだったアクションのえげつなさはばっちり踏襲されている。どうみても骨は折れているようにしかみえないし、刃物で切られれば血は飛び散るし、本当に「殺す気」しかないのが画面を通して伝わってくるというか。軍隊格闘術たるシラットの前では、人間の身体はその特権性を剥ぎ取られ、ただの物質としてのみ、在る。そこらへんは前作と通底するこのシリーズのアクションの本質だと僕は思います。
日本版はいくつかのシーンがカットされてるっぽいですが、十二分に残虐非道ですよ。カットされる前のヴァージョンを見たわけではない僕には比較できないので下手なことは言えませんが、明らかにカットされてるっぽいシーンは一か所くらいしかわからなかったし*1、それも別段興をそぐような感じではなかったです。
他にもキューブリック的な空間美とか、偉大な父を以てしまった二代目の悲しさを描いたテンプレっぽいけれども味わい深い人間ドラマとか、魅力はたくさんあるんですが、それを吹っ飛ばしてしまうよなー、シラットは。『喧嘩稼業』はもうシラット最強だったってことで完結してもいいんじゃないすか。
【作品情報】
‣2013年/インドネシア
‣監督:ギャレス・エヴァンス
‣脚本:ギャレス・エヴァンス
‣出演
- イコ・ウワイス:ラマ
- アリフィン・プトラ:ウチョ
- オカ・アンタラ:エカ
- ティオ・パクサデウォ:バンクン
- アレックス・アッバド
- ジュリー・エステル:ハンマー・ガール
- 松田龍平:ケンイチ
- 遠藤憲一:ゴトウ
- 北村一輝:リュウイチ
- ヤヤン・ルヒアン:プラコソ
*1:ツルハシで脳天をかち割るシーンが明らかにカットされてるような気がするんですよね。