読書メーターを使い始めてから、早いものであっという間に1年が経ちました。昨年の12月にはじめた時には、まさか続いているとは思いもしなかった。なんで続けられたのかというとやっぱり読書メーターさんのインターフェースにまんまと乗せられてしまったんでしょうね。読書量が目に見える形でグラフ化されるて、積み上がっていくこと自体が楽しい。PSのトロフィー感覚というか。なんか本末転倒な気もしますけど、本を読むモチベーションにはなったので結果オーライですかね。そんなわけで今月読んだ本と、今年の自分の読書について振り返ろうと思います。
先月のはこちら。
特に印象に残った本
一番印象に残っているのは佐藤俊樹『社会学の方法―その歴史と構造』。デュルケムから始まりルーマンに至る社会学史の語りの面白さと、そのルーマンの批判的継承を実践して見せるその手際に完全にノックアウトという感じでした。ルーマン理論の批判的継承は、ぶっちゃけ十全に理解できてないんですが、見たことのない風景を垣間見せてもらったというか、ずいぶん遠くまで連れて行ってくれた、という感覚があって。佐藤さんのこっちも早いところ読みたい。
読んだ本のまとめ
2014年12月の読書メーター
読んだ本の数:25冊
読んだページ数:7296ページ
■おどろきの中国 (講談社現代新書)
社会学者3人が中国について議論する。古代に国家としてゆるい統一がなされたからこそ、近代に入ってから国民国家的な統一が阻まれた、みたいな考察など、現代の中国のあり方を考えるために歴史的な構造やら心性やらをひっぱってくるのだが、割となるほどと納得させられる感じがした。歴史を教訓にする、とはまた違った仕方で、歴史的に物事の有り様を捉えていくことには一定の意味があるんだなと。情報量が多く話の種になりそうなトピックが無数に転がっている感じがして、楽しく読んだ。
中国を国家として捉えるのではなく、EU、ヨーロッパ的なものと捉える方が理にかなっている、みたいなことが印象に残っている。ヨーロッパ的な認識の枠組み、それを基盤にした社会学的な見方では中国の実態を説明しきれないという主張は、なるほどなーと感じた。
読了日:12月1日 著者:橋爪大三郎,大澤真幸,宮台真司
http://bookmeter.com/cmt/43179878
■世界史の方法
前半は上原専禄の世界史論の素描、後半は短めの歴史学、歴史教育に関する論考を所収。前半の上原の世界史論は未完だが、文献学チックに「日蓮=世界史」提唱に至る上原の思考の軌跡を追っていて十二分に読ませる。世界史を民族の独立をキーとして構想し、地域世界論から「日蓮=世界史」への飛躍。後半の諸論考はさすがに古さを感じて流し読みしたが、「高校までの歴史はつまらぬ暗記に堕している」的な認識など、いまだに前に進めてないんじゃねーかと暗澹たる気分になったり。
読了日:12月3日 著者:吉田悟郎
http://bookmeter.com/cmt/43236923
■読者は踊る (文春文庫)
90年代後半あたりの書評をまとめたもの。安定の舌鋒の鋭さ、品のなさ。反権威を隠そうともしない姿勢がウリ。単にこき下ろすのでなくて、そのテーマを扱っている本の中でオススメできるものを紹介していることが多くて良心的。死海文書関連本の紹介などはとんでも本とそうでないものの区別が一見つかないので、本書の書評を読んでなるほどと感じた。しかし歴史修正主義をめぐる議論にどっちもどっち的な評価をするのはどうなんだ。サヨクもウヨクも叩いてアイロニストを気取っているような感じが癪に触った。そういうアイニカルな態度がはやった時期もあったんだろうが、それはとっくに時代遅れで、むしろ今はベタに意見を述べ行動することの意味が見直されてるんじゃないの。陳腐な理解ですが。
読了日:12月4日 著者:斎藤美奈子
http://bookmeter.com/cmt/43246789
憲法に関する論考をまとめたもの。各章がそれぞれ別に発表されたが故に独立性が強く、そのため様々な観点からの憲法の見方が示されているような印象。戦争とは異なる憲法同士の戦いであるが故に、最終的には敵国の憲法を変更することこそ勝利なのだ(冷戦、第二次世界大戦における日本など)という見立てや、憲法において重要なのは具体的なテクストではなくそれを解釈する慣習なのだ(ハートの提唱する理論らしい)、というのが特に印象に残っている。あと参考文献の解説が詳しくてよい。
読了日:12月4日 著者:長谷部恭男
http://bookmeter.com/cmt/43259466
戦争のるつぼ: 第一次世界大戦とアメリカニズム (レクチャー第一次世界大戦を考える)
- 作者: 中野耕太郎
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2013/09/25
- メディア: 単行本
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■戦争のるつぼ: 第一次世界大戦とアメリカニズム (レクチャー第一次世界大戦を考える)
第一次世界大戦はアメリカをどう変容させたのか。それはアメリカニズムという一種の普遍的な理念の下に国民を作り出したと言えるのではないか。本書ではアメリカが参戦に踏み切る背景から出発し、総力戦の中で人種主義的なエートスが浮き彫りになる様相を描いている。人種問題に少なくない頁が割かれているが、僕はむしろ「被治者の合意」を後ろ盾に、自発性を利用した動員によって総力戦体制が構築されていく前半部分を特に興味深く読んだ。人々の自発性を梃子に彼らをシステムに組み込んでいくその構造は、現代にも繋がるような繋がらないような。
このシリーズは現代への目線が強く意識されてるような気がして読んでいて面白い。好き。
読了日:12月5日 著者:中野耕太郎
http://bookmeter.com/cmt/43274711
■教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)
日本における「抵抗」のための職業教育の必要性を主張する。かつて高度成長期の専門高校にみられるような「適応的」な職業教育が、高等教育を受ける若者の割合が増えるにつれ衰退していった。現代ではキャリア教育という形式で職業教育がなされているが、それらはあくまで「適応」の側面が強く、著者の考える教育の職業的意義とは位相を異にしている。「柔らかな専門性」を身につけることこそが、職業教育においては肝要であるというのが結論だろうか。それの実現可能性はともかくとして、職業教育の概観をつかめたのはよかった。
読了日:12月6日 著者:本田由紀
http://bookmeter.com/cmt/43294964
コミュニティデザインの時代 - 自分たちで「まち」をつくる (中公新書)
- 作者: 山崎亮
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/09/24
- メディア: 新書
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■コミュニティデザインの時代 - 自分たちで「まち」をつくる (中公新書)
所謂「まちづくり」を通した地域社会の活性化を支援してきた著者が、そのデザインの在り方について論じる。とてもキラキラしていて、地方における様々な問題など、ひとたびコミュニティデザイナーが地域の人間たちを動かすことができれば簡単に解決できるほど瑣末なことであるかのように感じられる。しかし例示される人口2300人の町ですらまちづくりに参加していない2000人が存在するわけで、そんな人がどのように「まちづくり」を眺めているんだろうなーなんてやっぱり思う。地域の繋がりがそんなに素晴らしいとは、やっぱり思えない。
それと「コミュニティデザインの教科書を書くことは困難」「その人と地域の特性にあったやり方がある」というのは至極もっともだと思うけど、結局名人芸なのね、とも思ってしまう。コミュニティデザインの名人がすべての地域社会に関われるならともかくとして、一つの理念型は本書の記述に手続き的なものを肉付けすれば十分可能なのでは。地域社会の活性化を目論む著者の姿勢に懐疑的だったが、残念ながらそれは覆らなかった。
水が高きから低きへ流れるように、人間は住みにくい場所から住みやすい場所に移る。大都市への人口流入が止まらないのは、結局、大都市のほうが地方よりも住みやすいからである。人口移動がつりあった時、はじめて「住みやすさ」もつりあったといえる。地方に住めば、それは痛いほど実感される。
佐藤俊樹「真空と熱狂」
結局、地方創生とかのたまってる連中はこのことがわかっていないのでは。人口減少地域は先進地域なんだ!みたいな発想を持てるのは、地方の「住みやすさ」に対して鈍感であるか、目を閉ざしているのか、どちらにせよ「痛いほどの実感」を味わったことのない連中だけだと僕は思う。
読了日:12月7日 著者:山崎亮
http://bookmeter.com/cmt/43310790
黒人差別とアメリカ公民権運動―名もなき人々の戦いの記録 (集英社新書)
- 作者: ジェームス・M.バーダマン,James M. Vardaman,水谷八也
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/05
- メディア: 新書
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■黒人差別とアメリカ公民権運動―名もなき人々の戦いの記録 (集英社新書)
1954年から68年までのアメリカ公民権運動の進展を、代表的な事件を取り上げつつ概説する。ブラウン判決からバスボイコット、ワシントン行進を経て公民権法に結実するまでの流れが、それぞれの事件のディテールを丁寧におさえつつ整理されていて勉強になった。詳細に述べられる黒人へのサディズムの数々は、正直言って「想像もつかない」ほどおぞましく、よくも同じ人間にここまで酷薄になれるものだと鳥肌がたつ。このような人種主義はいまだアメリカ社会の底流に根強く存在することは最近の事件でも露わになったし、知っておくべきだと思う。
これを海の向こうの 対岸の火事だと思ってしまったらそれまでだけど、昨今のヘイトスピーチ問題やら排外主義の高まりやらを見聞きするにつけ、どうやらそうも思ってられない状況にあるんじゃなかろうかなんて考えたり。どこかで明確な線を引いた人間が、いかにそのラインの外側の人間に対して残酷な仕打ちができるのか。警察権力や司法と結びついた暴力に対抗するのがいかに難しいのか。そんな中でも非暴力の抵抗を貫いた人々の精神こそ、学び取るべきなのかも。
とはいえここから半世紀たっても、アメリカには人種主義は社会に根強く残ってて、時にそれが極端な形で露わになって人を殺すんだから人間の精神ってのは如何に変え難いか。
読了日:12月8日 著者:ジェームス・M.バーダマン
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■関係する女 所有する男 (講談社現代新書)
女性と男性、それぞれの思考の在り方を「関係」原理と「所有」原理という観点から捉える。タイトルから、紋切り型の男女の性格類型本みたいな匂いがしたけど、そこは紋切り型の議論をしているわけではないことを序盤で再三強調し、それらを批判してもいる。特に脳やらホルモンなど生物学的な要素による決定論は強く退けている。「ジェンダー・フリー」でなく「ジェンダー・センシティブ」という立場を取ると述べる通り、男女の差異を認める立場から書かれているため、ラディカルなフェミニストの方の批判を呼びそうな感じを受けたりもした。
関係と所有という軸で男女の差異を語ってみせる手際が小気味よく、面白く読んだのだけれども、結構紋切り型の議論の匂いを感じるところもあったり。男性のおたくの作品受容の在り方なんかは、『けいおん!』やら『ゆるゆり』なんかの男性不在の作品がヒットしたことを説明できないような。それと斎藤さんの本を何冊か読んでなお、精神分析ってなんだかよくわかってないのと、ラカンが表立って論じられるセクションはどの本においても自分の理解が及ばない感じがある。
読了日:12月9日 著者:斎藤環
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■社会認識の歩み (岩波新書)
社会科学的な認識と現実との接続、という問題意識の下、本の読み方から入って、マキャベリ、ホッブズ、ルソーとスミスという思想家を繋いで社会認識の思想史を展開する。正直、論の筋をきちんと追うことができず、内容もあんまり頭に入っていない。運命と意思のせめぎ合いを人間に見て取り、現実における行動の在り方を「賭け」と表現したマキャベリであるとか、スミスは直接言及せずともルソーの認識を強く意識していただとか、そういう個別のトピックはなるほどなあと心に残ったんだけれども。いずれ再読を要す。
期せずして本書で述べられている「本を断片として読む」という読み方を実践してしまった感があるけど、それでいいんだろうか。多分よくない。
読了日:12月10日 著者:内田義彦
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■不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)
現代日本は「努力すればナントカなる」社会なのか。それとも「努力してもしかたない」社会であるのか。「社会階層と社会移動全国調査」のデータをもとに、戦後の日本社会を検討する。学歴や職業上の地位を得るための競争のシステムが飽和したことによって、現在は戦前以上に「努力してもしかたない」「閉じた社会」になりつつあるというのが著者の認識で、もう出版から約15年が経つ現在、その認識は残念ながら社会の実感として膾炙してしまったような感がある。
提示される政策のビジョンの骨子は、高度成長期のような豊かの拡大は、歴史上もう期待できないことを前提に、選抜機会の多元化を志向するというもの。それにはなるほどなあという感じなのだが、具体的な職業の在り方として例示されたのが「カリスマ美容師」だったことが驚きだった。カリスマ美容師ってめっきり聞かなくなったよなー。
あとがきで佐藤さんの生い立ちが述べられていて、共感するところ大だった。やっぱり僕にとって「地元」と「東京」の問題系というか、そういうものが頭の片隅につねにある。
読了日:12月11日 著者:佐藤俊樹
http://bookmeter.com/cmt/43413780
満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書)
- 作者: 加藤陽子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/06/20
- メディア: 新書
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■満州事変から日中戦争へ―シリーズ日本近現代史〈5〉 (岩波新書)
満州事件に端を発し、激動の30年代を経て長期持久戦に至る流れを概説する。国際・国内政治の動きを相当丹念に記述している印象を受け、なるほどなと思う反面、様々な立場の人間の人名が乱れ飛ぶのでついていくのがつらかった。というかあんまりついていけなかった。ある程度政治のアクターの名前を知らないと読むのがきついかも。満蒙の権益をめぐる政治的な戦略が、あれよあれよと転がってついには終わりの見えない戦争へと足を踏み出すという構図くらいしか頭に残せていない感じがある。
読了日:12月13日 著者:加藤陽子
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アジア・太平洋戦争―シリーズ日本近現代史〈6〉 (岩波新書)
- 作者: 吉田裕
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/08/21
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■アジア・太平洋戦争―シリーズ日本近現代史〈6〉 (岩波新書)
アジア太平洋戦争の勃発から日本の敗戦までの概説。軍事史から銃後の社会、政治的な意思決定から植民地における総力戦の様相まで幅広く問題を取り上げられていて、戦時中の社会について知った気になれる。様々なトピックを論じているのにも関わらず、散漫な記述になっておらずぐいぐい読ませる上に記述も平明なのがすごい。総力戦の進行するなかで社会全体が動員のために再編されていく過程、そして何より悲惨極まる戦場の状況。後者のリアリティを伝えるために軍事史的な叙述がなされている印象があり、そこに著者の問題意識がある感じがする。
このシリーズはとても勉強になるのだけれども、本によって想定する読者層がまちまちだよなーと。加藤さんと吉田さんのは連続した時代を扱ってるのに良くも悪くも好対照。ある程度の知識がないと理解がきつい加藤さんのと、平明簡潔な吉田さんのとで。
読了日:12月14日 著者:吉田裕
http://bookmeter.com/cmt/43478954
■シャーロック・ホームズの推理学 (講談社現代新書)
ホームズの推理の方法論を、彼が生み出された19世紀の科学的方法論との関係から論じる。「ホームズの方法は確率論的方法であり、不確実な推理を確率の判断をうまく使い、いくつかの推理の相乗効果で高い成功率を得る」という主張は、ホームズ自身の語るところに裏付けられてかなり説得性があるように感じた。その背後に古典的科学観と対立する確率論的科学観があり、それが当時のダーウィン評価と結びつけて語られる終盤はあんまりのれなかった、というか蛇足と感じた。とはいえホームズの魅力を十二分に再確認できて満足。ホームズ再読熱が高まる一冊だった。
読了日:12月14日 著者:内井惣七
http://bookmeter.com/cmt/43491292
- 作者: パオロマッツァリーノ,Paolo Mazzarino
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2007/07
- メディア: 文庫
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社会学批判が全面的に展開されているのは冒頭の一篇だけで、大部分が所謂一般常識とされているモノの見方の誤りを資料を引っ張ったり屁理屈をこねたりして茶化すことに終始しているが、十分に楽しめた。西欧諸国と日本の大学や若者のあり方の違いやら、ハコモノ行政への鋭い批判などトリビアルな知識がちりばめられていて面白かった。最後に述べられている「自立至上主義」的価値観への疑義はなるほどなーと納得。文体も品がなくてユーモアに溢れていて、楽しい読書だった。
読了日:12月17日 著者:パオロマッツァリーノ
http://bookmeter.com/cmt/43554496
■グラマトロジーについて 上
主にソシュールを分析する第一部と、レヴィ=ストロース、ルソーを扱う第二部から成る。音声言語の補完物たる文字言語、という形而上学的な本質主義、二項対立がそもそも成立しないのだということを、その二項対立を措定して論を展開するソシュール自身のテクストを読解していくことで明らかにする手際がひたすらクール。書差作用、差延作用からの逃れることの不可能性というか、その作用の根源性みたいなことを重視しているようだ。読んでいる最中には「なるほどなー」という感じなのだけど読み終わったときに自分に何が残っているのかあやしい。
読了日:12月18日 著者:ジャック・デリダ
http://bookmeter.com/cmt/43571916
様々な分野を横断するエッセイをまとめたもの。「「すなお」で「自由」な感性は、実はまったくすなおでも自由でもない。見るのも聞くのも感じるのも、すべてなんらかの訓練と教育と知識ベース/教養があって可能になるものなのだ」というプロローグの一文に、本書の問題意識は凝縮されていて、教養たるものの「楽しさ」に触れるためのフックが其処彼処に散りばめられているような本だった。その主張の普遍性こそが「未だ古びていない」と感じさせる要因なんだろうか。それとこの時期からリフレ政策って提言されてたのねっていうのは驚き。
読了日:12月19日 著者:山形浩生
http://bookmeter.com/cmt/43583740
屍者が跋扈する19世紀、英国の諜報員ジョン・ワトソンが、「屍者の帝国」を築いているとうわさされるアレクセイ・カラマーゾフ、そして「最初の屍者」=ザ・ワンを追ってアフガニスタン、日本、アメリカ、そしてロンドンを駆ける。
無数のオマージュをばら撒きながら語られる世界一周の冒険譚は、間違いなく『虐殺器官』と『ハーモニー』で示された未来を乗り越え、その先の人間を描こうとした物語だった。限りある生と、終わりなき死の狭間で揺れ続ける人間の未来。矛盾の間に立ち続けることこそが唯一の生きる道なのか。生と死、自由と不自由、意識と無意識、それらの間の隔絶は曖昧で、曖昧なままで揺れ続けるしかない。それでも不確定な未来を選び続けるしかない。そんな風に呼びかけられているような気がした。
読了日:12月20日 著者:伊藤計劃,円城塔
http://bookmeter.com/cmt/43623054
■マルクス入門 (ちくま新書)
入門書としての機能を十全に果たしているのは序章だけで、それ以降は著者の解釈するマルクス像が全面に、深く展開される。マルクスによる人類の文明史の巨視的な把握の解説から始まり、歴史的時間の概念やらを通過して、新たな学問のあり方の萌芽を『資本論』に見とる著者のマルクス論は、一読しただけではつかみ切れたとは言い難い。とはいえ序章で整理されているマルクス解釈の三類型、その読み替えの学説史は明快で、ここだけでも読んだ意味があったという感じがする。それでいいのかって感じですが。
読了日:12月22日 著者:今村仁司
http://bookmeter.com/cmt/43677343
社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ (ちくま新書 1039)
- 作者: 重田園江
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/11/05
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■社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ (ちくま新書 1039)
「約束の思想」としての社会契約論を、ホッブズ、ヒューム、ルソー、そしてロールズという四人の思想家に焦点を当てて論じる。混沌の原初状態から約束という契機によって、その約束そのものに宿る力によって社会が作られる、というホッブズの議論のダイナミズム。そして、よりよい社会を目指すために一般性の場、視点を想定することの意味を説いたルソー、ロールズ。著者が本文中で弁解していたように、ルソーの一般意志などの議論は掴めていないと感じるが、社会契約論という思想のアクチュアリティは十二分に理解できたように思う。
読了日:12月23日 著者:重田園江
http://bookmeter.com/cmt/43705731
現代社会主義を考える―ロシア革命から21世紀へ (岩波新書)
- 作者: 溪内謙
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1988/01/20
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■現代社会主義を考える―ロシア革命から21世紀へ (岩波新書)
1920年代から30年代のソ連の政治体制の変容に着目することで、現実の社会主義が持っていた問題点を探り、よりよき社会主義の可能性を考える。レーニン主義からスターリン主義へ、と要約できるその変化は、国際主義から「ナショナリズム」へ、社会から一枚岩の「国家」へ、というようなものとして整理されている。その過程で、マルクスやレーニンの目指したものであり、そして十月革命の理想でもあった「人間の解放」という目的が置いてけぼりにされてしまった、というのが著者の認識。
ペレストロイカが進行しているまさにその時に書かれた本書は、そこに社会主義の理想の復興の可能性を感じとっているが、その後のソ連の帰趨を考えると社会主義にはそもそも「人間の解放」のための手段たり得なかったのかな、とも思ってしまう。ソ連の崩壊後の現在から眺めると、著者ほどの歴史学者ですら未来を見通すことできなかったという事実に打ちのめされる。溪内さん自身がその経験を『現代史を学ぶ』で綴っていたけれども。
読了日:12月24日 著者:渓内謙
http://bookmeter.com/cmt/43719463
■権力の館を歩く: 建築空間の政治学 (ちくま文庫)
戦後の歴代首相の館、別荘から官公庁、そして政治政党の本部など政治と密接に関連する建築に関するエッセイ。歴代首相の館を巡る文章は、その人のパーソナリティやら政治上のスタンスを建物や庭との連関から説得的に説明していて、さながら建築からみる戦後政治史という感じで大変面白く読んだ。建築そのものよりも、その建築に反映されている各人の人間性、もしくはその館が規定したであろうその人の在り方の相互連関に重点がおかれ、建築に関する知識がなくても十二分に楽しめた。
小学生並みの感想ですが、一読して感じたのは政治家ってのは一般人から想像もできないほどお金を持ってるんだなということ。庭にこだわり別荘を持ち、それを当たり前のごとく使いさばく。そこであるときは人を呼び集めあるときは重大な決定を下す。政治家とはこういう次元の力量が求められるのだなあと。
読了日:12月27日 著者:御厨貴
http://bookmeter.com/cmt/43778302
ルーマンを一つの終着点とした社会学史を提示する第一部と、そのルーマン理論を改良しその使い方を提示した第二部から成る。「常識をうまく手放す」ことと「社会が社会をつくる」という社会学的な思考法の特徴を補助線にして、6人の偉大な社会学者を通して社会学という学問の辿ってきたというひとつの「物語」は、大変読みごたえもあって面白かった。後半のルーマンを応用しての議論は、著者自身が「最前線」と述べるように結構込み入った話が展開され、正直あんまりついていけず。その発想みたいなものをなんとなく感得できたのでよいのかな。
読了日:12月28日 著者:佐藤俊樹
http://bookmeter.com/cmt/43806256
■日本の外交―明治維新から現代まで (中公新書 (113))
明治期から戦後の日米安保が問題となった60年代までの日本の外交を概観する。ほぼ一貫して「現実主義」的な方針をとった政府と、「理想主義」的な発想の強い民間の思想という対比が強調され、経済的、軍事的な観点から利益を追求してきた日本の外交が、1910年代ごろからのアメリカにおける「黄禍論」の隆盛とパラレルに生じた外交方針の転換や、中国におけるナショナリズムの盛り上がりとそれが欧米諸国にもたらした影響などによって、次第に孤立化の道を歩むことになった、というのがアウトラインだろうか。半世紀も前の本にも関わらず未だに面白く読めた。すごい。
読了日:12月29日 著者:入江昭
http://bookmeter.com/cmt/43838407
涼宮ハルヒの憂鬱 涼宮ハルヒシリーズ (角川スニーカー文庫)
- 作者: 谷川流
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/09/01
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宇宙人や未来人、超能力者との邂逅を目指す少女の巻き起こすドタバタ。
読み進めていくうちにどうしようもなく懐かしさを感じた。この物語をかつての僕はどう読んだんだろうかとか、何を思ったんだろうかなんてことをまず考えてしまって。読み直して考えたのは、このシリーズ全体が日常と非日常の境界がぼやけていくような、そんな少し不思議な学園生活を描くことを通して、日常それ自体が非日常である、みたいなことを訴えてるのかなということ。その意味で、涼宮ハルヒは「希望と生きる意味」を語る物語たり得ているのではなかろうか。それがあまりに楽天的だとしても。
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読了日:12月31日 著者:谷川流
http://bookmeter.com/cmt/43892266
2014年の読書のまとめ
2014年の読書メーター
読んだ本の数:252冊
読んだページ数:68063ページ
うへえ、ほんとにそんなに読んだのか...?というのが正直なところ。いくら読んでも血と肉になってなければあんまり意味もないと思うので、濫読気味、というか完全に濫読だったなというのを改めて思いました。
252冊の内訳は、
- 新書 119冊
- 文庫 70冊
- 単行本 60冊
です。え、数が合わない?それは僕が数え間違えたからです、はい。もう一度やり直す気力はないので数え直しません。だいたいの数ってことで、はい。よく考えたら1月ごとに数えておけばよかったなと思いました。2015年も継続的に本を読んでいけたらと思います。
来月のはこちら。