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守りたかった男、自由になりたかった男―アニメ『ガングレイヴ』感想

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 アニメ『ガングレイヴ』をPS3のアニマックスプラスで視聴しました。『ヨルムンガンド』のシリーズ構成をなさっていた黒田洋介さんつながりで見たいなーと思っていた矢先の無料配信だったので、渡りに船という感じでした。ゲーム版はだいぶ前にプレイしていたんですが内容は全然憶えておらず。しかしアニメ独自の色が濃いのはなんとなく感じました。以下で簡単に感想を。

 二人の男の人生

 アニメ版『ガングレイヴ』は、2人の男、ブランドン・ヒートとハリー・マクダウェルの人生の物語だ。より詳しく言うなら、同じ場所から出発した2人の人生が決定的に分岐し、しかし最終的には同じ場所に還ってくる物語である。

 貧しい地区で生まれたブランドンとハリーは、チンピラ仲間とともにそれなりに楽しい日々を送っていた。しかし、仲間に唐突な死が訪れたことで彼らの人生は大きな転機を迎える。

「自由になりてえなあ」

 その「自由」を手に入れるため、ハリーはマフィア組織・ミレニオンに加わる道を選び、ブランドンも同じ道を選ぶ。見掛け上は同じ道でも、この時点で2人の道は分かたれていた、といえるかもしれない。しかしそれは、主人公にしては異様ともいえる無口さをもつブランドン・ヒートによって、隠蔽される。

 組織の中で順調に出世街道を歩むブランドンとハリー。しかしハリーの野心が組織のボス・ビッグダディに刃を向けようとしたとき、2人は決定的に決別する。かくしてハリーは「家族」である自分を裏切ったブランドンを殺害し、「好きなだけ奪い、好きなだけ与える」ことのできる自由を目指し、一人歩を進めていくことになる。

 2人が決別し、ブランドンが死を迎える14話「DIE」の演出は本当に素晴らしかった。それ以前のエピソードですでに、ブランドンとハリーの対照的な道は描かれている。ブランドンは愛するマリアの幸せを願って身を引く一方で、ハリーは恋人シェリーと順調に仲を深めていく。組織の調和を願うビッグダディに共鳴するブランドンと、自身の野心のためなら「ファミリー」を陥れることもいとわないハリー。対照的な、しかし「家族」的な親愛の情で結ばれる二人。その二人の間にある深すぎるほどの絆と、しかしそれ以上に決定的な溝とを、これでもかというほどの緊張感の中で描いて見せるこのエピソードは、全体の中でもひときわ異様に輝いている。

 誤解を恐れず言えば、日進月歩するアニメのクオリティのなかで、現代からみるとアニメ版『ガングレイヴ』はそこまで素晴らしいクオリティのアニメとは言い難いと思う。ガンアクションなんかは『ヨルムンガンド』と比べると見劣りするし、暴力のもたらすゴア表現も、どうにもなまぬるい。

 しかしそれでも、アニメ版『ガングレイヴ』が名作として語られるのは、14話に代表されるブランドンとハリーのドラマが、強い輝きを放っているからにほかならないのではないかと思う。

 

男はただ守りたかった。男はただ自由になりたかった。

 そうして分かたれた二人の道。しかしブランドンは死者を蘇らせる技術ネクロライズによってビヨンド・ザ・グレイヴとして再び命を取り戻し、戦いに向かう。

 組織の頂点に立ち絶頂を極めたかに思えたハリーの人生は、ブランドンが蘇ったことで暗転する。ブランドンを葬ろうとした側近たちが次々破れていく中で、ハリーは組織の中での地位を危うくし、やがては部下たちに裏切られ最愛のシェリーすら失う。

 最終3話は、死によってすべてを奪われたブランドンと、「家族」の死によってすべてを失ったハリーとのドラマが展開される。自分を殺したハリーに復讐を遂げるかと思われたブランドンは、意外にもハリーを追う組織の追手と闘うことを選ぶ。なぜ自分を殺した男を守ろうとするのか。そのハリーの問いかけが、寡黙なブランドンをしてその行動のすべてを語らせる。

 ブランドンは、ただ、守りたかっただけだったのだ。徹頭徹尾、彼は何かを守るために行動していた。このラストの行動と応答で、そういうものとして、彼の人生が浮かび上がってくる。

 大事な仲間の死は、ブランドンとハリーの人生に決定的な、しかし別様のしるしを刻んだ。ブランドンは守りたいと祈り、ハリーは自由になりたいと叫んだ。その姿勢の違いが、彼らの関係に決定的な破局をもたらした。そのことに、最期にようやく二人は気付き、そして思い出に還っていった。仲間と過ごした思い出のなかだけが、二人がともに安らげる場所だった。

 

というわけで『ガングレイヴ』面白かったです。眠い頭で書いたのでまた書き足すかも書き足さないかも。

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