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目指すは楽園、駆けるは荒野―『マッドマックス 怒りのデス・ロード』感想

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」オリジナル・サウンドトラック

 

 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を3D吹き替え版でみました。もうね、最高としか言いようがないやつじゃないですか。最高でした。以下で感想を。ネタバレがあります。

 楽園を目指す者たち

 荒野を一人で旅する男、マックス・ロカタンスキー。なんかめっちゃやばい奴であるイモータン・ジョーの部下の数の暴力によりあっさり捕縛された彼は、「輸血袋」として裏切り者の女大隊長、フュリオサを追うイモータン・ジョーと愉快な野郎どもにとともに不毛の荒野、デスロードを疾走することになる。主人公なのにモノ扱いされ車のフロントに磔にされる姿が最高にロック。

 しかしマックスは主人公、いつまでも「輸血袋」をやってるわけにはいかない。命からがら脱出し、フュリオサと彼女とともに「緑の地」をめざす女たちになんやかんやで協力するような形になる。逃げる女(とマックス)、追う野郎ども、という極めてシンプルな構図。その逃走劇が『怒りのデス・ロード』のすべてである。アクションが最高だとか、そういうのはもう約束されているんで、特に僕から付け加えることはないです。すごい。

 逃げる女、追う男。まったく異なる立場にあるかのようにみえる両者だがしかし、行動原理の面では極めて酷似してもいる。それは、両者ともに「楽園」を目指しているということ。

 フュリオサたち逃げる女が目指す「楽園」は、東にあるという「緑の地」。では、追う男たち、ウォーボーイズたちは?彼らは一見、ただ単に暴君イモータン・ジョーのもとで破壊と殺戮を楽しんでいるようにも思える。しかし彼らもまた、「楽園」を目指すものたちなのだ。

 彼らの楽園は、もはや此岸にはない。永くは生きられないことを悟るウォー・ボーイズたちは、イモータン・ジョーを狂信的に崇拝し、死後の生まれ変わり、あるいは死後の楽園を強く夢想している。そのためならば死をもいとわない。これは女たちの志向とまったく正反対だ。

 女たちが目指す楽園、「緑の地」は、大航海時代におけるプレスター・ジョンの王国のような、存在するかもわからないような土地ではない。そこはかつてフュリオサが生まれ育った地として確かに実在する。その意味で、『怒りのデス・ロード』における対立は、男と女のそれというよりは彼岸に恋い焦がれるものと、あくまで此岸で生きようとするものの対立なのだ。

 この対立から唯一自由なのが、主人公マックス*1。男たちも女たちも、楽園を目指して必死に走る。だがマックスは楽園の存在など信じちゃいない。その志向は『マッドマックス2』で決定づけられたように思われるが、それはこの『怒りのデス・ロード』でも受け継がれ、強化されている。走らなければ生きてはいけない世界。だから女も男も楽園目指して走るわけだが、マックスはただ走るためだけに走る。走り続けるために今走る。この独特の位置が、マックスを主人公たらしめているのかもしれない。

 話はそれるが、『怒りのデス・ロード』を走り続ける者たちの物語だとするなら、イモータン・ジョーの敗北は運命づけられていたとさえいえる。不死身のジョー。不死身は、死なずに留まり続ける、停滞する生のありかた。留まるものは消え去るしかないこの世界に、その名はあまりに不釣合いだった。不死身のジョーは、死なないがゆえにすでに死んでいたのである。

今、そこにある楽園を

 楽園を目指す女たちが直面した事実。それは楽園、「緑の地」はすでに消え去り、存在しないものになっていたという残酷な結末だった。彼女らは、あるかもわからないさらに東の楽園を目指そうとするが、マックスに別の楽園の在処を示唆され、最後の戦いに赴く。

 ここでも、うえで述べたような、此岸へこだわる人間たちの姿が描かれる。あくまで存在する確証のあるものだけが、たとえどんなに危険でも、決然と選ばれる価値がある。

 この姿勢は、同じく逃走劇を描いた『マッドマックス2』と対照的だなあと。「太陽の楽園」を目指したやつらは、どうやらはるか遠くのそこに無事たどり着き、幸福を得たらしい。しかし『怒りのデス・ロード』において、女たちを救ってくれる楽園はもはやはるか遠くの外部にはない。だから危険な道を再びたどってでも、現実が選ばれる。ここで雑な時代の変遷を語るのは野暮だけども、それは奇しくも『攻殻機動隊』の新旧劇場版の対比と重なると思うわけです、はい。

 そんなことはいいとして、とにかく最高でした。最高。

 

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 サンダードームのみ未見なので近いうちにしちょうしたいです。

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【作品情報】

‣2015年/オーストラリア、アメリカ

‣監督:ジョージ・ミラー

‣脚本:ジョージ・ミラー、ブレンダン・マッカーシー、ニコ・ラサウリス

‣出演

*1:もしかしたらイモータン・ジョーも

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