『X-MEN: アポカリプス』を2D字幕版でみました。以下感想。
1973年、ベトナム戦争終結のためにパリ協定が締結されようとしていたそのとき、人ならざる力を持つ異能の人――ミュータントの存在を世界は知ることとなった。それから約10年後、1980年代の世界は異能の人類を受け入れていかざるをえない、そのような状況にあったが、普通の人々は異能の人々を完全には受け入れてはいなかった。10年前の事件の記憶は、人々の記憶に焼き付いていたのだから。そんななか、プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアは、よりよき世界を築くため、「恵まれし子らの学園」でミュータントの子供たちを保護・教育していた。一方、かつて事件を引き起こした首謀者であるエリック・レーンシャー=マグニートーは指名手配を逃れるため偽名を使ってポーランドに潜伏し、能力を隠し妻子とともにひっそりと、穏やかな暮らしを送っていた。そんな見かけの上では穏やかな日々は、エジプトでよみがえった古代のミュータントによって破られる。その名はエン・サバー・ヌール=アポカリプス。強力なミュータントを従え世界を造り替えようと目論む最強の敵に、ミュータントたちはどのように対峙するのか。
アメコミを原作にしたシリーズものの映画って、MCUの作品群もそうですが、基本的にはキャラ萌え映画だと僕は思っています。キャラ萌え映画とは具体的にはどんなもんかというと、個性的なキャラクターとそれらに命を吹き込む俳優の演技を、過去の作品を参照しつつその連続性のうえに新作を楽しむ、という構えでみる作品ってな感じで、そういう感じで僕は『X-MEN』シリーズをみています。それでこの『X-MEN: アポカリプス』なんですが、今までのシリーズのなかでもそのキャラ萌え映画の色が極めて強くないか?と感じたわけです。スピンオフ作品を除けば6作目にあたる本作ですが、観客が既存の作品をみていること前提につくられているなーという感覚がもっとも強かった。『ファースト・ジェネレーション』と『フューチャー&パスト』をみて、若きプロフェッサーXとマグニートーの物語が記憶にないと物語に入り込むのは相当厳しいんじゃないか。
僕は前2作をみてたのでそういうところで楽しめなかったりということはなかったんですが、なんというかシリーズの流れ的にめっちゃ向かい風なのではないかというところがあってですね。それは今回の敵役、最古にして最強のミュータント、アポカリプスについてなんですが、前作『フューチャー&パスト』でもまた、ミュータントではないにせよ最強の敵がX-MENの前に立ちはだかっていたわけです。『フューチャー&パスト』でX-MENと死闘を繰り広げたミュータント絶対殺すマシーンことセンチネルは、間違いなく実写映画シリーズのなかでも最強の敵で、しかも時間移動という物語上のギミックによって、その最強の力をいかんなく発揮することができた。つまり、タイムトラベルによる世界改変によって出来事が「なかったこと」になるがゆえに、センチネルはX-MENを殺すことができるという、強さを表すのにこれ以上ないだろう最大級の特権を享受したわけで、その最強の敵あればこその『フューチャー&パスト』の緊張感だった。
しかしアポカリプスさんはこの点で気の毒なことにハンデを背負っているわけで、時間改変なんておきない以上、最強のミュータントであるにもかかわらず、物語上の制約によって(おそらく)主要人物を殺害することはできない。そんなあまっちょろい予見をぶっちぎって主要人物がアポカリプスの手にかかる、みたいな展開があれば一気に緊張感は高まったんだろうという気はするんですがそういうこともなく。
とはいえこのハンデを背負ってなおアポカリプスさんは結構がんばったんじゃないかという気がして(このハンデを背負わせたのは僕の期待なので勝手すぎる言いぐさですが)、クライマックス、宿命のライバル同士が現実世界と精神世界とで共闘する、という展開は非常に熱いし、最強の敵vs.味方全員、という構図が僕はやっぱり好きで、こういうのってやっぱり全員束になっても拮抗できる強力さがアポカリプスさんにあればこそという気がして、アポカリプスさんようやってくれたなと。
それと古代エジプトでミュータントがカジュアルに次々斃れていくアバンが僕は結構好きで、こういう感じのカジュアルな殺戮がもっとあったらいいと思いました(やめとけ)。
ファイナル・ディシジョンをdisられて僕は悲しみに包まれたし、東独育ちのナイトクロウラーくんをいきなりシリーズものの三作目をみにつれていくスコットくんは非常にどうかとおもいました。
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「最強の敵」をめぐるあれこれにかんしていえば、『シビル・ウォー』も『バットマン vs スーパーマン』もうまい具合に処理してたんじゃないかなーなんて改めて思ったりしました。
【作品情報】
‣2016年/アメリカ
‣監督:ブライアン・シンガー
‣脚本:サイモン・キンバーグ
‣出演
- チャールズ・エグゼビア / プロフェッサーX - ジェームズ・マカヴォイ(内田夕夜)
- エリック・レーンシャー / マグニートー - マイケル・ファスベンダー(三木眞一郎)
- レイヴン・ダークホルム / ミスティーク - ジェニファー・ローレンス(牛田裕子)
- エン・サバー・ヌール/ アポカリプス - オスカー・アイザック(松平健)
- ハンク・マッコイ / ビースト - ニコラス・ホルト(浅沼晋太郎)
- モイラ・マクタガート - ローズ・バーン(桑島法子)
- スコット・サマーズ/サイクロップス - タイ・シェリダン(木村良平)
- ジーン・グレイ/フェニックス - ソフィー・ターナー(能登麻美子)
- サイロック - オリヴィア・マン(東條加那子)
- アレックス・サマーズ / ハボック - ルーカス・ティル(鶴岡聡)
- ピーター・マキシモフ / クイックシルバー - エヴァン・ピーターズ(吉野裕行)
- カート・ワグナー/ナイトクローラー - コディ・スミット=マクフィー(内山昴輝)
- オロロ・マンロー / ストーム - アレクサンドラ・シップ(志田有彩)
- ウィリアム・ストライカー- ジョシュ・ヘルマン(高橋広樹)
- エンジェル - ベン・ハーディ(濱野大輝)
- ジュビレーション・リー/ジュビリー - ラナ・コンドル(下山田綾華)