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2016年の崩れ落ちた兵士――『SCOOP!』感想

『SCOOP!』オリジナル・サウンドトラック

 

 『SCOOP!』をみたので感想。

  東京。夜の街。路上に停めた車のなかで男は待つ。ひたすら待つ。獲物が現れるのを。その獲物をカメラで捉えることが、男の生業だった。時に中年パパラッチと揶揄されながらも、その男、都城静は一人で獲物を追ってきた。しかし古馴染みの雑誌編集者から、新人記者と組んで専属カメラマンとして働くよう依頼される。報酬につられその役目を引き受けた静は、おおよそ写真週刊誌に似つかわしくない新人女性記者、行川野火とともに、『週刊スクープ』に特ダネをあげるために夜の街を徘徊する。

 粗野、野蛮、下品、そのようなネガティブな言葉が人間のかたちをとったような中年パパラッチが、右も左もわからない新人記者を振り回していくことで物語がドライブしていく『SCOOP!』は、中年パパラッチと新人記者とが一緒に戦うことで、少しずつ変化していく、そういうドラマが基底にある。

 突如現場にあらわれた新人にチャンスを潰され激怒して編集部に怒鳴り込む冒頭の場面、中年パパラッチ静はとても好感がもてそうにはない人物であることが印象付けられる。その後もセクハラパワハラのオンパレードで、ここらへんの不快感はたたずまいがデフォルトでさわやかな福山雅治が演じていなければ到底見ていられないんじゃないかと思う。しかし共に仕事をこなすうちにだんだんと野火への態度も軟化し、こいつ、ひどいやつだけど本当には悪い奴じゃないんじゃないか、と思えてくるのが上手い。一方で、野火も次第に「最悪」と愚痴っていた仕事と静への印象が次第に変化してゆく。

 大根仁監督の前作『映画 バクマン』は、『週刊少年ジャンプ』という雑誌のなかであるいは雑誌を通して、二人の人間が一緒に戦う物語だったけれど、この『SCOOP!』もそういう趣があって、漫画雑誌から写真週刊誌へと戦場を移し、そしてコンビの片割れに女性を配したり趣向を変えて、再び紙の上での戦いを描いている、という感じがする。

 『バクマン』との共通点はその道具立てにとどまらず、主人公の一人である静の行動原理は、『バクマン』の主人公二人とその周辺の人物と驚くほどオーバーラップしている。『バクマン』は、漫画を描く漫画家たちこそが、誰よりもその漫画の世界、端的に言えば友情・努力・勝利によって構成される世界を内面化していて、だから少年漫画の物語こそが彼らを突き動かしていた。

 一方で静がなぜカメラマンであることにこだわるのかいえば、ロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」を目にしたことが、その原点にあるのだと野火に告げる。後半で唐突に語られる、静自身もベタだと自嘲するこのエピソーによって、彼は『バクマン』の男たちが接続される。漫画家たちが漫画という夢を生きようとしてのと同じく、静もまたその夢を成就させるべく、最後の仕事へと向かう。しかし彼が生きようとしたのは、ロバート・キャパの物語ではなく、「崩れ落ちる兵士」の物語で、だからロバート・キャパの物語は静から野火へと託される。

 そうして、静の物語が終わり、野火の物語が始まったことを告げ、映画は幕を閉じる。冒頭、静を捉えたカメラが徐々にズームアウトして彼を離れ夜の東京を映していった。その動きがラストで反復され、野火という一人の人間が東京の夜景にうごめく有象無象のなかへと消えてゆく。忘れえぬ記憶があっという間に風化していくこの街で、それでも何かを捉えるために。

 

 というわけで、『SCOOP!』大変よかったです。

 

関連

 僕は映画『バクマン』が無限に好きなんですが、ドラマ版『モテキ』と『バクマン』って徹頭徹尾「男のドラマ」として結末を迎えた(と僕は勝手に思っている)のに対して、『SCOOP!』はずいぶん印象違うよなーと。


冒頭のシーンが結末で反復されて円環を描くような構造になっているやつが僕は非常に好きで、その感じだと『PSYCHO-PASS サイコパス』1期なんかもひじょーによかったよなーと思い出したりしました。


 

 

週刊SCOOP!2016年10月30日号 (SPA!(スパ)臨時増刊)

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キャパの十字架 (文春文庫)

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  しずかとのびってこういうことなんですかね。

ドラえもん (1) (てんとう虫コミックス)

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【作品情報】

‣2016年/日本

‣監督:大根仁

‣脚本:大根仁

‣原作:『盗写 1/250秒』(原田眞人監督)

‣出演

 

 

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