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世紀末の神話再び――『マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディション』感想

映画パンフレット★『マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディション』/ジョージ・ミラー監督、トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン

  『マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディション』をみました。ジョージ・ミラー監督がこれが最高のバージョンと豪語する予告編には正直話盛りすぎではとか思ってたんですが、いや確かにこれはこれでという感じで、元がぶっちぎりで最高の映画なので今回もぶっちぎりで最高でした。以下感想。

  映画本編については以下の記事で思うところは書いたかなあと思うので、以下では白黒版で感じたあれこれに絞って感想を書いておこうと思います。

 まず全体の印象としては、意外なほど違和感がなくてそれが非常に驚きでした。スクリーンで白黒の映画をみた経験ってほとんどないんですが(多分最後にみたのは『ローマの休日』な気がする)、少なくとも古臭さとかそういう感じはまったくしなかった。 たぶん僕は、白と黒とのあいだにも無限ともいえるグラデーションがあるというあたりまえのことを本当には理解してなかったのだなと思います。白黒になったからといって、黒くつぶれたりして全体の情報量が縮減されている感じはほとんどしなかった。もっとも、これは大きなスクリーンの恩恵を受けているからという気がして、自宅のテレビでみたら全然違った印象を受けるのかもしれませんが。


ブルーレイ『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』トレーラー 2月8日リリース

 ジョージ・ミラー監督は予告のなかで、よくなったことろもそうでないところもある、と率直に述べていたけれど、これはほんとうにその通りという感じ。予告でも使われていた、フュリオサが砂漠で慟哭する場面は目を見張る美しさだったし、ウォーボーイズの白い肌の不気味さはより引き立つ感じがした。一方で、砂嵐に襲われたあと、イモータン・ジョーの妻たちがはじめて大きく映し出される場面なんかは、はっきりカラー版のほうが鮮烈な印象を残していたように思う。

 それと白黒版で感じたのは、マックスのまえにたびたびフラッシュバックする、かつて救えなかったものたちの記憶が、より現実感を付与されているのではないか、ということ。マックスやフュリオサたち、現実に生きる者たちと、マックスの記憶の亡霊のレイヤーが接近している感じがするというか。それは記憶の亡霊のレイヤーがマックスに近づいたというよりは、マックスたちの現実が(色彩を奪われたことによって)亡霊のレイヤーに接近したからではないかと思う。

 その意味で、この白黒版で語られる物語は、より彼岸というか、「向こう側」の世界の物語という趣を強くしているという気がして、それによってカラー版がまとっていた神話的な雰囲気は強化されていると感じた。

 まあそんなことはどうでもよくて、やはり爆音と大スクリーンこそこの映画にはふさわしいというのを再認識しまして、みなさんにおかれましても劇場に足を運んでください。

 

 

 

 

 

 

【作品情報】

‣2015年/オーストラリア、アメリカ

‣監督:ジョージ・ミラー

‣脚本:ジョージ・ミラー、ブレンダンマッカーシー、ニコ・ラサウリス

‣出演