『キングコング: 髑髏島の巨神』を2D字幕版でみました。いうことなしの最強で最高。以下感想。
1944年。南太平洋。そこは戦場だった。鉄の翼が空を裂き、互いに鉛玉を打ち合う。そんななか、米軍機と日本軍機が相打ちを演じ、それぞれのパイロットは同じ島へと不時着する。おそらく彼らは知らなかった。そこが未知の島であることを。だから殺し合いを続けた。そしてそのさなか、彼らは知る。そこに人類を遥かに凌ぐ巨大な神が住まうことを。
1973年。アメリカ。ベトナムからアメリカ軍が撤退しようとするまさにそのころ。南太平洋の未知の島を探査せんと目論む学者たちが、調査団を派遣すべくうごめく。彼らはベトナム帰りのヤンキーどもと元SASの傭兵、ジャーナリストを連れ、嵐に囲まれた未踏の島へと足を踏み入れる。ヘリコプターで爆音を鳴らして意気揚々と乗り込んだ彼らは、探査のため地上に爆弾を投げ込む。あまりに騒々しい侵入者を神が許すはずはなかった。巨大な神、そして島に住まう恐ろしき怪物たちが、人間に容赦なく襲い掛かる。
ギャレス・エドワーズ版『ゴジラ』と世界観を共有するこの『キングコング: 髑髏島の巨神』は、『ゴジラ』がそうだったように偽りの歴史を舞台に怪獣のサーガを紡いでいこうとする筋立てになっていて、第二次世界大戦期から現代に飛んだ『ゴジラ』と対照的に、『キングコング』はおおよそその中間、ベトナム戦争直後を時代背景に設定している。この時代設定がまず卓抜で、まだ地球上に未知の地域が(いまよりは)残っていて、なおかつベトナム戦争の経験が否応なしに登場人物に影を落とし、それによって違和感なく一見合理性を欠く行動を登場人物に根拠を与えている。
とはいえ、全体を通して登場人物たちは非合理的な行動をとったら即死の超絶難易度のゲームに投げ込まれてる感あるので、非合理な行動など起こす余地はほとんどなくて、それが見ていて余計なストレスを感じさせないあたりも大変うまい。安心して巨大なバケモノに対抗したり殺戮されたりする人たちを眺めて大喜びすることに集中できる楽しい映画になっているわけです。
もちろんその化物の筆頭は我らが最強のゴリラことキングコングさんなんですが、ゴリラにはじまりゴリラに終わる構成で見事にゴリラの魅力が引き出されているように思います。まず夕陽をバックに米軍機と対峙するところからもう本物のオーラが漂ってるわけですけど、ヤンキーの駆るヘリコプター相手に無双するゴリラの絶望感と爽快感は最高。ゴリラ、馬鹿でかいうえにかなりアグレッシブに飛び回るのでもう勝ち目はないわけです。柘植行人はレイバー対策に戦闘ヘリを持ち出しましたが、特車2課にゴリラが配備されてたら柘植涙目ですよ。絶望的なんだけどあまりにゴリラが強くてついつい笑みがこぼれてしまう感じの絶望感の按配が素晴らしいわけですよ。
そして怪獣絶対殺すマンになってしまった軍人サミュエル・L・ジャクソン先輩チームと、マスターキートン的に最強キャラの風格ただよう傭兵トム・ヒドルストンさんチームに分かれて、それぞれ髑髏島でやってくわけですけど、このチーム分けのおかげで煩わしいドラマもなく、人間が次々殺戮されていくところに集中できるのでよかったですね。だってサミュエル・L・ジャクソン先輩が現地人と遭遇してたら絶対めんどくさい展開になってたじゃないですか、その意味でこの2ウェイはベストなチョイスだったと思います。ここらへんで出てくるゴリラ以外のクリーチャーも、特に竹林に紛れて襲ってくる蜘蛛と蟹のあいのこみたいなやつとか、たぶんこれがゴリラの映画でなかったら主役はってもやってける奴らだと思ったんですが、今回は脇に徹して粛々と無駄な人間を殺戮するマシーンをやってくれていて、いい仕事をしていたなと思いますね。
そして最後はまたゴリラの活躍で映画は終わるわけですが、最初人間絶対殺すマシーンだったゴリラが、最終決戦では役割を反転し、人間絶対殺すトカゲことスカルクローラーくん殺害マシーンになって、なんかいいやつポジションに収まってくれたことで、人類にも光明が見えてきたというか、人間良かったねとなるわけですが、なんといってもこのラストの怪獣プロレスをちゃんと昼間にやってくれたところで2億点加算です。ゴジラとかパシリムのKAIJUとか、正直無念もあったと思うんですよ、せっかくの戦いをね、暗いところでやんなきゃいけないっていう。いやしかし今回ゴリラがその仇を取ってくれたというわけでね、無念も晴れたんじゃないんですかね、うん。というわけで最高の映画なのでみなさんみましょう。
Welcome to ようこそ 髑髏島
きょうもドッタンバッタン大騒ぎ
【作品情報】
‣2017年/アメリカ
‣監督: ジョーダン・ヴォート=ロバーツ
‣脚本: ダン・ギルロイ、マックス・ボレンスタイン、デレク・コノリー
‣出演
- ジェームズ・コンラッド - トム・ヒドルストン(GACKT)
- プレストン・パッカード - サミュエル・L・ジャクソン(手塚秀彰)
- ウィリアム・"ビル"・ランダ - ジョン・グッドマン(石住昭彦)
- メイソン・ウィーバー - ブリー・ラーソン(佐々木希)
- サン・リン - ジン・ティエン(伊藤静)
- ジャック・チャップマン - トビー・ケベル(小松史法)
- ヴィクター・ニエベス - ジョン・オーティス(後藤敦)
- ヒューストン・ブルックス - コーリー・ホーキンズ(杉村憲司)
- グレン・ミルズ - ジェイソン・ミッチェル(英語版)(河本邦弘)
- アール・コール - シェー・ウィガム(綱島郷太郎)
- レグ・スリフコ - トーマス・マン(山崎健太郎)
- コング(モーションキャプチャ演技) - テリー・ノタリー
- ハンク・マーロウ - ジョン・C・ライリー(石田圭祐)
- レルス - ユージン・コルデロ(真壁刀義)
- スティーブ・ウッドワード - マーク・エヴァン・ジャクソン(伊藤和晃)
- ウィリス上院議員 - リチャード・ジェンキンス(仲野裕)
- グンペイ・イカリ - MIYAVI