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老いとヒロイズム――『アウトレイジ 最終章』感想

映画「アウトレイジ 最終章」オリジナル・サウンドトラック

 『アウトレイジ 最終章』みたので感想。

  抗争の矢面に立たされた、刑事を殺害して韓国へと逃れた大友。日本のやくざの血みどろの抗争劇から遠く離れ、済州島で余生を過ごしているようにも思えたが、そうやすやすと血と暴力の宿命が彼を逃がしてくれようはずはなかった。やくざが済州島で起こしたもめごとをきっかけにして、大友は再び、日本の地を踏む。

 『アウトレイジ 最終章』で語られるのは、大友最後の戦い。前作で積み残したものを清算し、彼岸へと旅立つまでの物語。前作・前々作と比べると暴力的なシーンはそれほど多くはなく、また登場人物たちの加齢、とりわけ大友のそれは、映画全体に静かな終わりと倦怠の雰囲気を与えているように思える。やくざたちは咆哮するが、それでもなお、今までよりもその弱さを印象付けるような場面が多かったように思う。

 とはいえ、暴力の後退によって退屈になったかといえばそんなことはまったくなくて、当人たちにとってはシリアス極まりない状況にもかかわらず、スクリーンを眺めているこちらはどうにも可笑しくなってくる奇妙な笑いを喚起する場面の味わい深さは、このシリーズ通しての魅力だなと再確認する。200万払えば解決できたはずが、3000万、1億、2億と積まなければならなくなっていく、倍々ゲームでピエール瀧が地獄を見る序盤の展開ははっきりいってコメディなんだけれど、コメディ的な調子は全然なくてそれが逆にコメディっぽさを強化しているような感じ。

 また、大友=ビートたけしとコンビを組む大森南朋は、これまで大友と組んできた椎名桔平中野英雄とは違った魅力があって、なんというか前作前々作の相棒と比べるとどことなく頼りなげな雰囲気があって、老いた大友とぴったりマッチしていたような感じがする。大友の最後の旅の付き添い役として。

 というわけで2時間楽しかったんですが、前作からずっと都合のいい鉄砲玉として使われてきた大友が、その呪縛から逃れられないまでも、少なくとも仲間の借りを清算して彼岸に旅立つ、という筋立ては結構ヒロイックというか、『アウトレイジ』で葬ったやくざ像みたいなものを再び(『ビヨンド』もそういうお話だったような気がするのだが)蘇らせてしまっているような気がして、どうにも違和感があったりするのですよね。そのヒロイズムも、映画全編を覆う老いの雰囲気が希釈してる感じはするのだけれども。

 

 

 

 

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【作品情報】

‣2017年/日本

‣監督:北野武

‣脚本:北野武

‣出演