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映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

『検察側の罪人』感想

検察側の罪人 文庫  (上)(下)セット

 『検察側の罪人』をみたんですけど、存外おもしろくて、ごめんなさいという気持ち。いや、ツッコミどころはあるんですけど、楽しい時間を過ごせたので。以下感想。

  真実は何処にある?それは誰かに創られる。

 木村拓哉演じる検事が、かつて迷宮入りになった事件の真犯人と目される男が現れたことをきっかけに、一線を越え「真実」を創作していくさまを描く。木村拓哉二宮和也のダブル主演のような印象を予告の段階ではもったのだけど、これはあからさまに木村拓哉の映画であり、二宮にはいささか気の毒であったように思う。

 真実の「おはなし」を創り出す権力という主題は、是枝裕和『三度目の殺人』・『万引き家族』の記憶がいまだ鮮明だが、『検察側の罪人』は真実を作り出す側の葛藤と苦悩に焦点をあてている。我々はつねに創り出された真実の前に翻弄されることしかできないのだから、創り出す側の苦悩なんて他人事にすぎないのだが、その他人事をそれでもおもしろくみせるのは、この映画の力だし、なにより木村拓哉の力だろうと思う。

 あまりに猥雑に「意味」や「出来事」に満たされた時間が多すぎて(現政権への露骨な批判とも読み取れるようなサブプロットはあまり効いていない気もする)、映画的な快楽というのはむしろある種の退屈さのうえに成り立つとするならば、そうしたまさに映画的な快からは縁遠い映画ではある気がする。とはいえ、木村拓哉を、かつての盟友(ここに国民的アイドルグループの影を感じないわけにはいくまい)の遺志を継ごうとする男として提示し、それが現実と奇妙に共振するさまは、フィクションとおもしろさのひとつであるなあと思いました。