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霜月さんはかしこくておろか――『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1『罪と罰』』感想

【チラシ付き 映画パンフレット】PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1「罪と罰」

 『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1『罪と罰』』をみました。それにしても、もう劇場版から4年も経ってるんすね。以下感想。

 青森の潜在犯隔離矯正施設。脱走した女。犯罪の影。

 機械によって測定される犯罪係数によって人間が管理される未来世界を舞台に、刑事たちの活躍を描く『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズ最新作。このエピソードは、時系列的には劇場版の後が舞台。

 はっきりいってこの挿話でキャラクターの信念が劇的に揺さぶられるとか、作品世界の知られざる事実が白日のものとなるとか、人間関係に大きな変化があるとか、そういうことはまったくなく、このシリーズであからさまにありえそうな事件がまあまあの紆余曲折を経て解決されるというだけのことであり、邪推するならコンテンツの適切な延命のための投資ということになるのだろうけど、ちょっとこの公開形態はどうかと思いますわよ。

 『PSYCHO-PASS』のテレビシリーズの欠点のひとつに、せっかく不気味な未来世界を舞台にしているのに、その未来世界のディティールを感じさせる挿話や描写に乏しい点があるように思う。たとえば、テレビシリーズ1期最終盤に槙島が目論む食料テロなんかは、もっとあの世界の人間が何をどのように食べているのかを描写してさえいれば、もっと説得性があった気がするし、常守たち以外の公安局員は仕事してんのか?みたいなことが頭をよぎったりとか、そういう世界の狭さは、作品の魅力を世界のそれではなくキャラクターのそれに大きく偏らせる結果になったのではという気がする。

 だから、たとえばこういう挿話がテレビシリーズにあったりすると、作品世界により厚みがでたなあとは思うのだけど、まあ宜野座さんがトム・クルーズばりにアクションしたりしていて元気でよかったので、よかったかなと思います。霜月さんは愚かでもいい(というか愚かさという役割を与えられている)んだけど馬鹿にみえるようにはしゃべらせないでほしい(馬鹿っぽい愚かさと賢いのに愚かでは、まったく愚かさの質が違うわけですから)...とは思いますけど。この「賢い愚かさ」こそある種の救いがたい悪なのではと思っていて、この最強の悪が正義面して主人公チームにいることは、今後めちゃくちゃ意義が出てくると思う。絶対。