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再び円環のなかに――『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3『恩讐の彼方に』』感想

【映画パンフレット】PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3「恩讐の彼方に__」

 『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3『恩讐の彼方に』』をみました。以下感想。

  コウガミ・シンヤは未だ日本の外にいた。両親の仇への復讐を目論む少女に請われ、ヒマラヤの紛争地帯で教師の真似事をする男。しかし平穏な日々はいつまでも続かない。

 『PSYCHO-PASS』シリーズの最新作である劇場版三部作のラストを飾るのは、『劇場版』のあとも傭兵稼業でアジアを転々としている狡嚙を主役に据える、時系列的にも最新の挿話。既存のキャラクターが狡嚙しか登場しない、かつシビュラシステムの管轄外という舞台を設定したがゆえに、作劇の自由度は劇場版三作のなかでもダントツであったのだろうなと推察され、またテレビシリーズの一挿話程度の具合だった一作目とはテンションも段違いで、『劇場版』に比するほどの気合を感じました。

 どうやらこの作品世界のなかでは、シビュラシステムの外であろうが、ある種のオートマチックなシステムに人間はからめとられてゆく、そうした格率があるらしいと思わせる。この挿話では、自ら紛争の火種をまいたのち消火する、マッチポンプによって利益を得て生存を図ろうとする男が登場するわけだが、こうした自己完結した円環構造はたとえば新任の監視官が登場して幕を開け、そして再び新任の監視官が登場して幕を下ろすテレビシリーズからもうかがえる。そして狡嚙にとりついた悪霊は、復讐のらせんという形で異国の少女にも乗り移ろうとするのだが、しかしここで偶然にも復讐の機会は奪われ、狡嚙と少女の道は綺麗に分かたれる。

 少女の道こそ、もしかしたら狡嚙が真に歩むべき道だった――殺害ではない仕方で、狡嚙でない誰かが決着をつけるべきだった――のかもと空想を膨らませることもできるのだが、しかしまたシビュラシステムの円環のなかに舞い戻る狡嚙と、彼らの旧友たちが対峙したとき、そこには『劇場版』のようなあまっちょろい同窓会以上の出来事が起こらなければならないと、3期を前に強く思います。