宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

カミュ『ペスト』

ペスト (新潮文庫)

『ペスト』めっちゃ売れてるらしくてウケる。まあわたくしはたぶん5年くらい積読状態だったんだが。

「天災というものは人間の尺度とは一致しない、したがって天災は非現実的なもの、やがて過ぎ去る悪夢だと考えられる。ところが、天災は必ずしも過ぎ去らないし、悪夢から悪夢へ、人間のほうが過ぎ去って行くことになり、それも人間中心主義者たちがまず第一にということになるのは、彼ら自身で用心というものをしなかったからである。」p.56

 

「世間に存在する悪は、ほとんど常に無知に由来するものであり、善き意志も、豊かな知識がなければ、悪意と同じくらい多くの被害を与えることがありうる。」p.193

 

「殺人者の魂は盲目なのであり、ありうるかぎりの明識なくしては、真の善良さも美しい愛も存在しない。」p.193

 

「みずからペストの日々を生きた人々の思い出のなかでは、そのすさまじい日々は、炎々と燃え盛る残忍な猛火のようなものとしてではなく、むしろその通り過ぎる道のすべてのものを踏みつぶして行く、はてしない足踏みのようなものとして描かれるのである。」p.265

 

「しかし、自分一人が幸福になるということは、恥ずべきことかもしれないんです」p.307

 

 「そして、結局最後のところで気がつくことは、何びとも、最悪の不幸のなかにおいてでさえ、真実に誰かのことを考えることなどはできないということである。」p.356

 このアフォリズム的な強度!