宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2020年5月に読んだ本と近況

 緊急事態のおわり。

先月の。

2020年4月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

 印象に残った本

  佐藤卓己『キングの時代』、文庫版解題にあるように佐藤氏にとってキャリアのターニングポイントとなった著作なんだろうなと強く感じました。

読んだ本のまとめ

2020年5月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3424ページ
ナイス数:172ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly

 

 ■世界哲学史1 (ちくま新書)
 極めてチャレンジングなシリーズだと思う。一方で、素人読者にとっては難解とも感じる。その難解さは、書き手の書きぶりによるものではない。叙述は丁寧で前提をきちんと共有してもらおうという姿勢が感じられる。ただ、こうして提示された哲学をどのように各々使うか?となると非常に難しい気がする。それぞれの興味に従い、付された読書案内を頼りに読んでいくための入門編のアンソロジーとして使うのがよいのか。そもそも「使う」という発想がよろしくない気もするけれど。
読了日:05月12日 著者:
https://bookmeter.com/books/14960531

 

 ■昭和史講義: 最新研究で見る戦争への道 (ちくま新書 1136)
 主に敗戦・占領までの昭和の政治史・外交史について、最新の研究成果を踏まえて叙述する。15講の独立性は高く、それぞれブックガイドも付されていて、通史として通読するもよし適宜レファレンスするもよし。ある種の通俗的な誤解をときたい、という編者の問題意識はそれぞれの書き手に共有されていると感じる。とはいえ、政治史・外交史への偏重ぶりは、昭和史論争も遠くになりにけり、とはちょっと思う。
読了日:05月13日 著者:
https://bookmeter.com/books/9762912

 

終わらない「失われた20年」 (筑摩選書)

終わらない「失われた20年」 (筑摩選書)

  • 作者:北田 暁大
  • 発売日: 2018/06/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 ■終わらない「失われた20年」 (筑摩選書)
 2015年前後に書かれた時評的文章、対談などを所収。経済成長を軽視する左派への苛立ちが全編を覆う。しかし、政治をめぐる状況は本書出版から2年の時を経て、ますます悪くなっている気がする。その悪くなっている感じがこの数ヶ月でぐわっと露出したとも。
読了日:05月17日 著者:北田 暁大
https://bookmeter.com/books/12842056

 

巨流アマゾンを遡れ (集英社文庫)

巨流アマゾンを遡れ (集英社文庫)

  • 作者:高野 秀行
  • 発売日: 2003/03/20
  • メディア: 文庫
 

 ■巨流アマゾンを遡れ (集英社文庫)
 表題どおり、アマゾン川を遡り源流まで至る旅行記。こういう状況なので旅行記という形式にやや心救われる感あり。ハンモックにゆられる船旅からピラルク釣り、コカの葉を食みながら高山病。しかしこれが「地球の歩き方」の一冊として企画された本とは。
読了日:05月18日 著者:高野 秀行
https://bookmeter.com/books/528356

 

 ■『キング』の時代―国民大衆雑誌の公共性
 戦前から戦後にかけて「雑誌の黄金時代」を築いた講談社の雑誌『キング』を、「トーキー的・ラジオ的雑誌」と見立て、メディア史の文脈からその機能を問う。雑誌がそもそも読者を細分化するものだったのに対し、『キング』は対象を「国民」に統合してゆく志向を持ち、それが戦前・戦後の「総力戦と現代化」の時代と共振したが故のヘゲモニーであったとする見立ては非常におもしろいと感じた。あとがきにあるように著者の仕事のターニングポイントとなった著作でもあり、膨大な史料の引用によって、たしかに「時代」を析出し得ていると感じる。
読了日:05月20日 著者:佐藤 卓己
https://bookmeter.com/books/6744

 

日本の百年〈2〉わき立つ民論 (ちくま学芸文庫)
 

 ■日本の百年〈2〉わき立つ民論 (ちくま学芸文庫)
 シリーズ第2巻の本書が扱うのは、西南戦争から大日本帝国憲法発布まで。本シリーズの美点は、散漫さを恐れることなくさまざまな声を拾い上げ、対象とする時期のディテールを伝えていることである。自由民権運動に象徴される政治の季節にあって、北海道開拓の苦難やデフレで苦しむ農村、コレラ流行から熱海温泉繁盛記などなど、ある種の資料集として非常に面白く読みました。
読了日:05月21日 著者:松本 三之介
https://bookmeter.com/books/704097

 

緋色の研究 (新潮文庫)

緋色の研究 (新潮文庫)

 

 ■緋色の研究 (新潮文庫)
 シャーロック・ホームズ登場!推理のロジックはかなり甘い気がするが、ともかくキャラクターの魅力は色褪せない。再読している気付いたのだけど、ロンドンを中心としたイギリス帝国主義のまなざしで編成される世界にとって、新大陸はなまなましく奇怪な場所だったのだなと。そうしたまなざしとホラー小説的な趣味との共犯関係。
読了日:05月22日 著者:コナン ドイル
https://bookmeter.com/books/561985

 

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

 

 ■独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)
 とにかく規模の途方も無い大きさに圧倒される。どれだけ広い空間のなかで、どれだけたくさんの人間が動員されあるいは巻き込まれたのかと。ドイツ、ソ連、そして冷戦という文脈のなかでイデオロギーに左右され解釈されてきた戦史が、現代では史料に則って再解釈されつつある、という潮流を具体的な事例に即して適宜示しているのは非常に啓蒙的だと感じます。
読了日:05月22日 著者:大木 毅
https://bookmeter.com/books/14033894

 

バスカヴィル家の犬 (新潮文庫)

バスカヴィル家の犬 (新潮文庫)

 

 ■バスカヴィル家の犬 (新潮文庫)
 鄙びた湿地帯のロケーションが抜群にいい。この長編でも大英帝国の外縁部としてのアメリカ大陸の影がほの見える。
読了日:05月27日 著者:コナン・ドイル
https://bookmeter.com/books/531387

 

シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)

シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)

 

 ■シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)
 「ボヘミアの醜聞」、「赤毛組合」、「まだらの紐」など所収。ホームズの推理は論理というよりは神業的な観察力という異能に裏打ちされていふような気がして、ホームズ以後の所謂本格ものの形式性に今更ながら気付かされる。そのホームズの特殊性こそがキャラクター小説的な魅力となって、逆にこの作品を無限に延命させることに成功している、とも。
読了日:05月28日 著者:コナン ドイル
https://bookmeter.com/books/576553


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