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『PSYCHO-PASS サイコパス 3』感想

PSYCHO-PASS サイコパス 3 Vol.4 初回生産限定版 [Blu-ray]

 『PSYCHO-PASS サイコパス 3』をみたので感想。

  人間の「犯罪係数」を測定し、犯罪を未然にふせぐシステムが構築された未来。それでもなお発生する犯罪を捜査する刑事たちの活躍を描く。テレビシリーズ3作目の本作では、メインキャラクターを大胆に一新し、新たな物語が語られる。

 キャラクターの魅力に大きく依存してきたこのシリーズにあって、その変更はある種の賭けであったように思うが、全体としてシリーズに新たな活力を付与するにはいたっておらず、悪い意味でのマンネリズムが作中を覆っている。このテレビシリーズ3期は、おおまかに「経済編」「都知事選挙編」「新興宗教編」にわけられるように思うのだが、「経済編」のマイケル・ルイス『世紀の空売り』を引き写しにして換骨奪胎しようとしたようなプロットは、世界観に対して不自然さを免れないように感じた。

 サブプライムローン問題は疑いなく21世紀のアメリカ合衆国という場所の場所性と不可避的に結びついた問題であり、それがこのSF世界で同工異曲に反復されうるのか?。答えは否だろう。先行作品のオマージュや引用は、このシリーズが一貫してとってきた手法であるとはいえ、そうした引用先の適切な選択がなされているようには思えない。たとえば中編劇場版の2作目では『パト2』の縮小再生産はまあ悪くはないかなという水準でなされていた。この3期においては明らかによくない。

 アドホックに設定をつぎ足しつぎ足ししていくのもこのシリーズの伝統とはいえ、さすがに霊媒師を導入するのはいかがなものか。我々が世界に持ちうる信頼が揺らぐと思う。

 1回1時間という尺も、緩急に欠け、また作画監督の異様な多さに象徴される作画の不安定ぶりも気になる。西尾鉄也がタッチしたオープニングの超絶クールさと引き比べるとなおさら。こうした違和感はもうわたくしがこのシリーズに端的に「選ばれていない」というだけのことかもしれません。