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宮台真司 『制服少女たちの選択―After 10 Years』を読んだ

 

 

制服少女たちの選択―After 10 Years (朝日文庫)

制服少女たちの選択―After 10 Years (朝日文庫)

 

  宮台真司『制服少女たちの選択―After 10 Years』を読了。『増補 サブカルチャー神話解体を読んだ時も感じたが、強固な理論に裏付けられた議論の説得性は流石である。宮台氏の主張(援交女子高生は後悔しないetc)のセンセーショナルさと、その議論の鋭さが、本書の魅力だなと感じる。

  本書は2部構成になっていて、前半は女子高生のブルセラ援助交際を取り扱い、後半では日本社会において、コミュニケーションがどのように変遷していったのかを描きだす。

 前半部分は、当時を知らない自分にとってはかなり衝撃であり、インタビューや社会調査で明らかとなった女子高生たちの実態・心性は、到底信じられないというのが正直なところである。当時の風俗誌として、今読んでもこれほど刺激的なものはないだろう。各章が、それぞれが別々に雑誌に発表されたものなので、まとまりは弱く感じたが、それでも夢中にさせられるほど、宮台氏の強烈な情熱というか、当時の女子高生に対する社会の目線に対する反骨心が伝わってきた。後半部分は、『サブカルチャー神話解体でのコミュニケーションと人格類型の議論が、より洗練された形で再論されていると感じた。

 また、文庫化の際に付された圓田氏との対談は宮台氏の問題意識が明確に言語化されており、一読の価値がある。援助交際をする女子高生の姿を肯定することにより、「自分にとって何が幸せで何が不幸かは、自分の試行錯誤を通じて自分が決める」という自己決定原則を賞揚し、パターナリズムを否定すること。また、理論とフィールドワークの密接な接合を通して、社会学会の在り方を問い直すこと。このことは成功したとも失敗したともいえると宮台氏は述べている。

 自己決定原則の賞揚の果てには、氏が本書で疑問を投げかける、共同体の島宇宙化がある気もするが、一個人としてはそうありたいし、それこそ現代に生きる人間に必要なことだと思う。後半の部分、理論と実践の接合は、分野は違えど社会科学を学ぶ者にとって、絶対忘れてはならないことだよな、と胸に刻んでおきたい。

 

終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫)

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増補 サブカルチャー神話解体―少女・音楽・マンガ・性の変容と現在 (ちくま文庫)

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