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北田暁大『増補 広告都市・東京: その誕生と死』を読んだ

 

増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫)

増補 広告都市・東京: その誕生と死 (ちくま学芸文庫)

 

  北田暁大『増補 広告都市・東京: その誕生と死』を読んだ。都市としての渋谷の変遷を、広告戦略とそれを受容する人びとの様子から描きだしていた。同じく東京の都市の変遷を扱っている吉見俊哉の『都市のドラマトゥルギー』で扱われていた時代の先、渋谷を西武パルコが広告都市へと変容させたその後が議論の俎上にのせられている。北田氏も『都市のドラマトゥルギー』の続編のつもり、と述べている。

  本書は、講義のためのテキストとして使用することを想定して書かれたそうで、それゆえ大変平易でわかりやすい。80年代に隆盛した消費社会論に関する議論も簡潔にまとめられており、大変参考になった。ここだけでも読む価値が、自分にとってはあった。

 80年代、西武の広告戦略によって広告を幽霊化し、その内部だけで完結するような都市として計画された渋谷。その渋谷は90年代には、外部の流入による「脱舞台化」、「脱記号化」の流れの中で、特殊性を失っていく。その変容を、『トゥルーマン・ショー』を象徴的に用い、また東京ディズニーランドなどテーマパークの戦略の変化などを取り上げて論じている。ここらへんの説明も実に明快でわかりやすい。

 

 また、文庫版で付された「補遺 あるいは続編のためのノート―終わりなき日常の憂鬱」は、昭和30年代ブームを『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』を中心に論じた現代社会論になっている。北田氏は、オトナ帝国の首魁ケンを理想化した過去にユートピア的社会を仮託して戦う革命家として捉える。理想主義的な革命家と、動物的現実をいきるしんのすけの対立という軸で『オトナ帝国』を見る氏の読みは刺激的だった。北田氏の著作は読んでこなかったのでこれから読んでいこうと思う。

 

 

広告の誕生―近代メディア文化の歴史社会学 (岩波現代文庫)

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嗤う日本の「ナショナリズム」 (NHKブックス)

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