3月は結構バタバタしてたんですが、意外と本を読めたなーと思います。でもなんだか乱読気味になってしまって、それぞれの本を十全に自分のものにできたかというとかなり微妙なところなんですが、まあ見識はちょっとは広まったんじゃないかと思います。というわけで、印象に残った本と読んだ本の感想を以下で。
先月の記事はこちら。
2014年2月に読んだ本ーいわゆる「古典」を読んだ - 宇宙、日本、練馬
印象に残った本
今月読んだ本から一冊選ぶなら、吉見俊哉『博覧会の政治学』。この本、4年前、大学に入学したてのころに一度読んだことがあったのですが、いまいち面白さが分からなかったような記憶があるんですよ。でも時がたって今再読してみたら、面白いこと面白いこと。
多分面白く読めた一番の理由は、フーコーなんかを曲がりなりにも読んだり、吉見氏の処女作『都市のドラマトゥルギー』なんかを読んだりとか、4年間の勉強の蓄積があったからだと思うんですよね。(『都市のドラマトゥルギー』の感想はこちら。) フーコーの思想を大前提にして、それを道具として使っているから、それを知っているのといないのとでは全く理解のし易さが違う。それに叙述のスタイルも、『都市のドラマトゥルギー』と通ずるものがあって、より洗練されている感もあるので、4年前に読んだ時より断然読みやすく感じました。
この本を読んでまず感じたのが、吉見氏の事実の意味付けの仕方、関連の見出し方の巧みさ。それがあってはじめて、博覧会という事象を通して近代そのものの歴史が見えてくる。この歴史像の組み立ての巧妙さ、スマートさこそ本書の魅力であり、なにより吉見氏の圧倒的な手腕を示すものなんだろうと思います。
というわけで、本書は僕にとって思い出深い本であり、また目指すべきところである、という点で非常に印象に残った本なんですよ、というお話でした。
読んだ本のまとめ
■占領と改革―シリーズ日本近現代史〈7〉 (岩波新書)
日本の戦後を、主に政治や政党の動向に着目して概観する。GHQと日本人が手を取り合って改革をしていった、というある種のサクセスストーリーに疑問を提起し、改革の動きは戦前、戦中の政治の中にもみられることを強調している点で特徴的。しかし、改革を戦中からの連続性から捉えるか、占領のインパクトとして捉えるかは程度の問題であるような気もする。その点で、サクセスストーリー批判としては説得性に欠ける。ほぼ民衆不在の歴史叙述なので、いささか退屈の感もある。
読了日:3月1日 著者:雨宮昭一
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■高度成長―シリーズ日本近現代史〈8〉 (岩波新書)
1950年代から1980年代までの通史。著者の専門が経済史であるためか、経済に関する記述が厚く、同様に政治に関しても詳しく述べている。それゆえ、かなり教科書的な印象。高度成長に伴う社会の変容も記述されているが、刺身のツマ程度かなという感じ。かつては経済の二重構造の解消や完全雇用の達成などの目的のための手段であった経済成長が、自己目的化していったというのが、大きな流れとしてある、という主張は説得性があると感じる。
読了日:3月3日 著者:武田晴人
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■近代―未完のプロジェクト (岩波現代文庫―学術)
ハーバーマスのエッセイ集。表題論文以外は、歴史家論争やドイツ統一、移民政策などのドイツの政治状況に対する意見表明であり、かなり読みやすかった。ハーバーマスの近代論を消化するほどには理解が及ばなかったが、「現実と妥協しない現実主義」者としてのハーバーマスの姿勢はなんとなく掴めた。憲法パトリオティズムによる連帯を重視する意思は、ハーバーマスの近代観とかなりの連関がある気がする。
読了日:3月5日 著者:J.ハーバーマス
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■ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史〈9〉 (岩波新書)
1960年代から2000年代までの歴史を、「過去からの連続性としての歴史がどう壊れてきたのか」という視覚から描く。その問題意識からもわかるように、著者の色が強くでた歴史叙述になっており、かつ日本社会全体を見通した歴史像を提示しているので大変面白く読めた。社会運動から家族の変容、地域開発の帰結など、様々なトピックを取り上げつつも散漫な印象は皆無。このシリーズの戦後を扱った3巻の中で最も勉強になったと感じた。
読了日:3月5日 著者:吉見俊哉
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■日本の思想 (岩波新書)
前半部分は論旨、論理展開があまり掴めていないが、後半の講演を文字に起こした二篇は面白く読めた。タコツボ型の概念に象徴される日本の思想のあり方、「である」ことと「する」ことという価値判断の類型は半世紀の時を経て未だに古臭い議論になっていないと感じる。
読了日:3月6日 著者:丸山真男
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■日本とドイツ 二つの戦後思想 (光文社新書)
日本とドイツの戦後思想を、「戦後責任」「ネーション」「マルクス主義」「ポストモダン」の4つのトピックから整理している。仲正氏の他の著作同様かなり平易に書かれており、わかりやすい。それぞれのトピックごとに、西欧の中で近代化していったドイツと、ヨーロッパの外で近代への道を歩んだ日本との対比から、両者の差異が説明されていたが、かなり説得的だと感じた。フィッシャー論争から歴史家論争、ゴールドバーゲン論争まで簡単に整理されていてよい。巻末の年表も、若干片手落ち感もあるが便利。
読了日:3月7日 著者:仲正昌樹
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永井均の色が濃い。入門書というよりは永井なりのニーチェ解釈を楽しむための本といった印象。ニーチェの哲学を、第一空間=真理への意思、第二空間=力への意志、第三空間=永遠回帰の三空間に区分して整理している。三空間はそれぞれ相互に絡み合っていることは何と無く感じたが、どのように関連しているのかまでは掴みきれず。永井的に解釈した永遠回帰の思想はニヒリズムの香りがしつつも、何と無く勇気付けられるような気もしてくるので気分が沈んだ時に再読したいかもしれない。
読了日:3月8日 著者:永井均
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■日本の殺人 (ちくま新書)
日本の殺人事件の諸相、犯罪の捜査や受刑者の生活及び出所、殺人の哲学的な考察という三章構成。日本の殺人の諸相は、殺人を類型化して整理しており、何と無く殺人に対して持っていた先入観を丁寧に突き崩された。頁数も多く割かれ、内容も決して楽しいとは言えないけれどもかなり読ませる構成だった。犯罪者がどのように捜査され、裁かれて刑を受けて、その後出所して生きるのか、ということを全然知らなかったのだと改めて感じた。現在では、犯罪を犯した人の再犯を防いでいた社会の在り方が揺らいできている、という議論は納得。
読了日:3月8日 著者:河合幹雄
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■ニーチェ入門 (ちくま新書)
永井氏のニーチェ論の解毒のために読んだ。ニーチェの思想を、第一にキリスト教及び近代哲学の「真理」「道徳」観念への批判、第二にヨーロッパのニヒリズムについての考察、第三にすべての価値の転倒と新しい価値の創造の三本柱から解釈する。「永遠回帰」と「力への意志」という概念についても、その意味するところを分節してかなり噛み砕いて説明している。竹田氏のニーチェ解釈は、ポストモダンの議論を経てその影響を踏まえてニーチェを読み解いているような印象。ポストモダンの議論を踏まえつつ、それを超える可能性を内在させるニーチェ哲学、というのが竹田氏の主張。
読了日:3月9日 著者:竹田青嗣
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■博覧会の政治学 まなざしの近代 (講談社学術文庫)
近代における人々のまなざしの変容を、博覧会という空間に着目することによって跡づける。『都市のドラマトゥルギー』と同様、場と人々の相互作用を丁寧に洗い出している。多くの先行研究、史料をもとに博覧会という空間を再構成し、それを独自の理論的枠組みから意味付ける手腕は見事という他ない。主に対象となった19世紀半ばから20世紀半ばまでの博覧会の変遷と人々のまなざしの変容というところは大変面白く読めたが、ある種の近代論としての論旨はまだ掴み切れていないと感じる。いずれ再読する。
読了日:3月9日 著者:吉見俊哉
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「分かりやすさ」の罠―アイロニカルな批評宣言 (ちくま新書)
- 作者: 仲正昌樹
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/05
- メディア: 新書
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■「分かりやすさ」の罠―アイロニカルな批評宣言 (ちくま新書)
いわゆる二項対立的な議論の枠組みを乗り越える方法論として、「アイロニー」を提示する。ここでいうアイロニーとは単なる皮肉、当てこすりではなく、デリダの脱構築に通じるような、物事を引いた位置から見つめ直して、「ずらす」みたいな姿勢。テキストの唯一正しい解釈を求めるよりは、他のものを参照しつつ書き手の意図をも超えるような解釈を導くのがひとつのアイロニカルな「批評」の在り方である、というのはなるほどという感じ。またポストモダン思想の源流のひとつとしてドイツロマン主義の批評家たちを挙げている点は勉強になった。
また、終盤の北田暁大氏への痛烈な反論が印象的。それをふくめて全体的にとげとげしい印象を受け、下世話な意味でもおもしろかった。
読了日:3月11日 著者:仲正昌樹
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知の教科書 カルチュラル・スタディーズ (講談社選書メチエ)
- 作者: 吉見俊哉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/04/10
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■知の教科書 カルチュラル・スタディーズ (講談社選書メチエ)
編者である吉見と、寄稿している北田の論考目当てに読んだ。北田「歴史の政治学」は、歴史学徒である自分にとって非常に感じるものがあった。北田は実証主義史学の可能性を「凡庸なラディカリズム」と肯定的に評価し、身体の経験の記述によって経験を捕捉しようとする「経験の政治学」という方法論を提起している。これだけでも読んだ甲斐はあったが、カルスタの研究対象、研究史などをざっと抑えられた気がした点もよかった。巻末のキーワード解説もなんとなく便利なので、手元に置いておいておきたい気もする。
読了日:3月12日 著者:
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夢の原子力: Atoms for Dream (ちくま新書)
- 作者: 吉見俊哉
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/08/06
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■夢の原子力: Atoms for Dream (ちくま新書)
戦後日本の原子力体験を、主に博覧会、大衆文化を通して描き出す。その前提として、「近代の夢」としての電力の国家事業化と、原子力との結びつきも跡付けている。原子力は、原子力発電に代表される平和のための原子力と核兵器に代表される破壊のための原子力とに区別されて経験され、様々な作用から前者が後者を覆い隠していったと吉見は指摘する。「救済」「成長」「幸福」などの理念を通じた言説、表象の操作によってそれはなされたとする説明は大変説得的。
電気という当たり前のものの浸透を探る一章、原子力に焦点を当てた「博覧会の政治学」とも言うべき二章、日本におけるカルチュラルスタディーズの第一人者の面目躍如たる三章、それぞれの読み応えもさる事ながら、全体で描かれる歴史像の説得性。吉見氏の持ち味が十二分に味わえた。
全くの余談ではあるが、Amazonのレビューでは工学系の研究者への痛烈な批判になっている、との批判が寄せられている。しかしこれは僕に言わせて見ればお門違いもいいところだ。吉見氏の分析の眼目はそんなところには全くない。冷戦構造のなかの地政学的、歴史的なアプローチの中に、どうやってそんな批判を読み込んだのか不思議なかぎりである。
読了日:3月13日 著者:吉見俊哉
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■原爆神話の50年―すれ違う日本とアメリカ (中公新書)
スミソニアン博物館の原爆展を巡る議論から、日米双方の歴史に対する姿勢を考える。著者はジャーナリストであり、記述の端々からその香りが伺えるが、関係者への丹念な取材から、原爆展の提起した問題をよく整理していると感じる。「原爆の投下が100万人の命を救った」という根拠なき神話が、1995年当時も深くアメリカ国民に浸透していたのだなと実感させられた。「正史」を描こうとする政府や圧力団体に対して屈する形となったスミソニアン博物館ではあるが、それが生み出した論争まで含めれば大きな価値があったようにも思える。
読了日:3月13日 著者:斉藤道雄
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■政治の世界 他十篇 (岩波文庫)
丸山眞男の、主に政治学に関わる論考が収録されている。論考の方向性は、政治学徒に向けて書かれたものと、大衆向けに書かれたものとにおおまかに分けられる。政治学徒向けの論考のアクチュアリティは正直よくわからないが、一般向けに書かれたテキストは未だに読む価値があると感じる。その所以は丸山が見た当時の日本と現代の日本が、大衆と政治の関わりという点でそれほど大きく変わっていないからではないか。政治を「可能性の技術」と捉え、大衆に「責任倫理」に基づく行動を要求する丸山の姿勢は未だに重要性を失ってはいないように思える。
丸山の論はさておき、この文庫版の論集が優れているのは、政治学の素人が読んでもかなりの満足感を得られる、そんな構成になっていること。後半に収拾されている論考は、大衆がいかに政治と関わることができるか、その方法とはなにか、といった大衆に向けて書かれた(語られた)ものなので、大変わかりやすいのがその満足感の理由である。その点において、編者の力量が存分に発揮された、優れた論文集だと感じた。
読了日:3月15日 著者:丸山眞男
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■社会的ひきこもり―終わらない思春期 (PHP新書)
いわゆる「ひきこもり」論の嚆矢。ニートという言葉が人口に膾炙した今となっては、ひきこもりがそれほど着目されていなかった当時は隔世の感があるが、著者の主張する「ひきこもりシステム」の悪循環は未だに分析として説得力がある。主に具体的な状況とそれへの対応に紙幅が割かれているが、特に興味深かったのがひきこもりと社会の関係について。可能性を断念し、役割を引き受けるという、精神的な「去勢」を否認する教育システムと、社会の齟齬からひきこもりは発生しているという説明に納得した。
読了日:3月17日 著者:斎藤環
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デリダの入門書。デリダの生い立ちと経歴を述べた部分以外は、かなり細かくトピックごと分割されて説明されている。それぞれのトピックの説明が短い頁数で終わってしまうので、なんだか細切れ感が。細切れの文章を読んでいくのは結構しんどいものがあった。理解もそれほどできていないがそれはちゃんと読んでいないからなのか、なんとなくエッセンスを掴んでねくらいの記述しかないからなのかは定かでない。おそらく前者。もしかしたらデリダが俺の肌に合わないのかもと今更ながら感じた。
デリダの入門書は何冊も読んだが、高橋哲哉氏のが一番すっと理解できたかもしれない。
読了日:3月18日 著者:林好雄,廣瀬浩司
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■法の力 〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス)
主にベンヤミンの読解を通して、法/権利の問題を脱構築との関連から論じる。講演を元にしているので読みやすかったが、わかり易くはなかった。しかし訳者解説が非常にすっきりと内容を整理していて、なんとなーく掴めた気にはなれた。脱構築を促し続けるものこそが「正義」であり、法を解釈=脱構築し続けることによって正義を目指すことを主張している、という風に読める。法/権利と脱構築という部分は議論についていけたように思うが、「署名」や個人名などのワードが出てくると途端につかめなくなった。
読了日:3月25日 著者:ジャック・デリダ
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■社会学の名著30 (ちくま新書)
流し読み。竹内氏のブルデュー解釈は本書以外でもいろんな本で披露されているが、やはりわかりやすい。理論を「自分のものにする」とは正しくこういうことなんだなと感じる。
読了日:3月26日 著者:竹内洋
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■ポスト・モダンの左旋回
ポストモダンの思想家たちが、90年代半ばに政治的な発言、思想を発信するようになった事態を「ポストモダンの「左」転回(旋回)」と名指し、それに関連する論考が所収されている。マルクス論が約半分を占めており、ブロッホを経由して後期デリダに接続している。後期デリダのある種の正義論に著者も共感を覚えているように読めた。また、浅田、柄谷ら日本のポストモダン思想家との対比から、ローティのプラグマティズムも肯定的に評価している。浅田、柄谷の言説の魅力のイマイチさが論理的にわかった気になった。
読了日:3月27日 著者:仲正昌樹
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法哲学に関するトピックを、ざっと概観する。入門書というよりはエッセイっぽい構成と文体。生物学的な知見が結構な頻度で触れられたりしたり、孔子や老子、韓非子など古代中国の思想家が議論の俎上に上ったりしたことが印象的だった。非常識の世界に属する哲学と、常識の世界に属する法学。その両者の狭間に立つのが法哲学である、というのが著者の認識だろうか。
読了日:3月28日 著者:長尾龍一
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■ドゥルーズの哲学原理 (岩波現代全書)
超越論的経験論の哲学者としてドゥルーズを捉え、その思想の跡を辿る。超越論的経験論については、正直よく理解出来ていないが、その実践は失敗という「偶然」によってしか思考をすることはできないという結論に達し、その限界を打破するためのガタリとの共同作業だったという点には納得した。最も面白く読めたのはフーコーの権力論に対するドゥルーズの見解を解釈した5章。言説的編成と非言説的編成の二元論を束ねる「権力」というのがフーコーのイメージであるとする解釈はすっと入ってきた気がする。
読了日:3月29日 著者:國分功一郎
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■読書と社会科学 (岩波新書)
読書論としても、社会科学論としても得るものがあった。読書はまず著者を徹底的に信じて読み込んで、その結果として深い疑問が生じたり、書き手の意図をも超えた書き手の意図が読み込める、とする。また、社会科学の本を読むことは、自分の中に概念装置を組み上げることこそを目的とする、というのは納得できた。概念装置を自分なりに組み上げるには、前述したような精読、構造化して読むことが必要である。著者の主張は冒頭で述べられていた「本でモノを読む」という実践に集約されると思う。いつかまた戻ってきて読み直したいと思える本だった。
なんとなく、『ドゥルーズの哲学原理』と響き合う本だった。内田氏の読書法と國分氏の考えるドゥルーズの哲学原理は、かなりの程度重なるのでは。
関連してこんな記事も書きました。
『ペルソナ4』におけるメガネの位相―メガネ・認識・社会科学 - 宇宙、日本、練馬
読了日:3月30日 著者:内田義彦
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来月のはこちら。