映画の日に『6才のボクが、大人になるまで。』をみました。よかったです。とてもよかった。なんか感想を書くのも野暮、という感じではありますが、一応思ったことをつらつら書き留めておこうと思います。
当たり前の日々が積み重なり、いろんなことが変わってゆく
アメリカ・テキサスに生まれたメイソン少年の6歳から18歳までの12年間を追っているのが、『6才のボクが、大人になるまで。』なんですが、いやマジであしかけ12年にわたって撮影したってのは本当にすごいなと思います。小学生並みの感想ですが。その12年間にいろいろあるわけですが、多分メイソンくんの人生は人並み以上に波乱に満ちてはいるけれども、この映画が時間をかけて描くのはむしろありふれた日々の生活の1ページであるという気がしました。多分舞台となってるアメリカに住んでいる人、とりわけヒューストンやらオースティンを知る人は200倍くらい楽しめるのでは、という気もしてうらやましくなりました。そうはいっても同時代のお話ではあるわけで、ハリー・ポッター発売の熱狂とか、なんとなく懐かしい気持ちに日本に住んでる僕ですらなったりもして。
人生の節目節目と、そのあいだにある無数のとりとめのない出来事。男友達としょうもない話をしながらだべったりとか、つまらないことで父親だったり母親だったりとの間に気まずい空気が流れていしまったりだとか、そういう日常の描写がべったりと心にのこり、自分のいままで歩んできた道をなんとなく思い返されたりして。その漂う空気感が、リアルな時の流れとあいまって訴えかけるものがある。12年という歳月のあいだに当たり前の日常は繰り返され、しかし同時にいろんなこともあって自分も周りの人間も変わっていく、という月並みなことが、なんだか改めて胸に刺さったという気がする。
なんというか、他人の人生を俯瞰してはじめて、自分だけじゃなく両親も変わっていってるのだな、という至極当たり前のことにようやく気付かされたというきがして。ちょっと『劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME』*1的なあれですね。メイソンくんも変わるけれど、父親も母親も変わってゆく。ボーリング場でむきになった父親も、だんだん適切な距離の取り方をわかってゆく。メイソンとイーサン・ホーク演じる父親の接するシーンの数々が、ぼくはすごく印象に残っていて。
人生は音楽はともに
その父親とのシーンで流れる曲なんかも、いい感じなんですよね、いい感じ。ビートルズトークだとか弾き語りだとか、父親の登場シーンが印象的なのは音楽のおかげかもしれない。
Wings - Band On The Run (Original Video) - YouTube]
このシーンに限らず、映画を彩る音楽の数々がとってもいい。コールドプレイにはじまり、アーケード・ファイアに終わる劇伴がいい。
映画の中で描かれる日々の当たり前のことの積み重ねがまったく退屈でないのは、流れる音楽と無関係ではないと思う。というか音楽があるから、人生は退屈じゃない。時とともに心を揺さぶる音楽は移り変わり、それとともに思い出が積み重ねられていく。人生のそれぞれの場面が音楽によって彩られる。この映画ほどではないにしろ、結構自分の思い出と音楽って結構結び付くという気がするんですよね。
というわけで、なんだか自分の思いでを考えるきっかけになる映画だったという気がします。『6才のボクが、大人になるまで。』は人生ですね。
【作品情報】
‣2014年/アメリカ
‣監督:リチャード・リンクレイター
‣脚本:リチャード・リンクレイター
‣出演
- エラー・コルトレーン - メイソン・エヴァンス・ジュニア
- パトリシア・アークエット - オリヴィア・エヴァンス
- ローレライ・リンクレイター - サマンサ・エヴァンス
- イーサン・ホーク - メイソン・エヴァンス・シニア
- リビー・ヴィラーリ - メイソンの祖母
- マルコ・ペレッラ - ビル・ウェルブロック
- ブラッド・ホーキンス - ジム
- ゾーイ・グラハム - シェーナ
- チャーリー・セクストン - ジミー
- ジミー・ハワード - ミンディ・ウェルブロック
- アンドリュー・ヴィジャレアル - ランディ・ウェルブロック
- イライジャ・スミス - トミー
- ニック・クラウス - チャーリー
- トム・マクテイグ - ミスター・ターリントン
- スティーヴン・チェスター・プリンス - テッド
- エヴィー・トンプソン - ジル
- ジェニファー・グリフィン - ミセス・ダービー
- タマラ・ジョレイン - タミー
- テイラー・ウィーヴァー - バーブ
- ライアン・パワー - ポール
*1:「当たり前だけど。物心ついた時からママは大人で」「しかもめちゃくちゃ大人で、何考えてるかわかんないし、太刀打ちできないし・・・。でも、やっぱり大人で」「そんなママに・・・私みたいに輝きたいとか。何かを見つけたい、とか。そんな時期があったんなんて・・・」