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二人じゃなきゃダメなんだ―『カレイドスター』と『ヒカルの碁』についての雑感

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 先日、『カレイドスター』を2クール目まで見ました。1話みるごとに元気づけられる感じがし、もったいぶってちまちまみていたのですが、2クール目終盤は我慢できずに一気に観てしまいました。それほど引き込まれた。まだ全編をみてはいないのですが、ひとまず感想とか、思ったこととかを書き留めておこうと思います。

 弛まぬ前進

 『カレイドスター』は、主人公・苗木野そらが前に進み続ける物語であると思う。何があろうとも、夢に向かって進み続ける姿が、2クールかけて描かれていたわけだ。そのどんな障害にも立ち向かうそらの姿勢を見て、自分は前に進めているのだろうかと自問せざるを得なくなるようなところがある。「お前は前に進んでいるか、立ち止まってはいないか」、そう問われていると感じる。だからこそ、『カレイドスター』の物語は胸を撃つ。

 そして『カレイドスター』において特筆すべきなのは、前に進むためにはパートナーが絶対に必要である、ということ。2クール目でキーとなる「幻の大技」を完成させるためには、互いが認め合ったパートナーがいなければ、成立しえない。だから前進を続けるそらの努力は、自身の能力を高めるという方向と、パートナーであるレイラ・ハミルトンを理解しようとする方向の、ふたつの異なる、しかし相互に絡み合いもする次元でなされることになる。

 ここら辺のエピソードをみて僕が何を思ったかっていうと、あ、これ実質『ヒカルの碁』じゃないか、ということです。これをお読みの皆さんは理解不能だと思われますが、『カレイドスター』は『ヒカルの碁』なのです。

 

「碁は2人で打つものなんじゃよ」

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 『ヒカルの碁』をすでにお読みの皆さんに、全体を通して最も印象に残った回を訊ねたとしたら、おそらく「第140局 決心」が燦然と第一位に輝くのではないかと思われます。佐為と突然の別れを経て囲碁に対する情熱を失ったヒカルが、中国から帰ってきた伊角と対局する中で、碁盤のなかに、自分自身の打つ碁の中で佐為と再会する、あの回です。

 あのシーンが作中指折りの名シーンであることは論をまたないと思いますが、この回はそれ以外にも果てしなく重要な会話が繰り広げられる回でもあるのです。その発言をするのは桑原本因坊。ヒカルと偶然すれ違った桑原は、同じくプロ棋士である坂巻に語る。

「のう坂巻さん」

「知っとるか? 碁は2人で打つものなんじゃよ」

  そんなことを当たり前じゃないかと返す坂巻を、桑原は「わかっとらんな」と一蹴する。

「碁は1人では打てんのじゃ」

「2人いるんじゃよ」

「1人の天才だけでは名局は生まれんのじゃ」

「等しく才たけた者が2人いるんじゃよ」

「2人」

「2人そろってはじめて神の一手に―」

「一歩近づく」

  この一連の台詞に、作画小畑健・原作ほったゆみの2人体制の『ヒカルの碁』をメタ的に語ってみせた台詞とも読める気がするんですが、それはおいといて。

 「一歩近づく」とは「遠い話」だと坂巻は笑うが、2人いなければその一歩すら踏み出すことはかなわない。そういうことなんです。そういえば前にそんなことを書いた記憶があるなと思い返してみたら、『ピンポン』の感想もそんな感じでした。

 

アニメ『ピンポン』感想 相棒がいなけりゃ卓球はできない - 宇宙、日本、練馬

 

 だからつまり、『カレイドスター』は『ヒカルの碁』であり、『ピンポン』ってわけんなんですね(適当)。『カレイドスター』について語ろうとしたらいつのまにか『ヒカルの碁』について語ってしまうくらいに『ヒカルの碁』熱が再燃しているので、また何か書くかも。書かないかも。

 

関連

 以前書いた奈瀬についての文章。

「奈瀬明日美の碁」、あるいは『ヒカルの碁』の院生論 - 宇宙、日本、練馬

 

 

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