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恐竜が出て殺す!―『ジュラシック・パーク 』感想

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『ジュラシック・ワールド』の予習のため『ジュラシック・パーク』を視聴。幼いころにみた記憶はあるんですが、内容はほとんど憶えてなくて、初見のような気持ちで楽しめました。以下で簡単に感想を。

非実在系ジョーズ

 恐竜博士のグラントとその助手サトラーは、恐竜を現代によみがえらせたテーマパーク、ジュラシック・パークの視察に招かれる。そこで彼らを待ち受けていたのは、不慮の事故と恐竜の脅威だった。

 アバンタイトルではその姿を映し出されず、ただ恐ろしげな存在として描かれる恐竜。その描写に、本作の方向性は明確に宣言されている。この映画は間違いなくパニックホラー映画だ。かつてスピルバーグの撮った『ジョーズ』のセルフリメイクですらあるんじゃなかろうか。

 とはいえガチガチの恐怖映画である『ジョーズ』と比べると、相当マイルドに調整されてる感じもあるな、と思いました。まず第一に、サメと違って恐竜は現代には実在しないし、『ジョーズ』はありふれた海を舞台にしていたけど『ジュラシック・パーク』は特殊な島が舞台だから、サメが怖くて海に入れなくなってしまう子どもを生み出す危険性はない*1。『ジュラシック・パーク』は無菌化されたほどよい恐怖を提供してくれる映画だなあと思いました。

 

予想通りにカオス

 無菌化、というのは『ジュラシック・パーク』全体をつらぬく論理であるようなきもするんですよね。複雑系のカオス理論を理論的な背景として、生命は予測不可能なさまざまな要素が作用すことが作中でたびたび言及されるのと対照的に、映画の構成や物語は極めて秩序立っている。生命は御しきれなくても映画という構成体は御しきってみせるし、映画というメディアはそうした秩序の中でしか存立し得ない、とでも言うべきか。そこで言う秩序とは、カオス的ななかに見出される秩序とかそういうものではなく、ウェルメイドな既製品のごとき秩序である。それはもちろんネガティブな意味ではない。パニック映画のお手本のようによくできてると思いました。緩急をもって訪れる危機が心地よい。

 そんで物語のほうも、子供嫌いの男がそれをなんとなく克服したり、ジジイが反省したりと教科書的な価値観に根差した「成長」物語を特にいやらしさなく語っていてこれもうまい。さすがハリウッドの娯楽映画、こどもの教育に最適だぜという感じ。「成長」の見込みのないデブとか弁護士、はたまた哀れながら影の薄い人間たちは恐竜の餌食になって画面から消え去る親切設計。成長なきものは生き残れないという新自由主義的な価値観の浸透を感じる。嘘です。

 最後の敵ヴェロキラプトルの倒し方もよく考えられてて、人間たちが手を下すのではなく、あくまで自然界の秩序の中で解決が図られる。エコロジーって感じ。そんな感じで大変楽しかったです。

 それとまだ子役時代の坂本真綾氏が吹き替えをやっていて、貴重なファンアイテムのひとつですね。あどけない声と演技が最高でした。

 

ともかく、『ジュラシック・ワールド』大変楽しみです。

 

 

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【作品情報】

‣1993年/アメリカ

‣監督:スティーヴン・スピルバーグ

‣脚本:マイケル・クライトンデヴィッド・コープ

‣出演

*1:マジでそういう知り合いがいたんですよ。