はい、2016年もまさに終わろうという雰囲気が出てまいりましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。僕はと言えば、大晦日に大仕事が残っているので気が抜けない感じです。しかし振り返りは一応年内に済ませておこうと思います。
2016年新作映画ベスト10
今年は本当におもしろい映画をみさせてもらったなという感じで、10本選ぶのも、そのなかでランク付けするのも非常に難儀しました。これまた後で選んだら大きく順位が変動するのでは。しかし今の気分を残すことにこそ意味があろうと思うので、一応こんな感じです。
1位は『君の名は。』。この映画が多くの人の魂に向けて語られた/語られているこの2016年に感謝。2位は『シン・ゴジラ』。「とんでもないものをみてしまった」と呆然としながら夜の新宿を彷徨うけものになった。僕は2016年という時をこの2本と結び付けて想起せずにはいられないだろう。たぶん世の中はどんどん悪くなっていくし僕の人生もおそらくそうなのだろうと思うのだけど、しかしそれでも、いま・ここで生きていく意味を、その価値をこれらの映画は語っていると思うし、その意味でどちらの映画も、この2016年に語られねばならない物語を語ってみせた、と思う。
3位は『ザ・ウォーク』。今年は実話を基にした洋画が豊作だったのではないかと思っていて、5位『ハドソン川の奇跡』、9位『スティーブ・ジョブズ』のほかにも、『ブリッジ・オブ・スパイ』、『完全なるチェックメイト』、『ストレイト・アウタ・コンプトン』等など、いずれ劣らぬよさだった。そのなかでも『ザ・ウォーク』は、映画館という空間によって、強制的に狂気の偉業につき合わされるアトラクション感覚がずば抜けて楽しかったし、これは『君の名は。』とも重なるのですが、失われたものと失われないものとのコントラストがエモーショナルな後味を喚起する素晴らしい映画だったと思います。
4位『この世界の片隅に』は、いまだ自分のなかで消化しきれていないという感覚が強くあって、それはこの映画を今後見るたびに突き付けられるのだろうな、と思います。そこに描かれる生きられた人生のまえにはこの僕の言葉などなんの意味もなさないのではないか、という気がする。
5位『スティーブ・ジョブズ』は、アーロン・ソーキンの脚本が期待以上の冴えっぷりで、ジョブズと人々の会話を一対一の決闘として画面に映し出し、それをリズミカルに畳みかけていく構成がすさまじかった。6位『聲の形』7位『シング・ストリート 未来へのうた』も、同じく映画館という空間を存分に生かした音の映画という意味で通じる点があるように思う。とりわけ『聲の形』は、映画館という密室が凶器をむき出しにして精神をいたぶってくるシークエンスと、その傷がゆるやかに回復していく救済とを同時に浴びせてくるとんでもない映画だった。『シング・ストリート』はドラマ版『モテキ』の最終回っぽいラストで1億点が加点されてしまう。
8位『海よりもまだ深く』は、そこにいる人々の生の在り方が、未来においては否応なしに変わらずにはおられないだろう団地という空間の今を切り取った映画だと思う。そこで生きられる人間の生は、この時代の空気の一端を切り取っている、とも。その意味で、『君の名は。』・『シン・ゴジラ』と通じると思うのだけど、この2作はその先の風景を見事に提示してみせた一方で、『海よりもまだ深く』は、この「いま」をなんとなく肯定してみせるような映画だったように思います。どちらが優れているということではなく。
9位『ハドソン川の奇跡』は、実話もののなかでの極めてソリッドな作品だったと思う。硬質な語り口で、『アメリカン・スナイパー』とは一線を画する、きわめてアメリカ的であるんだけれども普遍的な価値に開かれてもいるポジティブなヒーロー像を提起してみせたイーストウッドすごい。
10位『サウルの息子』は、昨年の『野火』並みの精神的苦痛を強いられたことが心に残りまくっている。
以上、こんな感じでベスト10を選びました。こうして振り返ると、『君の名は。』で提起された喪失と希望をめぐる物語が、僕の読みを強く規定する補助線のように機能しているという感じを受け、その意味でもやはり、この作品が今年のベストだろうと思いました。
自宅視聴映画ベスト10
- 『はじまりのうた』
- 『クラウド アトラス』
- 『ジャーヘッド』
- 『マップ・トゥ・ザ・スターズ』
- 『A』
- 『海街diary』
- 『ロード・オブ・ウォー』
- 『リアリティのダンス』
- 『ラン・ローラ・ラン』
- 『City of God – 10 Years Later』
2016年にみた映画まとめ
劇場
- 『傷物語〈Ⅰ鉄血篇〉』
- 『ブリッジ・オブ・スパイ』
- 『完全なるチェックメイト』
- 『クリード チャンプを継ぐ男』
- 『ザ・ウォーク』
- 『オデッセイ』
- 『白鯨との闘い』
- 『ストレイト・アウタ・コンプトン』
- 『スティーブ・ジョブズ』
- 『キャロル』
- 『KING OF PRISM』
- 『同級生』
- 『ヘイトフル・エイト』
- 『サウルの息子』
- 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
- 『ちはやふる 上の句』
- 『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』
- 『スポットライト 世紀のスクープ』
- 『レヴェナント:蘇えりし者』
- 『劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~』
- 『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
- 『ちはやふる 下の句』
- 『デッドプール』
- 『ズートピア』
- 『海よりもまだ深く』
- 『日本で一番悪い奴ら』
- 『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』
- 『シン・ゴジラ』
- 『X-MEN: アポカリプス』
- 『傷物語〈Ⅱ熱血篇〉』
- 『君の名は。』
- 『スーサイド・スクワッド』
- 『映画 聲の形』
- 『ハドソン川の奇跡』
- 『シング・ストリート 未来へのうた』
- 『ザ・ビートルズ~EIGHT DAYS A WEEK』
- 『SCOOP!』
- 『インフェルノ』
- 『この世界の片隅に』
- 『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』
- 『聖の青春』
- 『ポッピンQ』
- 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
計43本。複数回劇場に足を運んだのは、『君の名は。』3回、『シン・ゴジラ』3回、『劇場版響け!ユーフォニアム』2回。それとガルパン4DX版も体験しました。
自宅
- 『ラン・ローラ・ラン』
- 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
- 『アイアン・スカイ』
- 『マン・オン・ワイヤー』
- 『007 ゴールデンアイ』
- 『裏窓』
- 『007 ドクター・ノオ』
- 『スキャナーズ』
- 『シンドラーのリスト』
- 『ジャッキー・ブラウン』
- 『ジャーヘッド』
- 『ロード・オブ・ウォー』
- 『戦場のピアニスト』
- 『マルドゥック・スクランブル 圧縮』
- 『マルドゥック・スクランブル 燃焼』
- 『マルドゥック・スクランブル 排気』
- 『ファンタスティック・プラネット』
- 『道』
- 『スターダスト』
- 『人類資金』
- 『TOKYO TRIBE』
- 『マップ・トゥ・ザ・スターズ』
- 『ALWAYS 三丁目の夕日』
- 『ALWAYS 続・三丁目の夕日』
- 『ALWAYS 三丁目の夕日'64』
- 『海街diary』
- 『立喰師列伝』
- 『ゴジラ』(1954年版)
- 『ショーン・オブ・ザ・デッド』
- 『インデペンデンス・デイ』
- 『選挙』
- 『ゴジラ』(1984年版)
- 『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』
- 『リアリティのダンス』
- 『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』
- 『A』
- 『グランド・イリュージョン』
- 『ほしのこえ』
- 『彼女と彼女の猫』
- 『秒速5センチメートル』
- 『雲のむこう、約束の場所』
- 『星を追う子ども』
- 『劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ』
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
- 『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』
- 『はじまりのうた』
- 『エリジウム』
- 『City of God – 10 Years Later』
- 『クラウド アトラス』
- 『カリフォルニア・ダウン』
- 『ストリート・ファイター 暗殺拳』
- 『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』
- 『劇場版ポケットモンスター ルギア爆誕』
- 『劇場版 BLOOD-C The Last Dark』
計55本。うち8本は再視聴でブログになんかしらの感想を記したやつなので、初見は47本。
2016年にみたTVアニメ
- 『響け!ユーフォニアム』
- 『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』
- 『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』
- 『中二病でも恋がしたい!』
- 『おおきく振りかぶって』
- 『おおきく振りかぶって 〜夏の大会編〜』
- 『境界の彼方』
- 『TARI TARI』
- 『この美術部には問題がある!』
- 『ふらいんぐうぃっち』
ちゃんと最終回までみてブログに何かしら書いたのは10本。
アニメに関しては、こういう形で個人誌を発行できたのは個人史的には大きな出来事だったなと思います(まだ現物がどうなっているのかあやしい状況ですが)。
読んだ本のまとめ
読んだ本の数:329
読んだページ数:100938
今年の10冊
- 冲方丁『マルドゥック・ヴェロシティ』
- トマス・ピンチョン『重力の虹』
- トマス・ピンチョン『LAヴァイス』
- 古川日出男『アラビアの夜の種族』
- 舞城王太郎『暗闇の中で子供』
- 村上春樹『アンダーグラウンド』
- 豊島ミホ『やさぐれるには、まだ早い!』
- エルンスト・H・ゴンブリッチ『若い読者のための世界史』
- ミハイル・ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』
- スティーブン・ピンカー『暴力の人類史』
10冊(分冊になっているやつは一冊カウント)選ぶならこんな感じでしょうか。やはり分厚い本はつよくて、長い時間拘束されることによって強制的になにかを残していく気がする。
次点(というかほかに印象に残っているの)は、福井晴敏『人類資金』、吉川浩満『理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ』、井上ひさし『吉里吉里人』、法月綸太郎『頼子のために』。
11月から始めた『失われた時を求めて』チャレンジは現在でも継続中です。
月ごとのまとめ