Huluでみた『アース・トゥ・エコー』が存外によかったので感想を記しておきます。
アメリカ、ネバダ州。高速道路の建設のため、立ち退きを迫られた人びとは町を離れなければならなくなった。親友と呼べるほど心通わせた3人の少年たちもまた、家族とともに街を離れ、それぞれに別の場所で暮らさなければならない。引っ越しの前夜の思い出作りに、不審に故障したスマートフォンが指し示す地点まで、3人だけで冒険を試みることになった。スマートフォンに座標を送ったものが、彼らの想像の外にあるものであるとも知らずに。
『スタンド・バイ・ミー』的な少年時代の冒険をSF的な道具立てを添えたこの『アース・トゥ・エコー』の特徴的な点は、その映像が少年たちの持つカメラによって撮られた映像を軸に構成されている点にあるだろう。その映像は『クローバーフィールド』のようにホームビデオ風の映像によって全編が構成されているという感じではなく、きちんと編集がはいって一つの「映像作品」になっている。
お前はYou Tubeの再生数稼ぎが目的なんだろ!みたいになじられたりという場面が挿入されていることに端的に顕れているように、現代――2010年代の情報環境がきっちり取り入れられていて、彼らがあまりに自然に映し/映されるように物語が展開するのが上手い。こういう現代の情報環境を意識した映画ってもうすでにいくつも撮られていると思うのだけれど、それをこうした青春ものに当てはめて物語を語ろうとしたことに本作の慧眼はあるように思われる。
『スタンド・バイ・ミー』はのちに作家になった男が回想し、そして特権的に語った物語ともいえると思うのだけど、もはや2010年代に何事かを語るには長い年月をかけて養われた作家の力ではなく、普段使いのスマートフォンさえあればいいのだ。もちろんスマートフォンを使って物語を語るためにはまた別種の技量が必要ではあるのだろうけど。とはいえ、中年男性的な自意識から解放され、子供自身によって語られるかのように物語を提示してみせた(これを規定しているのは結局のところ大人の力だというのは措くにしても)ことに、なんというかこれを眺める21世紀生まれのガキどもはなんと恵まれたことよと思う。
そして彼らの語る物語は、ガジェットの現代性と対照的に、きわめて普遍的でもあるように思う。人は別れを繰り返すのだけど、それでも大事ななにがしかを我々は胸に抱いて生きてゆくのだと。ある意味陳腐な説話風の結語を陳腐に感じさせないのは、まさしくこの語り方が極めて現代的であるからだろう。君らのもつ道具は、それを使って普遍的な物語を語りうるポテンシャルをもつ。こうして彼ら自身の物語を語ってみせた少年たちは、そういう意味で等身大なロールモデルだと思う。なんかよくわからん動画サイトで再生数を稼ぐためにあくせくしている人に代わるオルタナティブとして、こういう想像力が提起されていることが、もっと多くの人に知られてもいいと思いました。
近年の同系統の作品に『SUPER8』なんかがあると思うのだけど、こちらはなんとなく野暮ったい感じがしたのですよね、あんまり覚えてないんだけど。近々見返してもよいかも。
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