宇宙、日本、練馬

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歴史への借り――『Fate/Grand Order』雑感

Eternity Blue

 今年の7月くらいから本腰入れてやり始めた『Fate/Grand Order』にドはまりしてしまいまして、時間と金銭を無法に搾取されています。しかしやっぱりおもしろかったんで、ここでいままでのところの雑感を記しておきます。

  2017年、それは訪れなかった。歴史の終わり、世界の終末。それを阻止するため、人理継続保障機関・カルデアの唯一のマスターが、人類の歴史上の7つのターニングポイント、特異点へと時間遡行する。歴史をあるべき姿へと修復し、人類を救うための作戦、グランド・オーダーがここに始まった。

 TYPE-MOONの作品群とどういう感じで距離を取ったらいいのかいまだに決めかねるところがあって、この『FGO』もサービス開始されたころはなんとなく気になってはいたけどスルー、いまさらになってTwitterで盛り上がる人々をみて始めるという、圧倒的乗り遅れっぷりでインストールしました。ソーシャルゲームにカテゴライズされるゲームって『艦隊これくしょん-艦これ』くらいしかやったことなくて、そもそもスマートフォンでプレイするゲームに至っては触れずにきたのですが、いやどっぷりハマりました。

 『FGO』の魅力は、なんといってもストーリーの吸引力に尽きる(あと聖晶石召喚でありえないほどアドレナリンがでること)。世界を救う、そもために人類史に介入する。7つの章のすべてがすべて素晴らしいかといえばそうではないのだけれど、6・7章の盛り上がりは筆舌に尽くしがたい。6章ではかつて戦友として戦ったことをわたしたちは知る彼の王が、今度は最強の敵としてわたしたちの前に立ちはだかり、翻って7章では、最強の敵だった英雄王と共に、それをはるかに超える災厄と対峙する。

 『stay night』を反転させたかのごときこの6・7章で、とりわけ衛宮士郎の変奏ともいうべき、本物ではなかった男の物語が語られる6章は、尋常でない敵の強さとストーリーとが絶妙にかみ合って非常によかった。このあたりの盛り上がりをリアルタイムで追いかけられた人たちには強い嫉妬を覚えるほどに。

 

 この『FGO』は、ソーシャルゲームという媒体に即して、聖杯戦争というシステムを造り替えてはいるが、同時に『stay night』の精神性を継承してもいる。その精神性とはなにかといえば、「歴史への借り」の感覚である。『stay night』のなかには、アーサー王伝説をはじめとする、これまで歴史のなかで語られてきた無数の物語の、そして同時代に語られている様々な物語のモチーフが露骨にあらわれる。物語自体が、歴史から借り受けられた様々な物語と事物との集積によって織り上げられている。この感覚は、先に放映されたアニメ版『UBW』のエピローグできわめて直截に表明されているものでもある。

 『FGO』の中核にあるのもまさにこの「借り」であって、私たちはつねに、英霊の座にあるサーヴァントの力を借り、あるいは歴史のなかに生きた人間たちの力を借り、人類を救うための戦いを遂行していく。この「借り」はバトルシステムのなかにも組み入れられていて、かならずほかのプレイヤーもしくはNPCのサーヴァントを借りて戦わなければならない*1

 もっといえば、ソーシャルゲームという形態は、必ずサービス修了の日が来る。ともに戦うサーヴァントもあくまでその日まで「借りている」に過ぎない。だから私たちの戦いには、衛宮士郎のそれがそうであったように、必ずサーヴァントとの別れの時が訪れる。その意味でも、徹底的に「借り」というモーメントがゲームのなかに内在しているのだ。この契機を最後の最後で活かすことができれば、『FGO』はまさしく、マスターという経験を追体験することのできるゲームとして完成するだろう。

 そして、そうした歴史への借りとならんで、一種のフィクション論でもあるという点でも、『stay night』の精神的な後継者である。私たちが相対する黒幕は、人間が人間のために作り出した魔術式。人間のために、その有限の生を憐れんで永遠を与えようという、そのような仕方による人類の救済。対して有限の命をもつ私たちは、その平凡極まる有限さだけをたのみに、そして、魔術式と同じく、人によって生を与えられた、限りなく短い命をもつ少女の力を借りて、最強の敵に挑まねばならない。

 永遠と一瞬。永遠ということばのあまりに強い魅惑を前にして、それでも私たちは一瞬のほうに賭け金を置かなければならない、置かざるを得ない。巨大な歴史のまえには一瞬に過ぎない私たちの生、そしてそれよりもはるかに短いそれゆえに強い光を放ち続ける、フィクションの輝き、瞬いては消えてゆく無数の流星、それが照らし続けた集積としてのいま・ここ。そうした風景をみせてくれたからこそ、私たちは再び、その先の新たな物語が語られるのを心待ちにしているのだと思う。

 

ごく個人的なプレイ履歴

 と、感想はこんなところです。そういうお話の魅力と並んで、『FGO』の魅力は様々なサーヴァントと共に戦える、ということにあるのだと思うのだけれど、異様に渋く、かつ期間限定のサーヴァントが多数実装されたガチャによって、プレイの内実はプレイヤーによってかなり多様である(ようにTwitterみてると感じられる)点も、魅力のひとつであるように思う。これがある程度ゆるいガチャだったら、プレイスタイルはある程度画一化されていたのではないかという気がする(無課金で運がないと縛ってないのに低レア縛りになったりしそうですが)。

 なので、ここで一種の思い出として、人理修復までのプレイ履歴を書いとこうと思います。

 人理修復時点(ほんとはそのちょっとあと)の僕のカルデアの陣容はこんな感じでした。

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 チュートリアルで最初に引き当てたのはアーチャー・エミヤ。そのあとジークフリートを引いてしばらく高レアサーヴァントを引けなかったんですが、アガルタピックアップでドレイク船長を引く。このころ丁度3章クリア直後で、タイミング的には非常によかったです。

 その後、2周年記念の福袋で源頼光さんを引く。引いた直後は知らなかったんですが、これはっきりいって超大当たりで、5章以降はもう頼光さんにおんぶにだっこ状態で進めました。その後の章ごとピックアップでまさかのジャンヌ・ダルクとホームズ二枚抜きで、ドレイク・頼光・ジャンヌの三人が僕の人理修復のMVPでした。あと7章を進めているあたりでマーリン引いてからはもうだいぶゲーム性が変わってビビった。

 

というわけで、2部もかなり楽しみです。ようやくリアルタイムで追っていけるので。

 

 

Fate/Grand Order material IV【書籍】

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Fate/Grand Order-turas realta-(1) (講談社コミックス)

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*1:このシステムを逆手にとって、こちらが「力を貸す」というふうに反転させたのが「英霊剣豪七番勝負」だったのだと思う。しかしそれはあまりシステム上はうまくいっているようには思えなくて、もうちょい武蔵ちゃんに下駄はかせてあげないといけなかったんではと強く思う。