宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2018年2月に読んだ本と近況

疾風怒濤。

先月のはこちら。

2018年1月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

 印象に残った本

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

 

  1冊選ぶなら円城塔Self-Reference ENGINE』。子曰くThis is not a novel.This is not a short story collection.This is Self-Reference ENGINE.

読んだ本のまとめ

2018年2月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:3691ページ
ナイス数:109ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly

 

論より詭弁 反論理的思考のすすめ (光文社新書)

論より詭弁 反論理的思考のすすめ (光文社新書)

 

 ■論より詭弁 反論理的思考のすすめ (光文社新書)
「要するに、自分たちに反対する意見のみが、詭弁と呼ばれる資格をもっているということだ。」p.106
 詭弁と呼ばれ蔑まれる一種のレトリックは、言語使用に内在するものなのだということを実例を挙げつつ論じる。論理的に考え発話するのは論理的に考えることが理にかなっている時だけでいいのだ、というような鷹揚な姿勢がよい。詭弁で世界と戦いましょう。
読了日:02月01日 著者:香西 秀信
https://bookmeter.com/books/497790

 

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

 

 ■村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝
 関東大震災の折、大杉栄とともに殺害された伊藤野枝の伝記。「わがまま」に自分のやりたいことをやり続けた伊藤の人生は破天荒としかいいようがないのだが、その生を肯定し続けるポップな文体でするする読ませる。伊藤の破天荒さによって、それを破天荒と感受してしまう私たちのなかにいかに近代的な価値が内面化されているのか、その拘束の強靭さを照らし出す。
読了日:02月03日 著者:栗原 康
https://bookmeter.com/books/10671825

 

1990年代論 (河出ブックス)

1990年代論 (河出ブックス)

 

 ■1990年代論 (河出ブックス)
 玉石混交。扱う分野は多岐にわたり、90年代に何が起こったのかを多面的・複眼的に眺めることができる。そのぶん、それぞれの分量はそれほど多くなく、消化不良感もあるのだけれど。だらしない自分語りを披露するだけの論考が散見され、よくこれを載せたなという感じ。
読了日:02月03日 著者:大澤聡
https://bookmeter.com/books/12141157

 

国民国家と戦争 挫折の日本近代史 (角川選書)

国民国家と戦争 挫折の日本近代史 (角川選書)

 

 ■国民国家と戦争 挫折の日本近代史 (角川選書)
 明治維新から敗戦に至るまでの日本の近現代史を、国民国家を一つの軸にして語る。いかにしてその時々の国家が「国民」なるものを作り上げようとしていったのか、という問いに貫かれているわけだが、おそらく90年代頃の国民国家論の流行以後、それは近現代史の通史的歴史叙述のテーマであり続けたわけで、著者がこれまでにはこうした視点では書かれてこなかった、というのは通史の読み方の問題では?という気がする。
読了日:02月04日 著者:加藤 聖文
https://bookmeter.com/books/12390818

 

 ■動物化する世界の中で―全共闘以降の日本、ポストモダン以降の批評 (集英社新書)
 21世紀初頭に交わされた往復書簡。全体として、笠井が東の問題提起をはぐらかし続けているような印象で、迂回を経て結局回答しない、という感じですれ違い続けた結果、終盤ではきわめて険悪な雰囲気が漂い始める。最後の東の書簡には、その時点での東の自己のキャリアの総括みたいな趣があってここだけでも読んだ意味はあったかなという感じ。
読了日:02月10日 著者:東 浩紀,笠井 潔
https://bookmeter.com/books/3944

 

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)

 

 ■Self-Reference ENGINE (ハヤカワ文庫JA)
 私たちが時間と呼ぶものが、大きく相貌を変えた世界を舞台に語られる、無数の/ひとつの物語。一冊の本がひとつの世界になっている(それは世界すべてがこの本のなかに書き込まれていることを必ずしも意味しない)、書物が世界そのものとして完結しているような稀有な感覚を覚えた。
読了日:02月12日 著者:円城 塔
https://bookmeter.com/books/577678

 

 ■人はみな妄想する -ジャック・ラカンと鑑別診断の思想-
 精神病と神経症との鑑別診断を軸に、ラカンの思想の変遷をたどる。ラカンについて扱った本としては際立って明晰な文体で書かれているのだが、だからといっておれがなんとなくでもわかったかというと別問題なんだよな。後期ラカンの思想をドゥルーズ=ガタリの批判を踏まえたものとして読み直す、みたいな姿勢がおもしろげだった。
読了日:02月13日 著者:松本卓也
https://bookmeter.com/books/9691538

 

オブ・ザ・ベースボール (文春文庫)

オブ・ザ・ベースボール (文春文庫)

 

 ■オブ・ザ・ベースボール (文春文庫)
 一年に一度、空から落下してくる人間をバットで打ち返す仕事に就く男の物語である表題作と、謎の作家と作品を主題に無数の引用の織物が出現する「つぎの著者につづく」を所収。表題作については多少冗長さを感じて、もう少し刈り込んで『Self-Reference Engine』のパーツくらいの長さだったらより好みだったかも。「つぎの著者につづく」は博覧強記ぶりの披露の仕方のクールさと余裕に腹が立ってくるのですばらしい。
読了日:02月13日 著者:円城 塔
https://bookmeter.com/books/4701571

 

 ■語る歴史,聞く歴史――オーラル・ヒストリーの現場から (岩波新書)
 政治家への聞き書き民俗学、オーラル・ヒストリーの実践などを「語る歴史・聞く歴史」と概括し、明治期から1980年代に至るまでのその歩みを辿る。おそらく「オーラル・ヒストリー」についての新書は、政治家へのインタビューなどを取り上げた御厨貴のものがあるだけだったと思うので、本書が社会史研究なんかの戦後歴史学の大きな流れを含み込みつつ、オーラル・ヒストリーの実践の幅を広げるような研究史を一般向けに語ったことは大きな意味があるのがなあと思う。
読了日:02月19日 著者:大門 正克
https://bookmeter.com/books/12518073

 

マンガの力?成熟する戦後マンガ

マンガの力?成熟する戦後マンガ

 

 

■マンガの力 成熟する戦後マンガ
 手塚治虫永井豪藤子・F・不二雄などなど、今や古典となったマンガを論じたマンガ批評を中心に所収。手塚と対比した時の梶原一騎原作マンガの身体性、水木しげるにおける風景描写の自立性等々、戦後マンガの歴史的文脈について勉強させていただきました。
読了日:02月21日 著者:夏目 房之介
https://bookmeter.com/books/28488

 

義経伝説と為朝伝説――日本史の北と南 (岩波新書)

義経伝説と為朝伝説――日本史の北と南 (岩波新書)

 

 ■義経伝説と為朝伝説――日本史の北と南 (岩波新書)
 それぞれ蝦夷琉球に逃げ延びたという伝説が流布していた、源義経源為朝。本書はその伝説の形成過程を辿っていくことで、日本列島に住む人々がその周縁をどのように捉えていたのかを考察してゆく。義経=ジンギスカンという偽史が明治期以降に広まっていたのは知っていたが、その大元の着想がシーボルトにある、というのは初めて知りました。
読了日:02月22日 著者:原田 信男
https://bookmeter.com/books/12518828

 

発掘狂騒史: 「岩宿」から「神の手」まで (新潮文庫)

発掘狂騒史: 「岩宿」から「神の手」まで (新潮文庫)

 

 ■発掘狂騒史: 「岩宿」から「神の手」まで (新潮文庫)
 相沢忠洋による岩宿の発見から、藤村新一による旧石器捏造事件までを、考古学界の学閥争いを軸に辿る。明治大の杉原荘介と東北大の芹沢長介との確執、考古学界のアマチュアリズムなどが捏造の下地を作っていく様子は読ませる。見てきたかのように語る所謂ニュージャーナリズム的語り口や、先史時代の研究を「神の領域」と形容してしまう言語感覚なんかは結構うへえとなったのだけど面白く読みました。
読了日:02月27日 著者:上原 善広
https://bookmeter.com/books/11453977

 

これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得

これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得

 

 ■これからのエリック・ホッファーのために: 在野研究者の生と心得
 在野の研究者を列伝形式で紹介し、その生き方からこれからの在野研究者の在り方のヒントを摘出する。一人一人の評伝はコンパクトでさらっと読めて、なおかつ取り上げる際の視点がキャッチー、かつ文体も軽妙で楽しく読んだ。
読了日:02月28日 著者:荒木 優太
https://bookmeter.com/books/10406906



近況

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2月はばたばたしてたんですが3月はちょっとは落ち着きそうなので、やっていきたいです、はい。

来月の。

 

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