宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2019年2月に読んだ本と近況

元気です。

先月の。

2019年1月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

 印象に残った本

知性のために―新しい思考とそのかたち

知性のために―新しい思考とそのかたち

 

  蓮実重彦『知性のために』、エモでした。

読んだ本のまとめ

2019年2月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2502ページ
ナイス数:88ナイス

 

 

悪霊(下) (新潮文庫)

悪霊(下) (新潮文庫)

 

 ■悪霊(下) (新潮文庫)
 山師に扇動された革命運動が街に混乱を呼び込むが、それは醜悪な内輪揉めに終わり、五人組は各々哀れな末路を迎える。強烈な印象を残す個は、それぞれ死を選び取るが、悪霊は悪人に乗り移って自ら死を選んだりはせず、おそらくロシアの大地を未だ徘徊し続ける。明らかに登場人物にはある役が割り当てられているのだが、にもかかわらず単純な図式化を越え出ていく力が横溢する、すげえ小説だなと思います。
読了日:02月04日 著者:ドストエフスキー
https://bookmeter.com/books/580316

 

『悪霊』神になりたかった男 (理想の教室)

『悪霊』神になりたかった男 (理想の教室)

 

 ■『悪霊』神になりたかった男 (理想の教室)
 著者が『カラマーゾフの兄弟』新訳を世に問う前に行った講義を収める。語られるのは『悪霊』論というよりは、「スタヴローギンの告白」論で、自死を選んだ少女にマゾヒズムの快楽を見る見立てなどの読解は善かれ悪しかれ大喜利めいていて、著者の資質は翻訳者や研究者というよりも批評家なのではという感じを受けた。
読了日:02月05日 著者:亀山 郁夫
https://bookmeter.com/books/448809

 

罪と罰 1 (光文社古典新訳文庫)

罪と罰 1 (光文社古典新訳文庫)

 

 ■罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)
 悪辣な質屋の婆さんを殺害することは正当化しうるのか?殺人の後に彼を襲う罰とは何か?そのあまりに有名すぎる粗筋など知っていようがいまいが、150年前のペテルブルクの貧乏青年に我々を憑依させてしまう圧倒的な語りの力。ここで書かれているのはまさにおれのことだ!と思わしめる恐るべき詐術は、この新訳でも健在です。
読了日:02月08日 著者:フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー
https://bookmeter.com/books/570910

 

反原発の思想史―冷戦からフクシマへ (筑摩選書)

反原発の思想史―冷戦からフクシマへ (筑摩選書)

 

 ■反原発の思想史―冷戦からフクシマへ (筑摩選書)
 東日本大震災後に急速に耳目を集めるようになった反原発運動。その歴史的な始点を1968年に起き、時代を経るごとに(誤読された)毛沢東主義や、中沢新一らのニューエイジ、宝島社周辺のサブカルチャーなどとの絡みのなかでその思想が形作られていく様を描き出す。宮沢賢治の神話化と見田宗介ニューエイジへの接近の同時代性みたいな本筋と関係ないディテールに興味が惹かれました。
読了日:02月11日 著者:スガ 秀実
https://bookmeter.com/books/4607346

 

知性のために―新しい思考とそのかたち

知性のために―新しい思考とそのかたち

 

 ■知性のために―新しい思考とそのかたち
 蓮實重彦の東大総長時代の式辞を集めたもの。知性を用いて迂回せよ!という要請を、まさにその迂回することをもってパフォーマティブに語る語り口は流石やなあと思います。自身の経歴を「放蕩息子の帰還」と自嘲するあたりに、『凡庸な芸術家の肖像』は蓮實重彦その人自身を語る言葉でもあったのかと改めて感じたりしました。
読了日:02月11日 著者:蓮實 重彦
https://bookmeter.com/books/412638

 

フランス現代史 (岩波新書)

フランス現代史 (岩波新書)

 

 ■フランス現代史 (岩波新書)
 戦後から現在にいたる現代のフランス政治史の概説。分裂と統合の中で揺れ動くさまを摘出しようとする点に本書の視座は置かれていて、「上か、下か」、「右か、左か」、「内か、外か」、そして「親欧州か、反欧州か」という対立がそれぞれの時代で先鋭化し、90年代にいたってそれらが輻輳的にからみあう状況が生じた、というのが大きな見立てだろうか。
読了日:02月19日 著者:小田中 直樹
https://bookmeter.com/books/13354394

 

妖精作戦

妖精作戦

 

 ■妖精作戦 (創元SF文庫) (創元SF文庫)
 偶然知り合った女子転校生。なぜかさらわれた彼女を追って、高校生たちと探偵一人が世界を駆け巡る。ノンストップで状況が進行し続け、息つく暇なく世界の果てまでたどり着いてしまうスピード感に驚く。キャラクターの魅力というよりはその状況の進行によってぐいぐい読ませるという感じで、なんとなく今のキャラクター小説とは文法が違うような感触がありました。
読了日:02月20日 著者:笹本 祐一
https://bookmeter.com/books/4011902


読書メーター
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近況

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来月の。

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