個人誌を出稿したのでえらい。
先月の。
印象に残った本
一冊選ぶなら吉見俊哉『万博と戦後日本』。本書のアクチュアリティは皮肉にも増していると感じます。
読んだ本のまとめ
2019年11月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:3152ページ
ナイス数:74ナイス
https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly
■帰ってきた映画狂人
予備校の生徒向け講演を文字起こしした「映画からの解放」は、蓮實重彦の手口みたいなものをかなり直裁に語っているなと感じた。『監督小津安二郎』も『夏目漱石論』も問題意識はそういうことだろうと思うので。
読了日:11月05日 著者:蓮實 重彦
https://bookmeter.com/books/570920
■新・日本の階級社会 (講談社現代新書)
以前より階級社会という視座から日本社会論を展開している著者だが、本書のおもしろみは「アンダークラス」という概念を新たに導入した点にあると思う。階級ごとの意識の傾向を社会調査から探る手法は手堅いなあと思います。
読了日:11月05日 著者:橋本 健二
https://bookmeter.com/books/12544494
■地方の王国 (講談社学術文庫)
80年代中葉の地方の国政選挙や首長選を訪ねたルポルタージュ。田中角栄の影は長く伸びていたのだなという認識を深くするとともに、開発によって「進歩」するのだ、というイメージがまさに破産しようとする時代の証言としておもしろく読みました。
読了日:11月06日 著者:高畠 通敏
https://bookmeter.com/books/6590738
■ピストルズ 上 (講談社文庫)
山形県東根市神町。1200年にわたって継承されてきた秘術をめぐる家族の呪い。『シンセミア』の記憶がぼんやりしているのがもどかしいが、そんなことは関係なくグイグイ読みました。
読了日:11月08日 著者:阿部 和重
https://bookmeter.com/books/6813214
■ピストルズ 下 (講談社文庫)
現代に生きる魔術師一家の血の呪いをめぐる物語に、『グランドフィナーレ』の登場人物たちが合流してクライマックスへ。おもに二人の語り手によって進行するこの物語は多視点のピカレスク『シンセミア』よりは入り組んでいないが、虚実入り混じる不可思議な時空間の吸引力は半端ではなかったです。
読了日:11月09日 著者:阿部 和重
https://bookmeter.com/books/6813215
■オーガ(ニ)ズム
神町トリロジーの最終作は、作中人物である作家阿部和重と、CIA諜報員の中年男性とのロードムービー仕立て。属国性がこれでもかと阿部和重に託される様が奇妙な愉快さを醸し出す、三部作の中でも際立ってゆるくて楽しい小説でした。
読了日:11月26日 著者:阿部 和重
https://bookmeter.com/books/14302665
■セカイからもっと近くに (現実から切り離された文学の諸問題) (キー・ライブラリー)
セカイ系的な困難の乗り越えの可能性を示した作家として、新井素子、法月綸太郎、押井守、小松左京の仕事を読む。家族の問題が前景化しているあたりに、東がこの後に世に問う『観光客の哲学』への足がかりとして書かれたのだなという感を抱いたが、しかし見立てのおもしろさと文体の簡潔簡明さはとにかく驚くべきものだと思います。
読了日:11月30日 著者:東 浩紀
https://bookmeter.com/books/7715171
■万博と戦後日本 (講談社学術文庫)
『万博幻想』の文庫化。戦後日本における万博を取り上げた本書の叙述は、大阪万博時点では素朴に信じられていた開発の論理が、次第にその吸引力を失っていく過程の歴史として読むことができる。いま再び、グロテスクな仕方で開発の夢と神話とが反復されようとするいまにあって、本書のアクチュアリティはさらに強まっていると思う。それは無論、我々にとっても本書にとっても不幸なことではあるのだけれど。
読了日:11月30日 著者:吉見 俊哉
https://bookmeter.com/books/3366186
来月の。