宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2021年2月に読んだ本と近況

寒い時代ですわね。

先月の。

2021年1月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

 印象に残った本

押井守の映画50年50本 (立東舎)

押井守の映画50年50本 (立東舎)

 

  1冊選ぶならこれ。押井守熱が高まっています、『ぶらどらぶ』みてないけれども...。

読んだ本のまとめ

2021年2月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:3923ページ
ナイス数:134ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly

 

押井守監督が語る映画で学ぶ現代史

押井守監督が語る映画で学ぶ現代史

 

 ■押井守監督が語る映画で学ぶ現代史
 映画は「時代の不安」のタイムカプセルだ!をスローガンに、自身の視聴経験、制作経験も交えつつ、戦後の映画を辿っていく。『世界大戦争』から『仁義なき戦い』、角川映画、『ウィンターソルジャー』などが主に語りの俎上に上る。とりわけ実写版パトレイバーの制作にあたっての方法論なんかは興味深く読みました。西尾鉄也氏のイラストもとってもよいですわね。

読了日:02月02日 著者:押井守,野田真外
https://bookmeter.com/books/16956426

 

 ■全体主義の起原 2 ――帝国主義
 国家のなかの「余計者」たちによって駆動した帝国主義が、文明たる「我々」と未開たる野蛮人たち、という構図を鮮明にする。「我々」とやつらを決定的に分かつ根拠としての人種。そして国民国家のなかで「我々」ではないとみなされた者たちは人権の保証の埒外に置かれてゆく。こういう要約でいいのか?ぜんぜんよくない気がするが…。
 読了日:02月05日 著者:ハナ・アーレント,大島 通義,大島 かおり,ハンナ アーレント,Hannah Arendthttps://bookmeter.com/books/12751

 

 ■大学はもう死んでいる? トップユニバーシティーからの問題提起 (集英社新書)
 オックスフォードと東大でそれぞれ教授を務める社会学者が、日本の大学と海外の大学とを比較して、現状と課題とを浮き彫りにしてゆく対談。それぞれの著書で書かれていることの繰り返しも少なくないが、オックスフォードの構内の様子や卒業試験の重み、また副学長時代に寄付金集めのために相当苦労したという吉見の挿話など印象に残りました。
読了日:02月11日 著者:苅谷 剛彦,吉見 俊哉
https://bookmeter.com/books/15003624

 

みんなのコミュニズム

みんなのコミュニズム

 

 ■みんなのコミュニズム
 コミュニズムの発展の方向の多様性と、そのそれぞれの限界を語る寓話と、そのコメンタリー的なエピローグ、著者インタビューからなる。コミュニズムを資本主義への対抗思想と捉え、その批判の着眼点からコミュニズムを分類していく手際はなるほどなと思いました。挿絵がキュートでグッドです。
読了日:02月11日 著者:ビニ アダムザック
https://bookmeter.com/books/15097989

 

 ■歴史を変えた100冊の本
 なるほど、西欧中心主義を隠そうともしないチョイスが潔い。『易経』や『カーマ・スートラ』、『チベット死者の書』が入っているのは明らかにヒッピーカルチャーの源流としての評価でしょう。見開きで、本文は書影、もう半分で簡単な解説のスタイルで一冊ずつ取り上げていく。本のつくりはリッチだが…。
読了日:02月11日 著者:スコット・クリスチャンソン,コリン・ソルター
https://bookmeter.com/books/13754620

 

知的創造の条件:AI的思考を超えるヒント (筑摩選書)

知的創造の条件:AI的思考を超えるヒント (筑摩選書)

  • 作者:吉見 俊哉
  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 ■知的創造の条件:AI的思考を超えるヒント (筑摩選書)
 研究のハウツー的な研究入門と、現代の知の環境をめぐるメディア論の二つを大きな柱にした聞き書き。インタビューが元になっているが論の構成はかっちりしており、聞き書きという感じはかなり薄い。様々な他者ーーそれは学友であったり教師であったり、書物であったり過去の自分自身であったりするーーとの対話こそが知的創造の条件である、というのが大きな構図で、その対話をいかに促進するか、というところに本書の発想はあるのだろうと思う。
読了日:02月12日 著者:吉見 俊哉
https://bookmeter.com/books/15695234

 

板垣退助-自由民権指導者の実像 (中公新書)

板垣退助-自由民権指導者の実像 (中公新書)

  • 作者:中元 崇智
  • 発売日: 2020/11/20
  • メディア: 新書
 

 ■板垣退助-自由民権指導者の実像 (中公新書)
 板垣退助の伝記は、その知名度に反して意外なほど書かれていないようで、本書は長く参照されることになるのだろうか。「四民平等」を自身の出世のために巧みに利用したり、変化する状況のなかでその都度変容することを厭わないある種の身軽さ。それが幕末から明治にかけての有為転変の社会でサヴァイヴする方略だったのだろうなと思う。
読了日:02月17日 著者:中元 崇智
https://bookmeter.com/books/16877863

 

2・5次元クロニクル2017-2020 ――合わせ鏡のプラネタリウム (単行本)

2・5次元クロニクル2017-2020 ――合わせ鏡のプラネタリウム (単行本)

  • 作者:上田 麻由子
  • 発売日: 2020/12/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 ■2・5次元クロニクル2017-2020 ――合わせ鏡のプラネタリウム (単行本)
 流し読み。わたくし自身は2.5次元に接したことはないのだが、俳優の身体を得てキャラクターが受肉することのおもしろみ、キャストまでもキャラ化して、ある種のメタ物語が演じられる(というふうに舞台を見ている)というふうなまなざしのありようなどはおもしろく読んだ。テニミュは知ってたけど『ハイキュー』もこうして長く続いてるのですね。
読了日:02月17日 著者:上田 麻由子
https://bookmeter.com/books/17128757

 

 ■悪と全体主義ハンナ・アーレントから考える (NHK出版新書 549)
 『全体主義の起原』と『イエルサレムアイヒマン』のイントロ本。いままさに『全体主義の起原』を読み進めているところで、なかなか全体の構図というか議論の勘所のようなものが掴みきれてないと感じていたので、本書は大変助けになりました。議論の焦点として国民国家の発展(と衰退)があり、その統合の外に置かれた者たちが全体主義体制を導いてく…というのを前提にして、同書の細かい議論を追っていくような読み方が適当なのだろうか。歴史的文脈については本書で詳しくフォローがあり、こちらも大変親切。
読了日:02月17日 著者:仲正 昌樹
https://bookmeter.com/books/12805136

 

押井守の映画50年50本 (立東舎)

押井守の映画50年50本 (立東舎)

 

 ■押井守の映画50年50本 (立東舎)
 1968年から2017年まで、一年一作品をセレクトし、映画にまつわる記憶を語る。ベスト50作品というチョイスではなく、押井自身の語りを喚起するためにチョイスされた50本という感じで、自身が鑑賞した時の思い出に加え、他作品を参照しつつその映画の美点、欠点をしていく語りはすらすら読ませる。アクションと暴力はまったく異なるということ、サム・ペキンパー評などなるほどなと。

 以下で一部読めますね。

 読了日:02月20日 著者:押井 守
https://bookmeter.com/books/14579863

 

歴史がおわるまえに

歴史がおわるまえに

  • 作者:與那覇 潤
  • 発売日: 2019/09/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 ■歴史がおわるまえに
 主に、著者がうつを患い歴史学者を「廃業」する以前に行った対談、執筆した時評等を所収。時評的な文章は流石に賞味期限があやしいかなと思うが、縦横に思想家・学者を引用していく手つきはまさしく博覧強記。こうした精力的すぎるようにも感じられるアクションの反動みたいなものがあったのではないかと想像せざるを得ない感じもします、今となっては。
読了日:02月20日 著者:與那覇
https://bookmeter.com/books/14393371

 

現代思想の名著30 (ちくま新書 1259)

現代思想の名著30 (ちくま新書 1259)

  • 作者:仲正 昌樹
  • 発売日: 2017/06/06
  • メディア: 新書
 

 ■現代思想の名著30 (ちくま新書 1259)
 フーコードゥルーズデリダなどの所謂現代思想の著作を30セレクトし、それぞれを簡潔に紹介してゆく。本書の優れた点は、その紹介が単体で完結していながら前後の著作と密接に連関してもいて、セクションごとに思想史的な見取り図がぼんやり浮かび上がるような構成になっている点だと感じる。著作についての解説も、背景知識などを親切に提示していて勉強になりました。
読了日:02月21日 著者:仲正 昌樹
https://bookmeter.com/books/11819992

 

ファシズムの教室: なぜ集団は暴走するのか
 

 ■ファシズムの教室:なぜ集団は暴走するのか
 人はなぜファシズムに熱狂するのか。映画『ウェイブ』などに触発され、大学における体験授業を実践した著者が、その意図や効能などを簡潔に記す。責任をアウトソーシングすることで躊躇なく無法に振る舞えるという「支配されることの自由」。この実践についてなされた批判へのアンサーであり、またナチズム研究へのイントロ的なコラムも配されており、啓蒙的な本やなあと思いました。
読了日:02月24日 著者:田野 大輔
https://bookmeter.com/books/15438554

 

統一教会と私 (論創ノンフィクション 006)

統一教会と私 (論創ノンフィクション 006)

  • 作者:仲正昌樹
  • 発売日: 2020/11/30
  • メディア: 単行本
 

 ■統一教会と私 (論創ノンフィクション 006)
 現代思想分野で啓発的な著作を多数持つ著者が、80年代初頭から11年間にわたって統一教会の一員であった過去を語る。東大、あるいは新左翼に占拠された寮での居場所のなさを解消してくれたのが統一教会であったという。生活のディテールは普段知る由もない新興宗教の信徒の暮らしぶりが知れて興味深い。おそらく、地下鉄サリン事件を経た現在では新興宗教への目線は著者が大学に入った頃とは大きく変わっているだろうが、それでも「ありえたかもしれない上京者の人生」の物語として、他人事とは思えないと感じる。

読了日:02月28日 著者:仲正昌樹
https://bookmeter.com/books/16957189


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近況

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 以下、一生懸命かきました。

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 来月の。

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