宇宙、日本、練馬

映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

2021年3月に読んだ本と近況

やっていきたいものです。

先月の。

2021年2月に読んだ本と近況 - 宇宙、日本、練馬

 印象に残った本

Iの悲劇 (文春e-book)

Iの悲劇 (文春e-book)

 

  1冊選ぶなら米澤穂信『Iの悲劇』。

amberfeb.hatenablog.com

 

読んだ本のまとめ

2021年3月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3077ページ
ナイス数:115ナイス

https://bookmeter.com/users/418251/summary/monthly

 

 ■全体主義の起原 3 ――全体主義
 ナチスドイツを念頭に考察を進めてきた1巻・2巻までとは打って変わって、この最終巻ではソ連スターリン体制も議論の俎上にのせる。そのことで難解な印象はより強まっているのだが、全体主義支配にとっての理想的な状況としての強制収容所ーー人間の自発性が完全に奪われる時空間ーーという見立てはなるほどなと。強制収容所をめぐる議論の厚みに、時代の経験をより強く感じる。
読了日:03月13日 著者:ハナ・アーレント,大久保 和郎,大島 かおり,ハンナ アーレント,Hannah Arendt
https://bookmeter.com/books/12748

 

 ■フランクリン・ローズヴェルト-大恐慌と大戦に挑んだ指導者 (中公新書 2626)
 この伝記の大きな軸は副題にあるようにニューディール第二次世界大戦で、家族関係のこじれなどの挿話も挟みつつコンパクトによくまとまっていて啓発的です。小児麻痺への罹患によって民主党に逆風が吹いていた時期に政治の表舞台からフェードアウトしていたことが運命を変えたというのがおもしろい。ニューディール政策など、アドホックな対応は一貫性を欠いたものと評する一方、むしろそれが最大限ポジティブにはたらきもしたのだなと感じる。
読了日:03月14日 著者:佐藤 千登勢
https://bookmeter.com/books/17207462

 

らせん状想像力: 平成デモクラシー文学論

らせん状想像力: 平成デモクラシー文学論

 

 ■らせん状想像力: 平成デモクラシー文学論
 平成文学を大正文学のある種の反復と捉え、その補助線からみた平成文学の特質を論じる。編年的ではなくテーマごとに章立てされ、村上春樹から舞城王太郎まで議論の俎上にのせる語りで「文学」的なるものを彫琢していく。同時代のサブカルチャーまで視野に入れて論じる手つきは東浩紀の衣鉢を継ぐような趣もあり。おもしろく読みました。
読了日:03月16日 著者:福嶋 亮大
https://bookmeter.com/books/16552206

 

 ■断言2 あなたを変える本・世界を変える本 新教養主義書評集成 サイエンス・テクノロジー編 (ele-king books)
 雑誌およびウェブ上に発表した書評をまとめたもの。わたくしはおそらくほとんど既に読んでいるのだけど、こうして分野ごとにまとめられていると読書ガイドとして非常に啓蒙的でよいですわね。とりわけ、建築・都市計画関係は著者のキャリアの話なんかとも密接に絡むのでおもしろく読みました。
読了日:03月21日 著者:山形浩生
https://bookmeter.com/books/16973051

 

 ■みみずくは黄昏に飛びたつ
 『騎士団長殺し』刊行前後に行われたインタビューを所収。村上のテクストにおいて、しばしば女性がある種の儀式の道具的にしか立ち現れてなくない?みたいな質問が全体のハイライトか。川上が指摘する、近年の作品の語り手になっている30代男性はやけに目が肥えてないか、というのも頷くところしきり。しかしどこまでマジで答えてるのかね、というのはやっぱり思うわよね。
読了日:03月21日 著者:川上 未映子,村上 春樹
https://bookmeter.com/books/11756410

 

最新東京・首都圏未来地図―超拡大版 (Seibido mook)

最新東京・首都圏未来地図―超拡大版 (Seibido mook)

  • 発売日: 2005/06/01
  • メディア: ムック
 

 ■最新東京・首都圏未来地図―超拡大版 (Seibido mook)
 山形浩生が紹介していたので手に取ってみたんですが、刊行後15年が経過した現在からながめると、東京の変貌ぶりに素朴に驚きます。つくばエクスプレス開業前夜。そしてスカイツリーの名称すらまだ決まっていなかったのかと。都市のメタモルフォーゼの恐るべき速度!
読了日:03月21日 著者:成美堂出版編集部
https://bookmeter.com/books/643876

 

Iの悲劇 (文春e-book)

Iの悲劇 (文春e-book)

 

 ■Iの悲劇
 タイトルはクイーンへの目配せか。決して探偵になり得ない公僕の奮闘は、『満願』とはちがう仕方で探偵なきミステリを書こうとする試みでもあるのだろう。結部で明らかになる全体の絵はお見事で、『氷菓』以来、著者のテクストに書き込まれてきた地理上の社会的な勾配の問題系への真摯なアンサーとして読んでもよいのだろうと思います。
読了日:03月27日 著者:米澤 穂信
https://bookmeter.com/books/14264318

 

マルドゥック・アノニマス6 (ハヤカワ文庫JA)
 

 ■マルドゥック・アノニマス6 (ハヤカワ文庫JA)
 ウフコック奪還編にひとまず区切り。自身がシザーズ支配下にあることを自覚したハンターの行動が、イースターズ・オフィスにいかなる影響を与えるのか。作者自身の意図を超えて展開していると思しき三つ巴の盤面は物語の進展にともなって極めて複雑になっていると感じるが、それを掌握してみせる腕力こそ冲方丁の武器でしょう。
読了日:03月28日 著者:冲方
https://bookmeter.com/books/17763546

 

昭和モダン建築巡礼・完全版1945-64

昭和モダン建築巡礼・完全版1945-64

 

 ■昭和モダン建築巡礼・完全版1945-64
 本書が取り上げるのは1945年から1964年までで、「復興期」、「葛藤期」、「飛躍期」と三つの時期に区分している。印象に残るのは自治体の庁舎など公の施設が結構たくさん取り上げられていること。早くに本書を知っていれば、旅行先の楽しみが増えたのになあと思う。この時期の建築もいつまで残ってるかわからんし、残ってるうちに訪ねてみたいものです。
読了日:03月28日 著者:磯達雄,宮沢洋
https://bookmeter.com/books/14465013

 

昭和モダン建築巡礼・完全版1965-75

昭和モダン建築巡礼・完全版1965-75

 

 ■昭和モダン建築巡礼・完全版1965-75
 本書が扱うのは1965年から75年までの10年間で、大阪万博メタボリズムが強く存在感を放つが、扱われる建築は多彩。発展期から絶頂期を経て終焉期へ、という3区分。霞ヶ関ビルディングって建ったの半世紀前かよ、というのが素朴に驚きました。
読了日:03月28日 著者:磯達雄,宮沢洋
https://bookmeter.com/books/14806383


読書メーター
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近況

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