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確信的エキゾチックジャパン――『唐人街探偵 東京MISSION』感想

【映画パンフレット】唐人街探偵 東京MISSION 監督 チェン・スーチェン 出演 ワン・バオチャン、リウ・ハオラン、妻夫木聡、トニー・ジャー、長澤まさみ、染谷将太

 『唐人街探偵 東京MISSION』をみました。たいへん楽しくてよかったです。以下感想。

  世界探偵ランキング2位に君臨する、青年名探偵チン・フォン。その叔父でいかにも軽薄な曲者といった風情の中年タン・レン。日本人名探偵野田昊によって日本に招かれた彼らは、ヤクザがらみの密室殺人と対決する。

 凸凹コンビの探偵を主役に据えたシリーズの3作目。冒頭で簡単な世界観の説明がはいる親切設計。スマホのアプリによって世界の探偵がランク付けされているという、清涼院流水のJDCシリーズばりの設定に笑うが、ディクスン・カーなども明示的に引用されていて存外本格推理風のガワをきちんと整えようという気概はみられる。

 準主役の野田に配された妻夫木聡は八面六臂の大活躍!ウィンクするたび効果音がなり、やたらけばけばしいスーツをまとい、あまつさえペガサス幻想をバックに黄金聖闘士のコスプレまで披露するサービスぶり。『ワイルドスピード TOKYO DRIFT』の仇はとったわね!

 妻夫木の他、やくざの親分役の三浦友和、被害者のやくざの秘書役の長澤まさみ、日本警察のエース浅野忠信などなど、見知った顔がいかにもそれらしき役に配されているという気の利きよう。長澤まさみはやや硬い感じもし、浅野忠信も気合がから回ってない?みたいなシーンはあるものの、それも含めてこの映画の味でしょう。

 日本各地でロケをしていたようで、首都圏外郭放水路なんかが登場するあたり、作り手は明らかに日本のフィクションを知悉しているだろうことが推察される。スモウレスラーが範馬勇一郎ばりにつかんだ人体を振り回したりとか、銭湯になぜかガタイのいい墨の入ったおじさんたちがたむろしていたり、病院の構造があきらかにおかしかったり、謎ジャパン描写ももちろんあるんだけど、それはたんに想像でつくって変なジャパンになってるのじゃなく、「あえて」やってるのだろうな、と信頼していいと思う。

 とにかく、これをいちばん楽しめるのは、日本語圏の地理とカルチャーに親しむ我々であることは明白ですぜ。みなさんみましょうね。ちびまる子ちゃんのコスプレをするトニー・ジャーなんて、今後絶対見られないわよ。