『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』をみました。デヴィッド・エアー版と紛らわしいのは理解しますが、この邦題は...。以下、感想。
囚われた凶悪犯どもを使い捨ての決死隊、スーサイド・スクワッドとして、汚れ仕事に投入するアメリカ合衆国。クーデターで新政権が発足した某国へと送り込まれたならずものたちは、宇宙の脅威と出会う。
DCエクステンデッド・ユニバース作品にして、マーベル・シネマティック・ユニバースでその個性を発揮したジェームズ・ガン監督作品。デヴィッド・エアー版と比べると、映画全体のトーンは軽妙で、ゴア表現も全開で露悪的。イドリス・エルバ演じるブラッド・スポートはシリアスはたたずまいだが、ふとコミカルな展開に巻き込まれたりするし、ブラッド・スポートと同じく殺人のプロの雰囲気をまとったピースメイカーは筋肉達磨のサイコ男、おまけに謎のサメ人間も同行していて、明らかに奇妙な画が断続的に映り続ける。その奇妙具合はクライマックスにヒトデ型の巨大宇宙生物が街を蹂躙しだすところで極点に達するわけだが、それまで変な絵面に対する耐性を鍛えられてきたおかげでそれでもマジなトーンは失われないという素晴らしさ。
そのようなコミカルなトーンで、しかし作劇を駆動する仕掛けは覇権国家であったアメリカ合衆国の不始末のしりぬぐいであり、それをめぐって悪党なりの矜持のようなものを露出させる展開は巧妙。
しかしそうしたシリアスさに体重を預け切らないバランス感覚がお見事。とにかく、マーゴット・ロビーにハーレイ・クインをキャスティングしたという点に、近年のDC映画の功績の一つがあることは疑いなく、彼女を中心に展開されるお祭りの騒々しさこそ、この映画の大きな魅力でしょう。その軽率さこそ、愛すべき悪党の条件なのである。