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萌えよやくざ——『孤狼の血 LEVEL2』感想

【映画パンフレット】 孤狼の血 LEVEL2 松坂桃李 鈴木亮平 村上虹郎 西野七瀬 早乙女太一 斎藤工

 『孤狼の血 LEVEL2』をみました。以下感想。

  平成初期、広島。伝説の刑事、大上の死から3年、大上の遺志をついだ若き刑事、日岡の暗躍で、広島はやくざの抗争は未然に防がれ、平穏な日々が続いていた。しかし、暴力にとりつかれた悪魔、上林が刑期を終え出所したことで、再び広島に血の雨が降る。

 『孤狼の血』の続編。前作同様、『仁義なき戦い』に代表される往年のやくざ映画へのオマージュを強く感じるが、はっきりいってごっこ遊びの域を出ていない縮小再生産にすぎない。それはやっぱり何より原作の瑕疵だろう。暴力性になにか安易な根拠や真意のようなものを用意せねばならない、という強迫的な感覚が、キャラクターを決定的に毀損している。

 大上を演じた役所広司にしても、大林を演じた鈴木亮平にしても、そうした陳腐な根拠などなしに、その暴力性それ自体を自足させることができる俳優だったはずだ。たとえば『広島死闘編』の千葉真一でも、『冷たい熱帯魚』のでんでんでも、白石和彌のフィルモグラフィでいえば『凶悪』のリリー・フランキーピエール瀧でもいいのだが、やはりある種の映画の魅力は根拠なき暴力性に説得されてしまう快なのだ。『孤狼の血』に決定的に欠けているのはその快だ。

 しかしそれでもなおこの映画がぎりぎり魅力的なのは、松坂桃李鈴木亮平の魅力の炸裂するある種の「萌え」映画だからだ。松坂桃李鈴木亮平がスクリーンに映っているとうれしい。徹頭徹尾そういう映画なのである。

 鈴木亮平に無様に蹂躙される寺島進吉田鋼太郎は、はっきりいってあまりにもやさしすぎるし、信じられないくらい無防備で失笑ものなのだが、これは萌え映画なので、彼らやドラマが鈴木亮平に奉仕するのは当然なのである。松坂と鈴木は、この血なまぐさい映画にあって、特権的に死なない身体を装備しているように思える。それは前作で役所広司が死によって萌えの極点に達したことと対照をなすが、この『LEVEL2』のほとんどゾンビと化した松坂と鈴木の決闘は、この映画をやくざ映画の文脈で眺めていた観客を嘲弄するために準備されたシークエンスでさえあるのではないか。次回作に必要なことは、松坂と組んだ時に適切に萌える男を配することだろう。