『シャン・チー/テン・リングスの伝説』をみました。以下、感想。
サンフランシスコでホテルの駐車場係をつとめる男、ショーン。悪友のケイティとともに楽しくぼんやりと無軌道な日々を過ごす彼だが、恐るべき秘密を抱えていた。千年以上暗躍を続けてきた秘密結社、テン・リングスの首魁。その息子こそショーン=シャン・チーであった。彼はその血の運命に誘われ、新たな冒険が始まる。
マーベル・シネマティック・ユニバースの25作目は、トニー・レオンをヴィラン役に迎え、ここ20年くらいの中国アクション映画の記憶をこれでもかと引用した娯楽作。香港流のカンフーアクションをハリウッドに持ち込んだ嚆矢といっていいだろう『マトリックス』の新作の公開を控えたいま、この映画が公開されることになんだか奇妙な縁を感じる。
チャン・イーモウ監督の『HERO』ばりに矢の雨が降り注ぐ冒頭にはじまり、『グリーン・デスティニー』風の竹林のなかで登場するのはまさかのミシェル・ヨー!カンフーと超人的アクションを組み合わせた外連味あふれるアクションは、チャウ・シンチー監督の『少林サッカー』や『カンフー・ハッスル』を想起させるし、過去の回想のトーンは『グランド・マスター』みたいだし、香港映画への愛着を隠そうともしないあたりはタランティーノ映画的ですらあるかもしれない。『マトリックス』のカンフーがいまみるとやや生硬な印象なのに対して(それはそれで『マトリックス』の味なんだけど)、この『シャン・チー』の自然さは、20年で俺たちはここまできたぜ、というハリウッドの勝利宣言なのかもしれない。
『ブラック・ウィドウ』に続いてまた家族の話かよ、というのはあるのだけど、この水準のほどほどにおもしろい娯楽映画が劇場でかかっている、というのはやっぱりうれしいですね。MCUが語るべき「大きな物語」って正直もうないんじゃないかという気もするのだけど、それでも、彼らの道行きがなにか大きな絵になってくれたらいいわね。