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世紀末から遠く離れて——アニメ『スプリガン』感想

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 アニメ映画版『スプリガン』をみたので感想。

 現代の人類をはるかにしのぐ超技術をもった古代文明。その遺産を守る組織、アーカムに属する凄腕エージェントは、財宝を守る妖精の名にちなんで、スプリガンとよばれる。スプリガンの一人、御神苗優は、トルコのアララト山中に眠るノアの箱舟をめぐる陰謀に巻き込まれてゆく。

 たかしげ宙原作、皆川亮二作画による漫画の劇場アニメ化。『AKIRA』などで原画をつとめた川崎博嗣の初監督作品。キャラクターデザインは江口寿史、設定には大友克洋もかかわるなど、スタッフをおかずにメシが食えるレベルの布陣。この映画が公開されたのは1998年。同年公開のアニメ映画には『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』や『パーフェクト・ブルー』などがあるが、デジタル作画移行前、セルアニメ末期の輝きは未だに色あせていないと感じる。

 この作品の魅力はなによりアクション作画で、江口によるキャラデザが未だ古びていないこともあいまって、もうそれだけでおつりがくるという感じがする。とりわけ市街地を縦横に飛び回り、最後は超遠方のカメラを刃物の投擲で撃墜する序盤のアクションシークエンスの見事さよ!銃撃でずたずたになるリアルな身体と、超高速で走り回る人間とが同居する奇妙なリアリティ感覚は独特の味がある。

 一方、超古代文明をめぐるお話については、まあある種の世紀末の流行だったのではないかと推察するが、それほど新味はない。子ども老人のサイキッカーみたいなキャラ造形はあからさまな『AKIRA』のオマージュとも思えるが、いいんだろうか。大友克洋本人が参加してるからいいんだろうけど...。

 しかしなんとなく感じるのは、日本列島におけるアニメ制作の環境でいちばんカネがかかるのはこういう映画なんだろうなという気もする。ある思想に奉仕するのでなく、ただ動いている快楽によって駆動するアニメ。この『スプリガン』は原作があるがゆえにそこまで振り切れていないという気もするが、大友克洋の仕事は『AKIRA』然り『スチームボーイ』然り、そうした作品こそを目指していたのかも、とも思う。個人的に、この『スプリガン』的な方向性の傑作は『カウボーイビバップ 天国の扉』から『ストレンヂア 無皇刃譚』へと延びるラインだと思うのだけど、どうもそのあとが続いていないあたり、コストパフォーマンスの問題が大きいのかなあと推察するのだけど。

 ともかく、世紀末の空気がパッケージされた娯楽映画として楽しくみました。

 

Netflix版はどうなるんでしょうね。