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軽薄さが恋しいぜ——『キングスマン:ファースト・エージェント』感想

ポスター/スチール写真 A4 パターン1 キングスマン ファースト・エージェント (写真に白枠あり)光沢プリント

 『キングスマン:ファースト・エージェント』をみました。以下感想。ネタバレが含まれます。

 20世紀初頭、ヨーロッパでは秘密結社による陰謀がうごめき、かつてない戦争が始まろうとしていた。平和主義者の英国人、オーランド・オックスフォード公は、陰謀を打破するため立ち上がる。

 マシュー・ヴォーン監督による『キングスマン』シリーズ3作目は、第一次世界大戦期を舞台に、諜報組織キングスマン誕生の挿話を語る。主演に名優レイフ・ファインズを迎え、前2作のような荒唐無稽な軽薄ぶりはやや退潮し、父と子を主題化したドラマが中心に据えられている。『キングスマン』1作目は「父を亡くした息子」のお話だったが、『ファースト・エージェント』はちょうどその裏返しのような構図になっている。

 「息子の死」をめぐる、第一次世界大戦塹壕戦のシーンは、サム・メンデス『1917』の記憶も新しいいまみると悲しいかな新味にかけ迫力も劣り、どうにもつくりものっぽさがぬぐえない。重苦しい雰囲気の漂うここらへんのシークエンスは、『キングスマン』にわたくしが期待するような軽薄さからかなり距離があり、まじめさは伝わるが違和感があったのは事実。

 ヴィルヘルム2世やジョージ5世など、歴史上の著名人たちが画面に登場するが、それらが戯画的で陳腐なコスプレにみえてしまうのもかなしい。21世紀につくられた歴史映画がいかに上品に画面をつくり、コスプレ感を丁寧に画面から排除していったのかを改めて思い知らされる。

 一方、そのコスプレ感が滅茶苦茶ポジティブに働いているのがグレゴリー・ラスプーチンで、このはったり全開の迫力といい、まさに円舞のような格闘戦といい、作中で随一の魅力を放っていただけに、中盤で退場してしまうのは残念。秘密結社の一構成員にすぎない立ち位置とはいえ、首魁も魅力に欠ける(なぜ軍人の立場であの辺境と行き来をできてたのか謎過ぎるし)ので、なおさらラスボスはラスプーチンがよかったにゃんね~となりました。

 総じて、シリーズに新しい魅力を与えようとした試みがあまりうまく働いておらず、あまり高級でないのに鈍重な映画になっていたと思います。軽薄さが恋しいぜ。それがマシュー・ヴォーンの魅力だと思うので。

 

ラスボスは悪魔の力でよみがえったオメガラスプーチン!とかでもわたくしは全然よかったわよ。