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映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まていることがあります。

ラブパワー∞——『フィフス・エレメント』感想

フィフス・エレメント (字幕版)

 ブルース・ウィリスが俳優業引退との報に接し、いままで未見だった『フィフス・エレメント』をみようと思い立ちました。以下、感想。

 23世紀、地球は謎の小惑星により破滅の危機を迎えつつあった。その破局を回避するためのカギを握るという第五の元素、フィフス・エレメントをめぐり、陰謀をめぐらす武器商人や、古来の伝承を受け継いだ神父、そして元軍人でいまはうだつのあがらぬタクシードライバーの男などが入り乱れ、未来都市を駆け巡る。

 リュック・ベッソン監督による、1997年公開のSF大作。主演にブルース・ウィリスミラ・ジョヴォヴィッチ、悪役にゲイリー・オールドマンという布陣。ブルース・ウィリス不惑のあたりだが、いや若々しいですね。ゲイリー・オールドマンはもうこういう役やってくれないだろうなという、奇矯なファッションにいかにも三下悪党的なコミカルな役柄。ミラ・ジョヴォヴィッチ出世作であることは周知のとおり。

 いまみるとVFXはやっぱりどうしてもチャチな印象を受けてしまい、そこに時代の刻印を感じる。時代性といえば、『ブレードランナー』風の未来都市の90年代風のバージョンともいうべき、けばけばしいディティールもまたそうでしょう。いかにも『ブレードランナー』オマージュっぽい屋台のお節介なおっちゃんが家に屋台船で乗り付けているシーンのおかしみなどかなり愛せる感じがある。青い肌の異星人のディーバの歌唱なんかもこれでどうだといわんばかりの堂々たる迫力があって、めちゃ印象に残りますね。

 一方で、クリス・タッカー演じるラジオスターの痛々しさもまた時代性だと思うんだけど、これはちょっと今となってはみていてきつい種類のやつだよなあという感じ。別に全体としてA級の映画ではぜんぜんないんだけど、クリス・タッカー独壇場の時間のいたたまれなさは悪い意味でB級映画感がすごい。

 しかし諸々のディティールを積み重ねつつ全編勢いと楽しさとを失わず、最後に愛の力で巨大な悪を倒し世界を救う!という明快極まる結末のすがすがしさよ。ヴィルヌーブの『DUNE』にこのタイプの安直な快を求めてはいかんのはわかっていますが、こういうサービスが欲しくて娯楽映画みとるというのはあるわよね。