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映画やアニメ、本の感想。ネタバレが含まれていることがあります。

きっと大丈夫であるように──オジロマコト『君は放課後インソムニア』感想

君は放課後インソムニア(14) (ビッグコミックス)

オジロマコト『君は放課後インソムニア』を読んだので感想。

 不眠症に苦しむ高校生、中見丸太は、クラスメイトの曲伊咲もまた、夜に眠れずに苦しんでいることを偶然知ってしまう。天文台を二人だけの秘密の場所として心通わせていく二人だが、ひょんなことから天文部を結成し、曲の友人たちをときに巻き込みつつ、その関係も次第に変化していくことになる。

 『ビッグコミックスピリッツ』に2019年から2023年にかけて連載。連載終盤の2023年にはアニメの放映や映画の公開も重なり、わたくしはそのアニメをきっかけとしてこの作品を知った。アニメは中見と曲の二人が恋愛関係になるまで、漫画でいうと折り返し付近までを丁寧にアニメ化していて好感のもてる佳作であったが、原作を読むと、原作を誠実に拾い上げ、とりわけキャラクターの雰囲気は見事に再現しているように思った。

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 アニメの感想は上記記事で書いたとおりだが、アニメ化されていない中盤以降の展開は、曲の病に関することがやや前景化し、いわゆる「難病もの」的なモチーフが看取されるようになる。とはいえ、前半部分で、高校生ふたりの恋愛を主題としながらも、過剰にドラマチックなコンクリフトを作劇に導入しなかった上品さは維持されていて、作品全体のトーンが暗くならないのは大きな美点だろう。

 この作品の描写の一つの特徴は、しばしば挿入される、セリフ抜きで印象的な瞬間を切り出し、その連続で時間を進行させていくシークエンスにあると思うが、巻が進むごとにその場面の巧みさが増していき、きわめてエモーショナルな読み味を喚起する。この演出に加え、大胆な時間の跳躍をいくつか挟んで、高校3年間を語りきってしまった語りの巧みさもお見事。

 特に天文部の後輩たちなど、彼・彼女らと中見たちの交流をもっと掘り下げて作品世界に厚みをもたらすこともできたと思うのだが、そうはせずにさらっと流し、中見と曲のドラマに焦点が絞られる。級友たちや白丸先輩の挿話など群像劇っぽい雰囲気も出るので、彼・彼女らのドラマをもっとみたかった!と思わされてしまうのだが、そのくらいの塩梅がきっとちょうどよいということなのでしょう。

 生きづらさを抱えた少年がどうにか世界と和解し、自身の過去・未来と向き合っていく物語の骨組みはとても力強く、こうした仕方でわたしたちの世界はきっと大丈夫なのだと教えてれているようでもあり、ともかくよい漫画でした。