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昏く残酷なプロローグ────『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』感想

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 『アークナイツ』熱の高まりで、いまさらアニメを見たのだった。以下、感想。

 男が目覚めると、そこでは「鉱石病(オリパシー)」とよばれる病に罹った「感染者」たちが差別を受ける、わたしたちの知る地球とは似て非なる世界であった。目覚めた男、ドクターは、感染者を守るため戦う「ロドス製薬」の一員として、同じく感染者を糾合して秩序の転覆をはかる集団、「レユニオン・ムーブメント」との戦いに巻き込まれてゆく。

 中国で開発されているソーシャルゲーム、『アークナイツ』のアニメ化。アニメーション制作はYostar Pictures。監督は、同作のアニメーションPVなどもてがけてきたアニメーターである渡邉祐記。特徴的なのはシネマスコープサイズで制作されていることで、原作の暗い雰囲気をよく再現した画面はクラシックな味わい。

 ゲームのサービス開始から早くも4年がたち、ゲーム性はもとよりその緻密な世界設定やSF的な仕掛けの壮大さでプレイヤーを驚かせている『アークナイツ』だが、作品の序盤も序盤をアニメ化した『黎明前奏』ではそこまで大柄な作品にはみえないのは惜しいところ。とはいっても、ゲームにおいてはメインストーリーと同時進行しているサブプロットの積み重ねが4年という時間をかけて世界設定を強固にしているようなところがあり、この厚みをアニメに取り込むのは相当難儀だろうなとも思う。期間限定イベントの「バベル」でドクターや重要人物たちの過去が明かされ、またそれを受けてのメインストーリーの14章で大盛り上がりをみせた2024年現在の『アークナイツ』だが、思えばサービス開始当初はここまで壮大な構想があるとは思ってもみなかったのだった。

 というわけでお話としてはイントロダクションのレベルにとどまるものの、感染症がはびこりそれにより深刻な差別が生じている作品世界のトーンは陰惨で、アニメでもその暗さとひりつきはよく表現されていたと思う。雰囲気も暗く、画面も全体として曇天のような色調で貫かれていて、これはひとつの決意表明ではあるとは思った。一方でアクションはやや単調でかつ動きにも乏しく、それを期待していると肩透かしを食らうような水準であるとも思う。

 というわけで、ゲームのプレイヤーとしてはやや食い足りなさを感じるし、またゲーム未プレイの人への宣伝という意味でも果たして魅力的かどうか…という感じではあるものの、誠実なアニメ化ではあったんじゃないでしょうか。続く『冬隠帰路』もみると思います。