プライムビデオで『ゴールド・ボーイ』をみました。これは劇場でみておきたかった…と歯噛みするおもしろさ。以下、感想。
沖縄本島。大企業、東ホールディングスの娘婿、東昇(岡田将生)は、義理の両親を崖から突き落として殺害する。人気のない場所での犯行、義理の父の持病から、事故として処理されるはずだったが、犯行の場面は、偶然にも中学生によって撮影されていた。家族関係に問題を抱えた中学生たちは、犯行の証拠を突き付けて東を強請り、多額の金銭を得ようとする。だが、中学生グループの一人、安室朝陽(羽村仁成)にはある思惑があり、事態は思わぬ方向へ動いていく…。
中国の作家・紫金陳の小説『悪童たち』を原作に、舞台を沖縄へと翻案して映画化したクライムサスペンス。監督は平成『ガメラ』三部作の金子修介。夏の沖縄のリゾートのような明るさと、しかし逃げ場のない焦燥感のようなものも感じさせるロケーションで、青年と中学生たちのまさに命を懸けた駆け引きが描かれる。主役となる青年・中学生は生き生きとした様子でカメラに収まっているが、一方で大人たち——北村一輝や江口洋介、黒木華など——はずいぶんくたびれてみえる。この疲れた様子の大人たち——そして対照的に生き生きとしているが倫理の底が抜けたような若者たち────が、ある意味で現代沖縄、ないし現代日本というトポスを象徴的に表しているようにも思えた。
羽村仁成演じる安室朝陽は、母親(黒木華)と二人暮らしで、両親のもとから逃亡してきた上間兄妹を迎え入れて家に泊めるなど、素朴そうな少年としてまずは画面に現れるが、殺人の現場をカメラに収めるや、それを脅迫の材料にすることを躊躇せず、また物語が進むうち、東への要求を金銭から殺人の依頼へシフトさせるなど、どうも心中にどす黒いものを抱えた存在であることが明らかになる。
この朝陽と東という年若い悪党たちのだましあい——そしてそれを演じる羽村と岡田の演技合戦——がこの作品の大きな魅力で、最後の最後まで大いに楽しんだ。とりわけときに素朴な少年にみえ、しかし決定的な場面では冷酷な殺人者に変貌する羽村の演技は見事だった。
朝陽と東の二人は結局のところ「父の遺産を相続する」という最終目的のもと殺人を計画していて、またその根っこには「見栄とプライド」がある…というのはすぱんくtheはにー @SpANK888さんが評のなかで指摘していて、それはまさにその通りだと感じる。
朝陽と東はいずれも、「見栄とプライド」による犯行を知性によって糊塗し、そのことで自身の幼さを隠蔽しようとしているようなところがある。しかしその幼い知性による犯罪を暴き、あるいは追い詰めるのが、くたびれた大人たちの執念と、また肉親の情愛、そして同じく幼い、しかしそれゆえに邪気のない恋心だったというところに、この映画のおもしろみがあるように思えた。