『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』をみたので感想。公開早まったんですね。
自律し自律し始めたはじめた最強のAI、エンティティによって、世界は混乱の極みにあった。核保有国の核ミサイルを次々とコントロール下に置くエンティティによって、差し迫ったものとなった世界の終局。IMFの工作員、イーサン・ハントは、世界の終わりを防ぐため、エンティティを無力化するための戦いを開始する。
『ミッション:インポッシブル』シリーズの一区切りともいえる超大作は、『デッドレコニング PART TWO』から改題し、およそ1年の公開延期を経てわれわれの前に現れた。監督は『ローグ・ネイション』以降続投のクリストファー・マッカリー。『デッドレコニング』の直接の続編で、また過去のシリーズのキャラクターや関連人物が続々登場し、シリーズとしての集大成の感もある。
第1作目でイーサン・ハントに難攻不落のセキュリティを誇る金庫を破られ、その結果僻地に左遷された男が再登場(俳優も続投)したり、『デッドレコニング』から登場したある人物が裏切り者ジル・フェルプスの息子だと判明したり、また『フォールアウト』でCIA長官だった強面の女ボス、エリカ・スローンがまさかの合衆国大統領になっていたり、キャラクターの面でのサプライズにしばしば驚かされた。
また『ミッション・インポッシブル3』で生物兵器なのではと推測されていたマクガフィンである「ラビットフット」が実は今作の最強AIにかかわっていたりと、シリーズすべてを包括して決着をつけようとする意図も濃厚。シリーズの常連だったイーサンの相棒、ルーサー・スティッケルが早々に退場してしまう衝撃の展開といい、いかにも完結作という雰囲気が出ている。
前編の『デッドレコニング』は大規模なアクションシークエンスのつるべ打ちで進行する異様な映画だったが、それと比べるとこの『ファイナル・レコニング』は少しばかり抑えたトーンにはなっていて、そのかわり一つ一つのシークエンスが長尺。とりわけ、北太平洋に沈んだ潜水艦に潜入するシークエンスは、ほとんどセリフもなくトム・クルーズが肉体を酷使して決死のスタントを試みているのを見守る異様な時間が続く。ラストの複葉機でのアクションシークエンスの無法ぶりも言わずもがな。
そうしたゴージャスなアクション映画であるのだが、全体のトーンとして、イーサン・ハントが善きアメリカ人たちの助けを借りて世界を救う、という感じがあり、潜水艦オハイオのクルーや、左遷されたCIA職員、そしてなにより大統領などなどの精悍な面構えが印象に残る映画であった。トム・クルーズという不世出の映画スターが自身のキャリアのある種の決算としてたどり着いたのが、AIという全能の神を否定し、市井の善きアメリカ人たちを擁護するこの映画であったことに、かすかなおもしろみを感じたのであった。