『ラブライブ!サンシャイン!!』をみたので感想。
かつてスクールアイドルの祭典、ラブライブを制した伝説のグループ、「μ's」。静岡県沼津市にある浦の星女学院に通う少女、高海千歌は、μ'sに憧れ、自らもスクールアイドルを結成するため行動していく。μ'sの出身校である東京・国立音ノ木坂学院から転校してきた少女や、内気な後輩、高飛車な生徒会長などなどを巻き込んでいくが、奇しくもμ'sと同じく、学校に統廃合の危機が訪れる。
メディアミックスプロジェクト『ラブライブ!』の、いわば第二のシリーズともいうべき作品。舞台を東京から静岡、沼津に映し、新たなスクールアイドルグループ「Aqours」の活動を描く。テレビ放映は2016年。監督は酒井和男、シリーズ構成・脚本は前シリーズに続き花田十輝。監督・酒井、脚本・花田の座組は後に『ガールズバンドクライ』を手掛けることになるコンビで、それがわたくしが『ラブライブ!』を視聴しようと思ったモチベーションの一つでもある。
商業的には大成功を収めたといっていいμ'sに続いて、メンバーと舞台を一新して新たな物語を立ち上げる、というのは大きな挑戦だったと思うが、『サンシャイン‼』はひとまずその挑戦に成功しており、そのことは一つの達成なのだろうと思う。室田雄平によるキャラクターデザインは、新たな主人公となる9人の少女の個性を適切に立ち上げていて、メンバーが没個性になっていないのがまずえらい。日常シーンを作画、ライブシーンを作画と3DCGの組み合わせで描く演出は無印から継続しているが、ライブシーンの演出は全体としてさらに洗練されているように感じられた。
お話の大きな骨格としては、明るい少女を中心にグループ結成のための仲間集め、廃校の危機、そして大会を目指して努力…という無印のそれをなぞっているように思えるが、その部活もの的なフォーマットゆえに、舞台とキャラを一新しても成立するという確信があったのだろう。
とはいっても無印の縮小再生産という印象がそれほどしないのは、沼津というトポスもさることながら、キャラクターの魅力をきちんと提示できているからだろう。無印と比べると、『サンシャイン‼』では方言丸出し文学少女や、『中二病でも恋がしたい!』を濃縮還元したような少女、高飛車お嬢様生徒会長などなど、エキセントリックなパーソナリティのメンバーが目立つ気がするが、それが無印との差異化のために適切に機能していると感じた。
また、メディアミックスプロジェクトとしては大いに意識したであろうμ'sの成功を、アニメの物語の上でも自覚的に取り込み、ポストμ'sの物語を意識的に語ろうとしている点も巧妙。ゼロから始まったμ'sと同じく、自分たちもゼロから出発するのだと決意表明する少女たちはまぶしい。とはいえ、プロジェクトとしてはこの『サンシャイン‼』は(作中結部で強調されるような)「ゼロからイチ」ではなく、μ'sが築いたイチという土台からステップアップするものだっただろう。そしてそれは十分に成功を収めていると思う。