米倉律『災後テレビドラマ論 震災後・コロナ禍後をどう描いてきたのか』を読んだので感想。
本書は、東日本大震災後、および新型コロナウイルス感染症の世界的流行後に、その影響を受けてつくられたテレビドラマを取り上げ、そこで災害やその被害を被った人々、影響を受けた人々がどのように表象されてきたかをたどる。
テレビドラマというジャンルを広い意味での「ジャーナリズム」ととらえ、その中で事実を越えた人々の経験がどのように取り扱われてきたかを論じる。
本書で論じられるテレビドラマは、特に東日本大震災関係がそうなのだが、1回きりのスペシャルドラマが多く、テレビドラマをぜんぜんみないわたくしは知らない作品が多かった。草彅剛主演の『ペペロンチーノ』や、山田太一が脚本をてがけた『時は立ちどまらない』、『五年目のひとり』など、演者・スタッフでいえば著名な人が関わっているのに存在すら知らなかった。その意味で、本書がこうしてまとめてくれたことの意義はある気がする。
本書の読解はどちらかといえば手堅く、関連する研究を参照してドラマのリアリティを肉付けしていくような手つきで、批評的なおもしろさにはやや欠けるところがある。テレビドラマではないが、新海誠監督の『君の名は。』、『天気の子』、『すずめの戸締り』にも言及があり、特に『すずめの戸締り』について、福島を舞台として描きながら福島第一原子力発電所の事故について透明化していることを批判している。読みとしてはそうだろうなと思うがおもしろみはない。
わたくし個人の貧困なドラマ経験でいえば、野木亜紀子脚本の『アンナチュラル』は東日本大震災の匿名の大量死の経験を参照していたし、宮藤官九郎脚本の『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の前半部のクライマックス、関東大震災後の展開はまさにポスト東日本大震災を感じさせるものだったが、本書はもっと直接的に東日本大震災を扱ったドラマを取り上げているので特に言及はなかったのだった。
