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躍動する身体、刻まれる失着────『ユーリ!!! on ICE』感想

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 『ユーリ!!! on ICE』をみたので感想。

 23歳の勝生勇利は日本を代表するアイススケート選手。グランプリシリーズファイナルにも進出を果たしたが、メンタルの弱さから実力を発揮できず惨敗し、大きく調子を落としてしまう。悩みながら、地元、九州にある長谷津に帰った勇利は、かつて思いを寄せた幼馴染の前で、憧れのトップスケーター、ヴィクトル・ニキフォロフのプログラムを滑る。それを撮影し勇利の知らぬところでインターネット上で拡散した動画をみたヴィクトルは、なんと長谷津に現れて勇利のコーチをしたいと申し出て…。

 2016年放映のオリジナルテレビアニメ。アニメーション制作はMAPPA、原案には『モテキ』の久保ミツロウ、『LUPIN the Third -峰不二子という女-』の山本沙代の二人が名を連ね、山本が監督・シリーズ構成、脚本(ネーム)に久保と、この二人が作品の中核となっている。勇利とヴィクトルの師弟関係と恋愛関係が奇妙にまじりあったクィアなドラマはいま見ても結構異色な感じで新鮮。

 この作品の大きな魅力はなんといってもアイススケートの演技の場面にあることは疑いはなく、とりわけ中盤以降、グランプリシリーズ開幕以降はさまざまな国籍の選手たちが次々とスケートリンクにあがって個性豊かな演技を披露し、画面をにぎわせる。このあたりはキャラクターデザイン、総作画監督としてクレジットされている平松禎史の力量が存分に発揮されているのだろうと推察する。

 細身の身体を躍動させるアクションが見ごたえがあるのは言わずもがな、さまざまなバックボーンを持つスケーターたちの演技がきちんと個性を発揮していることがすばらしい。また、実際のアイススケートでもつきものであるジャンプなどのミスも、かなりリアリティをもって描かれていることには驚いた。超一流の選手でもミスするときはするのだ、というシビアさが、この作品の演技の場面に絶対的な緊張感をもたらしていたと思う。

 アイススケートを主題としたアニメでいうと、後の2025年に放映された『メダリスト』ではアイススケートのシーンは3DCGで処理していて、それはひとつの方策ではあろうが、この『ユーリ!!! on ICE』の堂々たる作画をみてしまうと、こちらに軍配をあげたくなる。続編となる劇場版は2024年に制作中止が発表されてしまったが、この高い水準の作画クオリティを担保するためのスタッフ集めが相当の難事であることは素人からも容易に推察できるので、残念だがむべなるかなという感じである。ネット上ではロシアによるウクライナ侵攻が制作中止の要因の一つではという意見もみたが、どうなんでしょうね。